防災

富山市の災害リスクと避難所について

富山でまことしやかに囁かれている「災害から立山が守ってくれる」という立山神話。本当に安心して良いのでしょうか?

富山は本当に「災害が少ない」県なのか。データを見てみましょう。

まず、地震については、過去10年間(2012~2022)では、震度1以上の地震は125回と全国最も少なくなっています。また、そのうち震度3が7回、震度4が2回でした。

(気象庁 震度データベース検索よりhttps://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/

また、台風などの水害被害の累積額についても、過去10年間(2010~2020)で2500億円以下と全国的にも比較的低くなっています。

(国土交通省 水害統計より https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032226044

たしかに、統計的にみてみると、近年県内で発生している地震や水害などの災害の頻度や被害は比較的少ないといえます。しかし、だから安心安全というわけではないということを忘れないでください。

万が一の備えは必要

「災害」とは、自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態を指します。それでは、富山で気をつけなければならないのは、どのような災害なのでしょうか。

地震

富山県内には、過去に大地震を引き起こしてきた5つの活断層が存在します。

“富山県の主要な活断層は、砺波平野の西縁と東縁に砺波平野断層帯が、富山市の西方に呉羽山断層帯、石川県との県境から岐阜県にかけて庄川断層帯が、県南部の岐阜県との県境付近に、牛首断層帯跡津川断層帯があります。また、富山県周辺に震源域のある海溝型地震はありませんが、日本海東縁部で発生する地震で被害を受ける可能性もあります。

富山県の地震活動の特徴 | 地震本部 (jishin.go.jp)

なかでも、富山市をおおむね南北に延びる「呉羽山断層帯」は、ひとたび動くとマグニチュード7.2、最大震度7の地震が想定されていて、今後30年以内の発生確率は全国的にみても高いグループに入ります。

大雪

富山県民にとって最も身近で切実な災害といえば、「雪害」かもしれません。

雪の季節、天気予報を見るときに「この言葉を聞いたら警戒!」というキーワードが2つあります。まずひとつは、「非常に強い寒気」。上空約5500m付近で気温が―35℃、約3000m付近で―20℃を下回るような寒気が流れ込む場合が大雪の目安といわれています。
西高東低の気圧配置が強まって大陸から寒気が流れ込むと、比較的暖かい日本海の上で水蒸気がたっぷり補給され、さらには上空の冷たい空気と下層の暖かい空気の温度差の影響もあり対流活動が活発になります。すると、雪雲が発達するのです。寒気が強ければ強いほど、雪雲は発達し、日本海側に大雪をもたらすというメカニズムです。

ふたつめは、「JPCZ」=「日本海寒帯気団収束帯」。「JPCZ」とは、強い寒気が流れ込むときに朝鮮半島に「白頭山」という標高の高い山にぶつかり、ふた手にわかれ、その流れが日本海で合流することで、雪雲が発達。このJPCZが停滞すると、次々と雪雲が流れ込み、大雪につながってしまうのです。雪のシーズン、天気予報で「非常に強い寒気」「JPCZ」というキーワードが出てきたら警戒をしてください。

(ケーブルテレビ富山「防災スイッチON!とやま」)

強風

富山をはじめ、北陸地方では春先に南寄りの乾燥した強風が吹くことが多くあります。

これは、富山の地形が大きく関係していて、山地を風が吹き降りる「フェーン現象」によるものです。日本海に低気圧があるときに、富山では南寄りの風が吹きやすく、3000m級の立山連峰から吹き降ろします。この強風により、物が飛ばされたり、トラックが横転する被害が出たこともあります。
加えて、この風は暖かく乾燥した性質があるため、他にもさまざまな災害が懸念されます。暖かい風が雪を解かせば、融雪による土砂災害が起きる可能性がありますし、空気の乾燥により、大規模な火災につながる危険もあるのです。

実際過去にはこんな災害が・・・

地震

富山県では、1858年の飛越地震がよく知られています。跡津川断層帯が動いたことにより、大鳶山・小鳶山が崩れるほどの山崩れがあった地震です。歴史をさかのぼってみると、県内の活断層が動いて地震が発生したケースや、石川県能登半島や新潟県中越で発生した地震の影響で被害を受けることもあります。

 “富山県の歴史の資料に現れる古い地震には、863年の地震(M不明)があります。この地震では富山県、新潟県に被害が生じ、山崩れや民家の倒壊などで多数の圧死者が出たといいます。

津波被害があったかどうかは不明です。震源の位置が不明なため、陸域の浅い地震か日本海東縁部の地震かは分かりません。歴史の資料によって知られている陸域の浅い場所で発生した主な被害地震としては、1586年の天正地震(M7.8)と1858年の飛越地震(M7.0~7.1、飛騨地震とも呼ばれます)が知られています。

1858年の飛越地震では、跡津川断層帯に沿う集落で特に大きな被害が生じました。それから離れるにしたがって、特に、南東側では急激に被害は小さくなります。家屋倒潰率80%を超えた10の集落はすべて跡津川断層帯に沿うところにあり、この断層で地震が発生したものと考えられます。富山平野東部では、多数の家屋倒壊、富山城の石垣などの破損や死者40~50名の被害が生じました。

また、山崩れが多く発生し、中でも大鳶山・小鳶山の崩れ(立山鳶崩れ)は湯川や真川(常願寺川上流)をせき止め、その後の決壊で泥水・大木を押し流し、下流の村々は洪水になり、大きな被害が生じました。

県内では、1933年の能登半島の地震(M6.0)や「平成19年(2007年)能登半島地震」(M6.9)、「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」(M6.8)などのように隣接する県の陸域で発生する地震によっても被害を受ける場合があります。

富山県の地震活動の特徴 | 地震本部 (jishin.go.jp)

最近では、2023年5月5日に能登半島で震度6強の地震が発生し、富山市でも震度4の揺れを観測しました。また、この地震は「長周期地震動」といって、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れが観測されました。

高層ビルは大きく長時間揺れ続けることがあったり、揺れが遠くまで伝わりやすく震源から離れても大きく長く揺れることがあったりするので、家具類の転倒などに注意する必要があります。

水害

常願寺川や神通川といった急流河川が流れる富山市。過去には何度も水害に悩まされてきた地域でもあります。街なかを流れる神通川については、たびたび氾濫を起こしていたことから、明治に入ってから河川改修工事が行われてきました。

明治期までの神通川は、富山市中心部で大きく蛇行して流れており、洪水時にはこの箇所でよくあふれていました。このため、明治34年(1901)~36年(1903)、富山県はこの蛇行している区間の西側にまっすぐな水路を建設し、川の流れを直線化する「馳越線(はせこしせん)工事」に着手しました。いまの富山大橋から富山赤十字病院あたりの区間です。
この工事は、川の中央に幅2m、深さ1.5mの細い水路を堀り、自然の力を利用し洪水のたびに少しずつ水路の幅を広げていくものでした。現在のように、完全に流れを移し替えたのは大正10年(1921)頃のことです。”

富山県/富岩運河の建設と利用の歴史 (pref.toyama.jp)

大雪

2021年冬、県内は記録的な大雪となり、富山市では、短期間に多くの雪が降り積もり、最大で128センチの積雪を観測しました。この大雪の時に困ったことや被害について、ケーブルテレビ富山では独自にアンケートを行いました。その結果がこちらです。

上位には車の渋滞やスタック・立往生など車に関するものがランクイン。

公共交通機関の乱れなども含めると多くの方が交通障害の影響を受けたことが伺えます。農業用ハウスやカーポートが損壊したり、物流の停滞により、スーパーやコンビニから生鮮食品がなくなったりするなど身近なところで被害が出ました。また、雪下ろし中の事故によりケガをした人や亡くなった方が出るなど人的被害もありました。

いざという時に逃げる場所を決めておこう

意外と知られていないのが「避難所」と「避難場所」の違い。

「避難所」は、災害時に一定期間生活をしながら過ごす場所、「避難場所」は、一時的に身を守るために避難する場所のことを指します。東日本大震災では、避難所と避難場所の定義があいまいだったために、津波で命を落とす例もありました。

また、一口に「避難場所」といっても、災害の種類によって指定が異なっているケースがあります。富山市の街なかの例を見てみましょう。

富山城址公園」は地震や火災には対応していますが、洪水の場合は浸水のおそれがあるので適していません。近隣だと洪水の場合は、「富山県民会館」の3階以上が避難場所に指定されています。

また、全国的には避難場所に設置された看板に、どの災害に適しているのか記号を用いてわかりやすく表示してあります。最寄りの避難場所を確認してみましょう。

富山の避難場所・避難所一覧

まずは、お住いの地域や学校・職場の近くの「避難場所」から確認しましょう。避難場所は、災害が起きた時、命を守るために一時的に避難するところでしたね。富山市では、災害の種別ごとに避難場所を指定しています。

洪水の緊急避難場所一覧 (PDF 231.7KB) (toyama.lg.jp)

地震・大規模な火事の緊急避難場所一覧 (PDF 39.3KB) (toyama.lg.jp)

津波の緊急避難場所一覧 (PDF 45.8KB) (toyama.lg.jp)

次に、避難所を確認しておきましょう。避難所は、災害時に一定期間生活をしながら過ごすところです。多くは市内の小学校・中学校・高校などが指定されています。最新の情報は、富山市のホームページから確認することができます。

避難所の一覧 (PDF 219.0KB) (toyama.lg.jp)

なお、避難先には優先順位があります。

災害の規模等に応じて、避難所を開設する優先順位の区分を次のように設けています。

避難所の種類について

第1次避難所」は、災害発生時等において第1次に開設する避難所で、主に小学校体育館を指定しています。「第2次避難所」は、第1次避難所に収容しきれない場合等において第2次に開設する避難所で、主に中学校体育館を指定しています。「第3次避難所」は、第1次避難所、第2次避難所が収容しきれない場合等において、第3次に開設する避難所で、主に高等学校体育館等を指定しています。第1次から3次避難所を補って開設する避難場所で、災害の大きさによって、「その他避難所」が必要に応じて開設します。

福祉避難所とは

また、災害時の避難者のうち、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者等、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする方を受け入れる「福祉避難所」があります。富山市が福祉避難所の開設が必要と判断した場合に、福祉避難所の施設管理者に開設を要請します。令和3年9月9日現在、富山市では65の福祉施設や保育所などが福祉避難所に指定されています。

(福祉避難所に指定した施設一覧https://www.city.toyama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/913/hukusihinanjo20210909.pdf

避難場所や避難所に行くことだけが「避難」ではありません。「分散避難」や「在宅避難」も方法のひとつです。避難所や避難場所での密を避けるために、安全な場所にある知人・親せき宅を避難先に選ぶ「分散避難」や、自宅が安全な場合は「在宅避難」も考えておきましょう。

富山県で起きやすい災害やいざという時の避難先についてご紹介してきました。

身近にどんなリスクがあるのか、どこに逃げたらよいのか、ハザードマップを見るなどして、改めて家族で確認できるといいですね。 

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鈴木佑実

鈴木佑実

ママ防災士です!

約10年アナウンサーとして報道機関で仕事をしてきました。 ケーブルテレビ富山の防災番組「防災スイッチON!とやま」の制作・ナビゲーターを担当しています。

  1. 【子どもの防災】取るべき行動と必要な備えとは?

  2. 富山市の災害リスクと避難所について

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