住宅を取得(購入・新築・増改築)する際に、両親や祖父母などの直系尊属から資金の贈与を受けた場合、その資金のうち最大1,000万円まで贈与税が非課税となる制度があります。
本記事では、贈与税についての基本的な知識のほか、住宅取得資金等贈与の非課税の特例について解説します。
贈与を受けた場合に支払うべき税金は?
贈与税とは、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。
1年間のうちに110万円を超える財産を受け取った場合、受け取った金額から基礎控除額である110万円を差し引いた金額に贈与税の税率を掛けた金額を支払う必要があります。
1年間に贈与を受けた金額が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。
贈与の当事者は、財産を渡す側を贈与者、受け取る側を受贈者と呼び、贈与者と贈与額によって税の区分は2つに分かれます。それぞれの税率と控除額は下表をご参照ください。
・特例税率:贈与者が直系尊属(祖父母や両親)で受贈者が18歳以上子・孫の場合
・一般税率:贈与者が配偶者や兄弟など、もしくは直系尊属からの贈与で受贈者が18歳未満の場合
贈与税の速算表【一般贈与財産用】
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | − |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の速算表【特例贈与財産用】
基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | − |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば、贈与額から基礎控除110万円を差し引いた後の課税価格が1,000万円だった場合に、それぞれの贈与税額は以下のとおりです。
・特例税率の場合
課税価格1,000万円 × 特例税率30% – 控除額90万円 =贈与税額 210万円
・一般税率の場合
課税価格1,000万円 × 一般税率40% – 控除額125万円 = 贈与税額275万円
住宅取得等資金贈与の非課税制度
自ら居住する住宅を購入するための資金を贈与された場合の贈与税には、一定の金額までは非課税になる限度額があります。贈与税の非課税限度額は、贈与財産を元に購入した住宅が省エネ住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅は500万円までです。
省エネ住宅と認定されるには、以下のいずれかを満たしている必要があります。
省エネ住宅認定のポイント
- 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること。(令和5年末までに建築確認を受けた住宅または令和6年6月30日までに建築された住宅は断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上)
- 耐震等級(構造躯体の倒壊防止)2以上または免震建築物であること。
- 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上のバリアフリー性が高い住宅であること。
非課税限度額については下表をご参照ください。
贈与を受けた期間 | 非課税限度額 | |
省エネ等住宅 | 一般住宅 | |
2024年1月1日~2026年12月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
本特例の適用期限は2026年12月31日までです。(2023年12月22日に制度が変更・延期となりました)
贈与を受けて住宅購入を検討されている方は、2026年12月31日までに贈与が完了するように準備されることをおすすめします。
なお、住宅取得等資金贈与の非課税制度は、110万円の基礎控除と併用できるため、省エネ等住宅の場合には、1,110万円が非課税となります。
住宅取得等資金贈与の非課税制度の対象者とは
続いて、非課税制度を受けられる対象者について説明します。住宅取得等資金贈与の非課税制度を受けられる対象者は、以下に該当している必要があります。
- 贈与を受ける側が、贈与者の直系卑属であること。
- 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
- 贈与を受けた年の合計所得が2,000万円以下であること。
※新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平米以上50平米未満の場合は、1,000万円以下。 - 2009年分から2021年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。
- 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、またはこれらの方との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
- 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、該当の住宅に住むこと。
その他の要件に関しては、国税庁のホームページをご覧ください。
(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm)
住宅用の家屋の新築や取得または増改築などの要件とは
住宅用家屋の新築や、取得または増改築時の要件について説明します。非課税の特例を受けて贈与を受ける場合の要件は、以下の通りになります。
新築または取得の場合
- 住宅の登記簿上の床面積が40平米以上、240平米以下。(2024年12月31日までに建築確認)
- 住宅の床面積の2分の1以上が贈与を受ける人の居住用であること。
- 日本国内に在住であること。
中古住宅の購入や既存住宅の増改築の場合の要件は、以下の通りになります。
既存(中古)住宅の場合
- 木造などの住宅は築20年以内、マンションなど耐火構造の鉄骨造や鉄筋コンクリート造は25年以内に建てられたもの。
- 耐震性能が一定基準を満たすことが分かる下記のいずれかの証明書があること。
(耐震基準適合証明書 / 建築住宅性能評価書の写し / 既存住宅売買瑕疵担保責任保険の付保証明) - 上記以外の中古住宅で、耐震改修工事について「建築物の耐震改修計画認定申請」 など一定の申請手続をすませ、贈与の翌年の3月15日までに耐震改修工事によって耐震基準を満たすようになった適合証明書明を取得する。
増改築の場合
- 増改築後の登記簿上の床面積が40平米以上、240平米以下。
- 住宅の床面積の2分の1以上が贈与を受ける人の居住用であること。
- 自己所有かつ自己居住の家屋に一定の工事が行われたことがわかる下記のいずれかの書類により証明されたものであること。
(確認済証の写し / 検査済証の写し / 増改築等工事証明書) - 増改築費用が100万円以上であること。また、費用の2分の1以上が、自己の居住用部分の増改築に要したものであること。
なお、各要件の詳細やその他の要件に関しては、国税庁のホームページをご覧ください。
(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm)
相続時精算課税制度
住宅取得等資金贈与の非課税制度以外に、直系尊属からの贈与において非課税となる制度として「相続時精算課税制度」があります。本制度は、贈与があった年の1月1日時点で原則として60歳以上の直系尊属から18歳以上の直系卑属への生前贈与のうち、2,500万円までは贈与税がかかりません。ただし、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税がかかります。
なお、この制度は2,500万円までの生前贈与財産に対する税金が完全に免除されるわけではありません。この生前贈与財産は、贈与者が死亡した際の相続時に相続財産の一部として組み入れられ、相続税が課税されるのです。
この制度のメリットは、早期にまとまった額の資産を贈与することができるということです。贈与税、そして相続税も非課税のまま、子や孫が資金を必要としている時期に合わせての贈与が可能となります。
ちなみに、2023年12月31日までは相続時精算課税制度を1度適用すれば、その後は同じ贈与者からの贈与に110万円の基礎控除は使えません。しかし、法改正によって2024年1月1日以降は、同じ贈与者からの贈与に110万円の基礎控除の併用が認められます。
贈与税の申告方法
最後に、贈与税の申告方法について解説します。
申告のタイミングですが、原則として贈与税を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地の所轄税務署長に申告書を提出しなければなりません。
住宅取得資金贈与に関する非課税特例を受ける場合には、国税庁の公式ホームページ内にある確定申告等作成コーナーより必要事項を入力して手続きが必要です。
その他の方法では、税務署へ郵送もしくは持参するか、e‐taxを利用しての提出も可能です。
確定申告書類は、受贈者が現在住んでいる住所を管轄する場所の税務署へ提出する必要があります。
確定申告書類の詳しい提出方法や、富山市内での贈与税に関する相談はコチラ をご覧ください。
住宅取得時の贈与税についてきちんと理解しておこう
新しく住宅を購入した際に資金援助を受けた場合の贈与税について解説しました。
1年間のうちに110万円を超える財産を受け取った際、基礎控除額である110万円を差し引いて、所定の税率をかけ合わせた金額を贈与税として税務署に支払う必要があります。
一部基礎控除に加えて非課税特例を受けられる対象者や対象物件もあるので、必ず特例の要件に該当するか必ずチェックしましょう。
なお、金銭の贈与契約書が有効に成立するための要記載事項や、備えるべき客観的な状況証拠などの準備を誤ると、特例が受けられず節税にならない可能性があります。
ですから、特例の要件を満たすかどうかの判断や手続きの進め方については、税理士や税務署に相談するなど、プロからアドバイスを受けて確実に実行しましょう。