猫はなぜ鳴くのか?

猫の鳴き声には、かわいらしい「ニャー」という声もあれば、低くうなるような声、甘えるようなトーンの声もあります。猫が鳴くのは、飼い主に何かを伝えようとする立派なコミュニケーションの手段です。
ここでは、猫が鳴く主な理由を3つ紹介します。
感情を表している
猫も人間と同じように、喜んだり、悲しんだり、怒ったり、寂しさを感じたりします。そしてそれを伝えたいとき、人間の言葉が話せないので鳴き声や体の動きでサインを送ります。
たとえば、甘えたいときに体をすり寄せながら「ニャー」と鳴く猫を見たことがある方も多いのではないでしょうか。このときの鳴き方は柔らかく、トーンも高めです。反対に、警戒しているときや不安なときは、低めの声で長く鳴くこともあります。
猫の鳴き声やその頻度、タイミングの違いを観察すると、「今この子は嬉しいんだな」「ちょっと不安そうだな」と、心の動きを感じ取れるようになります。言葉が話せない分、鳴き声は猫の気持ちの表現です。
要求やお願いを伝えるため
猫は言葉を話せないので、要求を伝える際も鳴くことで伝えます。
たとえば、朝のごはんが少し遅れると、「ニャーニャー」と連続で鳴いてアピールすることがあります。また、遊んでほしいときには、お気に入りのおもちゃをくわえて持ってきて「ニャー」と鳴く猫もいます。
毎日のちょっとした鳴き方のパターンを覚えていくと、「今はお腹がすいている」「遊びたいんだな」と、飼い主も理解しやすくなるでしょう。
体調やストレスのサイン
猫の鳴き声は、感情や欲求だけでなく、体調やストレスのサインでもあります。普段とは違う鳴き方や鳴く頻度の変化には、注意が必要です。
たとえば、急に夜中に何度も鳴き続けたり、逆にまったく鳴かなくなったりした場合が挙げられます。これは「体調が優れない」「環境に不安を感じている」といったサインかもしれません。
こうした変化に気づいたら、放っておかずに体調や生活環境をチェックすることが大切です。猫が発する小さな声の変化には、体調や気持ちのヒントが隠れていることもあります。
猫の鳴き声のパターン
猫は、鳴き声で気持ちや状況を伝えています。同じ「ニャー」という声でも、音の高さや長さ、喉の鳴らし方によって意味が変わります。
猫の鳴き声には、主に次のようなパターンがあります。
| 猫の感情 | 猫の鳴き声 |
| 嬉しい・甘えている | ・高い声で「ニャーン」「ミャーオ」・「ゴロゴロ」と喉を鳴らす・音を出さない「ニャー」・短く「ニャッ」・食事中の「ウニャ」 |
| 不安・不満がある | ・長め、低めの「ニャーオ」「ミャーオ」・低く唸る「ンー」「ウー」 |
| ケンカ・威嚇している | ・低めの「ウーッ」「マーオ」・毛を逆立てながら「シャーッ」「フーッ」 |
嬉しいとき・甘えているときの猫の鳴き声

猫が見せる甘えや嬉しさのサインは、仕草だけでなく鳴き声にも表れます。ここでは、猫がリラックスしているときや、甘えたい気分のときによく聞かれる鳴き声を紹介します。
- 高い声で「ニャーン」「ミャーオ」
- 「ゴロゴロ」と喉を鳴らす
- 音を出さない「ニャー」
- 短く「ニャッ」
- 食事中の「ウニャ」
高い声で鳴く「ニャーン」「ミャーオ」
猫が「ニャーン」や「ミャーオ」と高めの声で鳴くときは、飼い主に気持ちを伝えたいサインです。
たとえば、ごはんが欲しいときや遊んでほしいとき、そっと甘えたいときに高い声で泣きます。声のトーンが柔らかく、ゆったりしたテンポなら、猫が安心している証拠です。
何度も鳴く時は、名前を呼んだり優しく撫でてあげましょう。信頼関係が深く築けていると、名前に反応して返事をするように鳴く猫もいます。
「ゴロゴロ」と喉を鳴らす鳴き方
なでられているときに「ゴロゴロ」と喉を鳴らすのは、猫のリラックスサインです。
寝る前や、お気に入りの場所ブラッシングのときに鳴る猫のゴロゴロは、安心しきったときや幸せを感じているときに出る音です。このとき、そっと撫でてあげるとさらに安心感が高まります。
音を出さない「ニャー」
口だけを動かして声が聞こえない鳴き方、通称「サイレントニャー」もあります。
子猫が母猫に甘えるときに使う鳴き方ですが、成猫も「もっとかまってほしい」と甘えたいときに同じ動作をします。
目を細めたり体をすり寄せたりする仕草とセットで現れることが多く、優しく声をかけながら撫でてあげるとより安心してくれるでしょう。
短く「ニャッ」
「ニャッ」という短い鳴き声は、猫なりの挨拶や返事のようなものです。名前を呼ばれたときやそっと触れられたときに、このような鳴き方で返すことがあります。
特に仲の良い関係だと、猫のほうから「ニャッ」と声をかけてくることもあります。そのようなときは軽く返事をしてあげると、猫も安心して嬉しそうな表情を見せてくれるでしょう。
優しいトーンの鳴き声であれば好意的なサインですが、強い調子で鳴く場合は「もうやめて」の合図のこともあります。状況を見ながら気持ちを受け取ることがポイントです。
食事中の「ウニャ」
ごはんを食べながら「ウニャ」と鳴くのは、猫が「おいしい」と感じているときの鳴き方です。お気に入りのフードを前にして、うれしさやおいしさがつい声に出てしまうのです。
子猫に多い行動ですが、成猫でも特にお気に入りの食事のときに見られます。この鳴き声を聞いたら、猫が食事を楽しんでいるサインです。
不安・不満があるときの猫の鳴き声

猫は基本的に穏やかで静かな動物ですが、強い不安や不満を感じるときには、鳴き声のトーンや長さが変化します。ここでは、猫が不安やストレスを感じているときの代表的な鳴き方を紹介します。
- 長め、低めの「ニャーオ」「ミャーオ」
- 低く唸る「ンー」「ウー」
長め、低めの「ニャーオ」「ミャーオ」
低くて少し長めに「ニャーオ」と鳴くとき、猫は不安や不満を抱えています。たとえば、飼い主が外出した直後に窓の外を見ながら鳴く猫や、知らない人が家に入った瞬間に大きな声で鳴く猫もいます。
特に分離不安の傾向がある猫は、「置いていかないで」「ひとりにしないで」と訴えるように、力強く鳴くことがあります。このとき、無理に抱き上げたり手を伸ばしたりすると、かえってパニックになり、引っかかれてしまうことも少なくありません。
大切なのは、落ち着いた声で「大丈夫だよ」と語りかけ、少し距離を置いて安心できる環境を整えてあげることです。飼い主がそばにいて落ち着いていると感じられれば、猫は少しずつ安心を取り戻します。
低く唸る「ンー」「ウー」
耳を伏せ、背を低くして「ンー」「ウー」と唸る猫を見たことはありませんか?
この鳴き方は、猫にとっては強い警戒心のサインです。「これ以上近づかないで」といった警告を鳴き声と体の姿勢で表現しています。見知らぬ人や動物、あるいは苦手な音が原因で出ることも多いでしょう。
また、猫に触れたときに唸る場合は、体調不良やケガによる痛みの可能性もあります。普段は穏やかな猫が突然唸るようになったら、早めに動物病院で診てもらうのが安心です。
このときも、無理に触ったり叱ったりせず、そっと見守ることが重要です。落ち着いた後で優しく声をかけたり、撫でたりして安心感を与えてあげることで、猫のストレスを軽減できます。
ケンカ・威嚇しているときの猫の鳴き声

普段は穏やかな猫でも、縄張り意識や警戒心が刺激されると、まるで別の性格になったかのように激しく鳴くことがあります。そんなときの鳴き声は、ただの鳴き声ではなく「危険信号」ともいえるでしょう。
喧嘩や威嚇しているときの猫の鳴き声について紹介します。
- 低めの「ウーッ」「マーオ」
- 毛を逆立てながら「シャーッ」「フーッ」
低めの「ウーッ」「マーオ」
「ウーッ」「マーオ」と低く唸るとき、猫は相手を威嚇し、距離を置こうとしています。背中を低くして耳を後ろに伏せ、大きく見開いた目で相手を見つめる姿は、まさに警戒モードです。
これは「これ以上近づいたら攻撃するぞ」という警告の意味で、相手を遠ざけようと「今は触らないで」と伝えています。無理に触ろうとせず、まずは距離をとって落ち着かせることが重要です。
また、体調が悪いときにも同じように唸ることがあります。特定の部位に触れた際に唸る場合は、痛みや違和感を示している可能性があるため注意しましょう。
毛を逆立てながら「シャーッ」「フーッ」
背中の毛を逆立て、体を大きく見せながら「シャーッ」「フーッ」と鳴く猫を見たことはありませんか?
これは強い威嚇のサインで「近づかないで」と、相手に全力でアピールしています。相手に自分の強さを示すことで、攻撃されずに危険を回避しようとしているのです。
この段階では、無理に抱き止めたり叱ったりせず、物理的に距離を取って落ち着くのを待つのが安全です。飼い主は、静かに見守りながら猫の気持ちが落ち着くのを待ちます。
安全が確保できたら、優しく声をかけたりなでたりして信頼感を取り戻してあげましょう。
その他の猫の特徴的な鳴き方

猫の鳴き声には、日常ではあまり聞かれない特別なサインもあります。発情期や興奮時など、普段とは違うトーンやリズムで鳴くことがあり、猫の本能や感情が強く表れる瞬間です。
猫の特徴的な鳴き方と、意味について紹介します。
大きな声で「アオーン」「ンニャーオ」
避妊・去勢をしていない猫は、繁殖期になると異性を呼ぶために普段より大きな声で鳴き続けます。「アオーン」「ンニャーオ」といった大きく響く鳴き声は、発情期特有のサインです。
たとえば、夜中に突然大きな声で鳴き始めたら、それは本能が引き起こす行動かもしれません。メス猫は自分の存在をアピールし、オス猫はその声に反応して返事をすることがあります。
しかし、発情期でもないのに普段と違う鳴き方が続く場合は、猫がストレスを感じていないか、環境を整えてあげることも大切です。落ち着かない様子が続くようなら動物病院に相談してみましょう。
「クルル」「ケケケ」「カカカ」
窓の外の鳥や虫を見て、猫が「クルル」「ケケケ」と鳴くことがあります。これは「クラッキング」や「チャタリング」と呼ばれる鳴き声で、狩猟本能が刺激されたときに出るサインです。
猫は「捕まえたいけれど届かない」というもどかしさを声に表しており、興奮と集中の入り混じった複雑な感情を示しています。この鳴き声を聞いたら、猫は好奇心と遊び心でいっぱいな状態です。
おもちゃで遊ぶなどして、高ぶった気持ちを発散させてあげると猫も満足します。
猫の鳴き声が気になる時の対処法

鳴くこと自体は、猫の自然なコミュニケーション手段ですが、原因を理解して環境を整えることで、無駄鳴きを減らせる可能性があります。
猫の気持ちを尊重しながら、落ち着いた時間を取り戻すための具体的な対処法を紹介します。
鳴く前に満足させる環境を整える
猫は、安心して暮らせる環境が整っていれば、要求や不満による鳴きの回数が減ります。ごはんや水があるか、トイレが清潔か、寝る場所が快適かなどです。基本がきちんとしていると満足感を感じられるため、猫は「今は鳴かなくても大丈夫」と安心できるでしょう。
さらに、家具の配置や生活リズムなど急な環境の変化は、猫にとって小さなストレスになります。日々の環境を一定に保つことを意識すると、猫は落ち着いて過ごせるようになります。「鳴く前に満足させる」ことは、猫の安心感を作る第一歩です。
遊びやスキンシップの時間を増やす
猫が頻繁に鳴くとき、もしかするとエネルギーが有り余っているのかもしれません。特に若い猫や好奇心旺盛な猫は、遊びや運動不足を鳴き声で訴えることがあります。
この場合、1日数回、数分ずつでもおもちゃで遊ぶ時間を作ってあげると、猫の満足感が高まります。さらに、なでる・話しかけるといったスキンシップも加えると、猫は安心して落ち着けるでしょう。
遊びやスキンシップが十分にあると、構ってほしいと鳴く回数も自然と減り、性格が穏やかになることもあります。
鳴き声に反応しすぎない
猫が鳴いたとき、早く静かになってほしい、または要求を叶えてあげないとかわいそうなどの思いから、すぐに反応していませんか?
猫の鳴き声に対してすぐに反応することを続けると、猫は「鳴けば思い通りになる」と学習してしまい、要求鳴きがエスカレートすることがあります。大切なのは、鳴いた瞬間には反応せず、静かになったタイミングで対応することです。猫が「静かにしているといいことがある」と理解すると、少しずつ落ち着いた行動が増えていきます。
根気は必要ですが、このステップを踏むことで、鳴き声に振り回されず、猫との関係性をより良く築けるようになります。
こんな泣き方には注意!病気の可能性がある猫の鳴き方

猫は鳴き声を通して気持ちを伝えますが、普段と違う声を出すときは、健康上のトラブルを知らせるサインかもしれません。特に声のトーンや長さ、鳴くタイミングが変化した場合は注意が必要です。
注意した方がいい猫の鳴き方を紹介します。
声が出にくい・かすれている鳴き方
いつもの「ニャー」とは違い、かすれた声や弱々しい鳴き声が聞こえたら注意が必要です。また、くしゃみや鼻水、目やにが伴う場合は、猫風邪やウイルス感染の可能性があります。
たとえば、朝にいつもなら元気よく「ニャー」と鳴く猫がかすれた声で鳴く、窓際でくしゃみをしている、食事のあとに鼻をすするような仕草を見せる、元気はあるのに鳴き声だけ弱いなどが挙げられます。室内飼いの猫でも、飼い主が外出先から持ち帰った菌で感染することがあるため安心できません。
また、症状がない場合でも、長時間鳴き続けることで声帯に負担がかかり炎症が起きることがあります。特に子猫や高齢猫は体力が少ないため、放置すると呼吸器疾患や肺炎に繋がることも。
小さな違和感でも見逃さず、まずは休める環境や温度管理、暖かい毛布など、体に優しい環境を整えてあげることが大切です。
痛みや苦しさを訴えるような鳴き方
普段と違う低い声や苦しそうな声は、痛みや体調不良を訴えている可能性があります。
猫は人間に言葉で伝えられないため、普段と異なる鳴き声は特に注意すべきサインです。嘔吐前後や、体の特定部分に触れた際に鳴く場合がありますが、その後落ち着くならしばらく様子を見てもよいでしょう。
しかし、嘔吐が繰り返される、鳴き声が長引く、動きが鈍いなどの症状があれば、重大な病気が隠れていることも考えられます。猫の様子をよく観察し、必要に応じて動物病院で診てもらうことをおすすめします。
行動の異変とともに急に鳴くようになった
普段より低い声や苦しそうな声で鳴くときは、猫が痛みや不調を感じているサインの可能性があります。
たとえば、おもちゃで遊んでいる最中に急に「ウーッ」と唸ったり、トイレで排泄しようとしたときに低く鳴くことがあります。体の一部に触れた瞬間だけ鳴く場合は、その部分に痛みがあるのかもしれません。寝起きに伸びをするときに、短く低く鳴くなどの変化も注意が必要です。
さらに、嘔吐の前後や食欲の低下、動きが鈍くなる、歩き方がぎこちないといった症状が伴う場合は、重大な病気が隠れていることもあります。自己判断せず、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
猫の鳴き方を理解して、より良い関係を築こう
猫の鳴き声には、喜びや甘え、不安や警戒、要求、そして健康のサインなど、さまざまな意味が込められています。
鳴き声の違いを理解することは、猫とのコミュニケーションを深め、信頼関係を築く第一歩です。鳴く理由を理解し、適切な対応や環境づくりを行うことで、無駄鳴きを減らしストレスの少ない生活を作れます。
猫の鳴き方を理解して、愛猫との信頼関係を築いていきましょう。