猫は、犬と同じようにトイレやごはん、いたずら防止などの基本的なしつけが可能です。本記事では、猫へのしつけ方やしつける際に押さえておくべきポイント、しつけがうまくいかない時の対処法についてケース別に紹介しています。猫を飼っている方やこれから飼う予定の方、猫のしつけに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
猫にしつけはできるのか?

猫といえば、自由気ままなところが魅力です。その性格から、犬とは違ってしつけができないというイメージを持つ方も少なくないでしょう。しかし、猫相手であっても、トレーニング次第でトイレだけでなく、ごはん、いたずら防止など、人と一緒に暮らしていく上で必要なしつけが出来ます。
犬には当然のように行うしつけですが、なぜ猫にとっては難しいのでしょうか。その理由は「猫の好奇心旺盛でマイペースな性格」にあるといわれています。
犬はもともと、集団生活の中で人間の狩りを手伝いながら「褒められる」ことで喜びや報酬を得てきた習性があります。犬は飼い主の指示に従い、できたらご褒美をもらうという繰り返しの学習やトレーニングを楽しめるのです。
一方で猫は、単体で行動し、自分の判断で狩りをしてきた動物のため、好奇心旺盛で思うままに動く習性があります。犬と違って服従訓練や集団行動で重要なコミュニケーションを猫はあまり必要としないため、繰り返されるトレーニングを好む猫は多くありません。
そのため、猫にしつける際は「犬とは違う」ということを念頭におきながら、根気強いトレーニングが大切です。ポイントを押さえたトレーニングで、猫も飼い主も、より楽しい生活を送れるでしょう。
猫のしつけをするのに適切なタイミング
猫のしつけを始める最適な時期は、一般的に飼い主が猫をお迎えする時期にあたる生後2〜3か月(8〜12週齢)とされています。
この時期は「社会化期」といわれ、まだいろいろなことに対して警戒心が薄く、環境の変化や新しい経験を受け入れる柔軟性が高い時期です。猫が新しい環境や人間、他の動物に慣れるための重要な期間といえます。
社会化期に警戒心がないわけではないものの、この時期に適切なしつけや良い経験を重ねることで、成猫になってからも人懐っこく、問題行動の発生を抑えられる可能性が高くなります。
しつけるときに心がけるポイント

猫をしつけるときに押さえておきたいポイントがいくつかあります。中でも重要なポイントを4つ紹介します。
悪いことをしたら、その場ですぐに叱る
しつける際に必ず必要なのが、叱る行為です。猫を叱るときは「すかさずその場で叱る」ことが重要です。時間が経ってしまうと猫は自分が取った行動を忘れてしまい、何のことで叱られているのかわかりません。そのため、猫がしてはいけない行動を取ってから1秒以内、遅くとも3秒以内に叱るのが理想です。
また、叱るときは回りくどい言葉で長く叱るよりも、「ダメ!」「こら!」「NO!」など、2文字程度のシンプルな単語で叱るようにします。怒っている意味を説教がましく言っても、猫には伝わらないばかりかストレスになるだけです。不快感から飼い主への嫌悪感を抱いて、信頼関係が築けなくなる可能性もあります。
正しく叱ることで、今したことで嫌なことが起こる、飼い主がいつもと違うと判断し、「してはいけないことなんだ」と理解します。「悪いことをしたらすぐに短い言葉を使って、いつもより大きく強い口調で叱る」ことを心がけましょう。
しつけに一貫性をもつ
猫をしつけるときは、しつけに一貫性を持つことも重要なポイントです。同じことをしても叱られるときと叱られない時があると、猫は混乱してしまいしつけにはなりません。
同じ行動に対して家族の中でも叱る人と叱らない人がいる、飼い主の事情や機嫌で日によって叱られる時と叱られない時があるなど、整合性がなければ猫にルールは伝わりません。
また、猫を叱るときは声のトーンやセリフを統一することも大切です。人によってバラバラの叱り方をすると猫は理解できず、定着が難しくなってしまいます。一貫性を持ったしつけを意識することにより、猫はしてはいけないことを学習していきます。
叩く、怒鳴る、閉じ込める行為はしない
叱るときに猫を叩く、怒鳴る、閉じ込めるなどの行為は絶対にしてはいけません。
叩くことや怒鳴る行為は、猫に強い恐怖心を与えてしつけが難しくなるだけでなく、臆病な性格になります。ひどい場合には、人間恐怖症になり近づくことも難しくなってしまいます。突然閉じ込める行為は、自由に動き回る猫にとって大きなストレスです。このストレスによって脱毛や膀胱炎などの病気になる、ご飯を食べなくなるということもあります。
また、犬のしつけのように猫の前に手のひらを出して寸止めする行為は、手を怖がる原因となるためよくありません。ほかにも、叱るときの手の動きや声の大きさで、猫を怖がらせていないか注意が必要です。
このような行為は恐怖心から不安にさせるだけで、問題行動をエスカレートさせる原因にもなり得ます。反対に攻撃的な性格になり、何も言うことを聞いてくれなくなる可能性もるため絶対にやめましょう。
きちんと褒めることも大切
しつけるときは、叱ることと同じくらいきちんと褒めることも重要です。
猫にとって褒められることは、愛情を感じる大切な行動です。悪いことをした時に叱るだけで褒めることをしないでいると、信頼関係を築けず臆病になることや気難しい性格になる可能性があります。名前を呼ぶと近くに来てくれた、いたずらをすぐにやめられたなど、良いことができたときにはしっかり褒めましょう。
ただし、大きい声や大げさなリアクションで褒めるのは猫にとっては怖いだけです。猫の好きな首の周りやあごの下を撫でながら優しい声で褒めることや、おやつなどのご褒美をあげることで猫は嬉しい気持ちになります。
また、褒めるときも「その場ですぐに褒める」ことがポイントです。叱る時と同じく、時間が経ってから褒められても、猫は何を褒められているのかわかりません。学習してもらうためには、猫が良いことをしているタイミングで優しく褒めてあげましょう。褒めるときも「えらいね」「良い子だね」と、短い言葉で褒めてあげてください。
基本のしつけ方法

猫と人間が暮らしていく上でお互いが快適に暮らせるための、基本的なしつけと方法を4つ紹介します。猫を飼っている方は、ぜひしつけの参考にしてみてください。
トイレのしつけ
猫を迎えるにあたって、一番初めに行うトイレのしつけ。猫は、決まった場所で排泄する習性があるため、排泄する場所だと認識すれば、スムーズにトイレの場所を覚えてくれます。そのため、トイレは子猫であれば1日~1週間程度でしつけができます。
トイレのしつけで必要なものは、猫のサイズに合ったトイレトレーと猫砂です。猫砂はいろいろなタイプのものがありますが、掃除が手軽かつ排泄物のにおいを消してくれるものがおすすめです。トイレの場所は、明るく人通りの多いリビングや廊下よりも、静かで落ち着きながら用を足せるリビングの隅などを選びましょう。
必要なセットを準備したら、まずは猫がトイレに行きたい時のサインに気づくことから始めます。猫がソワソワし出し、地面を嗅ぎ回る行為が見られたらすかさずトイレに連れていきます。はじめは猫のおしっこを拭いたティッシュや猫砂をトイレに置くことで、猫はトイレの場所を認識しやすくなるため、おすすめです。
猫は、自分のおしっこのにおいがする場所をトイレと判断します。そのため、粗相をした場所をそのままにしておくと、その場所をトイレだと勘違いして、いつまでも粗相をしてしまうケースもあります。できるだけ早く掃除をして、消臭スプレーなどで対応しましょう。
爪とぎのしつけ
猫は、お手入れやストレス発散、マーキングなどのために必ず爪とぎをします。何も教えずにいると、家の家具や壁に爪とぎをして、飼い主を困らせてしまう猫も少なくありません。
爪とぎのしつけをするには、トイレトレーニングと同じく「爪とぎしていい場所を教えること」が必要です。専用の爪とぎ器を用意したら、まずは飼い主が爪とぎのフリでお手本を見せるのも効果的です。子猫が親猫をマネするのと同じく、飼い主の姿を見て「これは爪をとぐ場所である」と理解してくれるでしょう。猫を爪とぎに乗せてにおいをつけていくことで、自分の物と認識して爪とぎを始めることもあります。
爪とぎ器は猫によって好みの素材が異なるため、飼い猫にあった爪とぎ器を用意することも大切です。麻素材や段ボール製のものまで、多くの種類からいくつか試してみるのも良いでしょう。爪とぎ器の設置場所としては、猫が寝ている場所の近くや家の中で目立つ場所、猫が楽に爪とぎできる高さにある場所がおすすめです。
噛み癖のしつけ
猫は本来狩猟動物のため、相手をひっかく行為、噛みつく行為は珍しい行動ではありません。ですが、日常生活において飼い主に噛みつく行為はやめさせたいものです。猫が噛みつく理由は、ストレスを感じたとき、発情期、触れられたくないとき、遊びたいときなどさまざまです。
猫が噛みついてきたら「痛い!」「だめ!」など、はっきりと伝えてやめさせましょう。しかし、勢いで叫ぶ、怒鳴り続けるなどは猫に恐怖心や不安感を与えてしまい、逆効果です。また、身振り手振り騒ぐと、猫は飼い主に遊んでもらっていると勘違いしてしまう場合もあります。そのため、伝えるときは落ち着いた声で率直に叱ることがポイントです。1回で理解してくれることは少ないものの、何度も繰り返すことで「噛むことはいけないことなんだ」と理解してくれます。
また、猫が噛みついてきた直後に何かしらの要求に応えると、猫が「良いことをした」と勘違いしてしまう場合があります。行動がエスカレートする可能性もあるため、要求に応えるタイミングにも注意しましょう。
乗ってはいけない場所に乗るときのしつけ
猫はテーブルの上やキッチンの棚周辺など、乗ってはいけない場所に乗ることがよくあります。高い身体能力を活かして、野生時代の本能によって高いところに飛び乗りたくなる習性を持っているのです。
猫が飛び乗ってはいけないところに来ないための対策として、まずはテーブルに乗らせないための環境作りが大切です。猫は、高いところを好むため、テーブルよりも高いキャットタワーを設置することも一つです。テーブルやカウンターに、猫が好きなおやつや食べ物を置いておくと、猫は飛び乗りやすくなってしまうため注意が必要です。
猫が乗ってはいけない場所に乗ったときは、近くにある物を落とす、大きな音を立てるのも効果的です。猫は「ここに登ると嫌なことが起きる」と学習し、その行動は徐々に減っていくでしょう。
しつけがうまくいかない場合と対処法

しつけがうまくいかないときは、何らかの原因があります。考えられる原因とその対処法について紹介します。
トイレが自分に合っていない
スムーズにいけば、遅くとも1週間程度で習得できるトイレトレーニングですが、なかなかうまくいかない場合があります。考えられる原因としては、トイレの設置場所が落ち着かない、トイレの砂が嫌い、トイレトレーの形や構造が気に入らないなどが考えられます。
トイレのしつけがうまくいかない場合は、トイレの設置場所を変える、トイレトレーの形を見直す、トイレの猫砂を変えてみるなどで様子を見てみましょう。何度も同じ場所に粗相してしまう場合は、その場所にトイレを設置してみるのも一つの案です。
狩猟本能を満たしたい
猫は狩猟動物のため、猫じゃらしなどに反応して狩猟本能を満たしたいという習性があります。そのため、食事が十分でも狩猟本能が満たされないと、カーテンに飛びつく、ティッシュや袋にじゃれつくなどの行動が見られます。
猫のいたずらがなくならないと感じる場合は、狩猟本能を掻きたて、ストレス解消になる運動をすることで解消できます。追いかける遊び、探す遊びなどで一緒に遊んだり、狩猟本能を刺激するようなひとり遊び用のおもちゃを与えるのがおすすめです。
退屈
猫は毎日家の中で暮らしているため、外の世界を比較するとどうしても刺激が足りずに暇を持て余してしまいます。退屈だと感じると、刺激を求めて高いところに乗る、ゴミ箱を漁る、飼い主にいたずらしてしまう場合も少なくありません。
このような行動が見られる場合も、猫のお気に入りのおもちゃで遊んであげるほか、知育玩具など刺激を与えられるようなおもちゃを用意するのが効果的です。
かまってほしい
猫は、寂しがりやで甘えんぼうな動物です。何度同じことで叱っても繰り返す場合は、猫が飼い主に構ってもらいたくてわざと同じことをやっている可能性も考えられます。
ダメなことだと理解していても、飼い主に構ってもらいたくてちょっかいをかける、爪とぎをするなど、しつけがうまくいかない場合は、猫が飼い主の気を引きたい気持ちがあるのかもしれません。わざとやっていると感じた場合は、毎日定期的に遊ぶことが大切です。
しかし、遊ぶことを続けてもひどくなった場合は、一切無視して「騒ぐと無視される」と認識してもらうことも必要になります。
愛猫をしつけて楽しく快適な生活を送ろう
今回は、猫をしつけるときに心がけるポイントやしつけの方法、しつけがうまくいかない場合に考えられる原因や対処法について紹介しました。
猫は犬と違ってしつけるのが難しいと思われがちです。しかし、ポイントを押さえて猫と向き合うことで、基本的なしつけは覚えてくれる動物です。日常生活で必要なトイレや爪とぎ防止、噛み癖の抑制などを習得することで、お互いがより暮らしやすくなることでしょう。
本記事を参考にしながら、愛猫と楽しく快適な生活を送ってみてはいかがでしょうか。