猫にとって散歩は、必ずしも必要ではありません。猫によっては良い効果が期待できる一方、散歩によるデメリットや注意点を理解した上で万全な準備が必要です。
本記事では、猫の散歩のメリットとデメリット、注意したいポイントについて詳しく紹介します。猫を飼っている方はぜひ参考にしてみてください。
猫に散歩は必要なのか?

猫と犬は似ている特性も多いことから、犬と同じく散歩が必要なのではないか?と考える方も少なくないでしょう。実際に外を散歩している近所の猫や、ペットショップでは犬と同じように、猫用のハーネスやリードが販売されている店舗もよく見かけます。
しかし結論から言うと、猫に散歩は必要ありません。
猫は、そもそも長距離運動をしない動物です。そのうえ、時間をかけて長い距離を歩く、外を走り回るといった持久力もありません。そのため、「猫には外での散歩が最適」とは考えなくて良いでしょう。猫は縄張り意識が強く、屋内だけの生活に十分適応できます。
しかし、性格や生まれた環境によっては散歩が向いている猫もいます。好奇心旺盛な猫や、保護猫で外での生活に慣れている猫などは、適度な散歩が心身に良い影響を与えるかもしれません。猫の散歩では、メリットとデメリットを十分に理解し、万全に準備したうえで連れて行ってあげることが重要です。
猫の散歩のメリット

猫を散歩させることにより、猫に良い影響を与える場合があります。散歩による主なメリットを3つ紹介します。
運動不足解消
室内で生活していると運動量が少なくなりがちで、肥満や運動不足による健康リスクが高まる場合があります。
そのような場合は、散歩することによって行動範囲が広がり、運動不足解消の手助けになることでしょう。運動量が増えると、肥満だけでなく糖尿病など生活習慣病リスクの低下も期待できます。
室内遊びでも運動不足は解消できますが、外での散歩は自然な地形を歩くことで、普段使わない筋肉やバランス感覚が養われます。
特に高齢の猫や肥満気味の猫にとって、定期的な運動は関節の柔軟性や筋力を維持するのに有効といえるでしょう。
猫の好奇心を満たす
猫はもともと狩猟本能が強く、動くものや新しい環境に対して強い興味や好奇心を持ちます。特に室内飼いの猫は、毎日同じ場所での生活に退屈さを感じることがあるでしょう。散歩は、そんな猫の好奇心を満たすというメリットがあります。
外の世界には、風や草の香り、鳥が飛び立つ姿、虫の動き、木々の揺れる様子など、猫の五感を刺激するものがたくさんあります。土の上を歩くだけでも、室内とは違う感触を楽しめるでしょう。屋外の散歩でしか体験できない多くの刺激は、猫の好奇心を満たします。
ストレス解消
室内飼いの猫は安全な生活を送れる反面、狭い室内環境にストレスを溜めてしまうこともあります。同じ景色や匂いの中では刺激が足りないと感じてしまうのです。
毎日室内にいて退屈な猫にとっては、散歩によって好奇心が刺激され、ストレス解消に繋がる場合があります。特にエネルギッシュで冒険心の強い猫は、散歩が心と体のストレスを発散する時間になるでしょう。
しかし、すべての猫が散歩することでストレス解消できるわけではありません。外が苦手な猫を無理に外に連れ出すと、逆にストレスになる可能性もあります。そのため、猫の様子を見ながら、嫌がっていなければ少しずつ慣らしていくことがポイントといえます。
猫の散歩のデメリット

猫の散歩は運動不足の解消やストレス発散などのメリットがある一方、リスクやデメリットもあります。ここでは、散歩による主なデメリットを3つ紹介します。
感染症にかかる恐れがある
外での散歩は、猫にとって危険な病気や感染症のリスクを高めます。草むらを歩くことや野良猫に会うことで、フィラリア、ノミ、ダニなどの寄生虫が体についてしまう可能性があります。知らない間に体に付着したさまざまな菌を、自宅に持ち帰ってしまうことも少なくありません。
これらの病気や感染症は、散歩の頻度が高いほど感染のリスクも高まるでしょう。さらに、散歩中に他の動物とのふれあいや、外にあるゴミ、排泄物などから感染症を体に取り込んでしまう可能性もあります。
逃亡や脱走のリスクが高まる
屋外に慣れていない猫の場合、大きな物音への驚きや興奮した拍子にリードが外れて、脱走してしまう恐れがあります。どんなに散歩に慣れている猫でも、予想外の出来事が起きた際に脱走するケースがあることも頭に入れておくことが重要です。
また、一度外の世界の楽しさを知ってしまうと、自宅にいる間も飼い主が目を離した隙に脱走してしまう可能性が高まります。
事故やケガをする可能性がある
猫の散歩は、事故やケガのリスクがあることも忘れてはなりません。犬のようにリードやハーネスをつけていても、急な飛び出しにより車やバイクなどと接触事故を起こす危険性があります。
また、野良猫や鳥など他の動物とのケンカによってケガしてしまうこともあります。道路に落ちているガラスなどの破片や有毒な植物も、体に触れるだけでケガの危険があります。
散歩する際の注意点

猫の散歩では、気をつけるべき点が多くあります。猫も飼い主も安心して散歩するために、特に注意したいポイントを6つ紹介します。
ワクチン接種を済ませておく
外は、さまざまな感染症や病気にかかりやすくなります。完全に予防できるわけではないものの、散歩前の予防接種は欠かさないようにしましょう。「猫風邪」などの代表的な病気は、基本的な猫の3種混合ワクチン(猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症)で予防できます。
また、地域猫(飼い主がおらず、地域住民の理解と協力を得ながら適切に管理されている猫)が多いエリアの場合は、「猫クラミジア感染症」「猫白血病ウイルス感染症」「猫免疫不全ウイルス(猫エイズ)」など、主に外で暮らす猫に見られやすい病気をもらう可能性があります。より安心して散歩できるよう、ワクチンの追加接種を検討するのもおすすめです。
ハーネスとリードに慣れてもらう
猫の散歩において、リードやハーネスに慣れてもらうことは必要不可欠です。猫は体に何かを装着することが苦手な子も少なくありません。
散歩に連れて行く前に、家の中でおもちゃがわりに遊んでもらい「ハーネスやリードは安全なもの」と認識してもらいましょう。恐怖心を抱かなくなったら、短時間ハーネスを装着し、少しずつ装着時間を延ばしていきます。ご褒美におやつをあげると「ハーネスをつけると良いことがある」と学習してくれるため、おすすめです。
また、猫は非常に体が柔らかく、わずかな隙間でもすり抜けられます。首輪だけでは驚いた拍子にすぐ取れてしまう危険性があるため、体にぴったりフィットするハーネスをつけると、脱走のリスクを軽減できます。また、ハーネスやリードは遠くからでも目に入る派手な色を選びましょう。
キャリーバッグを持っていく
リードやハーネスの装着になれたとはいえ、散歩中にずっと装着していると負担を感じる猫も少なくありません。もしもの事態に備えて、猫が安心して移動できるキャリーバッグも持って行くと安心です。散歩中は猫の様子を見守りながら、いつでもキャリーバッグの中で休憩できるようにしてあげましょう。
また、キャリーバッグの中から出す際は、周りに他の動物や猫が興奮するような物がないか、リードやハーネスがしっかり装着できているかをチェックしてから出してあげてください。
ノミダニ駆除薬をつける
体に付着したノミやダニを素早く駆除できる「ノミダニ駆除薬」も、散歩前に欠かせない準備の一つです。
外には、ノミやダニなどの虫が多く存在しています。知らない間に体に付着し、家に持ち帰ってくることもあるでしょう。もしも咬まれてしまうと、痒みや赤み、寄生虫感染、アレルギーなどの症状が出る危険性があります。また、重症の場合、猫だけでなく飼い主に感染してしまう可能性もゼロではありません。
ノミダニ駆除薬は動物病院で処方してもらえるため、事前に投与しておくことをおすすめします。
散歩コースは入念に選ぶ
散歩する際は、車や人通りの少ないコースを選ぶのがおすすめです。ノミやダニが多く生息している草むらや、地域猫や野生動物が住んでいそうなエリア、車通りや人通りが多い場所は避けるのが無難です。
猫は散歩中も自由気ままでマイペースなため、少しでも安心して散歩できるコースを選ぶと、猫も飼い主も落ち着いて散歩できます。
マイクロチップの装着もおすすめ
「マイクロチップ」とは動物の体内に装着する電子タグのことをいい、装着すると識別番号をもとに飼い主の情報が分かる仕組みになっています。散歩中の脱走だけでなく、地震などの災害でも、飼い主のもとに戻る確率が高まります。
猫は好奇心が強く、散歩中に驚いて急に走り出すなど迷子になってしまう可能性もゼロではありません。もしもの場合に備えて、マイクロチップの装着も検討するといいでしょう。
マイクロチップは一度装着すると首輪のように外れて落ちる心配が少なく、猫は生後4週齢頃から装着できるといわれています。
猫を散歩させる際は十分な準備と注意が必要
猫の散歩は必ずしも必要ではないものの、猫の性格や今までの生活環境によっては、ストレス解消や好奇心を満たすなど、複数のメリットがあります。
一方で、猫の散歩には入念な事前準備が不可欠です。感染症やケガ、脱走など大事な猫が危険な目に遭わないよう、散歩する際はきちんと準備してから行くようにしましょう。
散歩によるメリットとデメリットを理解して、猫との散歩を楽しんでください。