地震や集中豪雨などの自然災害は、全国で毎年のように起きています。災害時、赤ちゃんは自分一人で避難することも避難生活を送ることもできません。支援や配慮が必要です。
赤ちゃんのいる家庭では、日ごろから、どんな備えをすればよいのでしょうか。いざというとき災害弱者となりうる赤ちゃんの防災について考えてみませんか。今回は、事前の備えに役立つ情報を中心に紹介します。
赤ちゃんの防災はなぜ必要なのか

赤ちゃんを育てている家庭の皆さんに日頃の備えを聞いてみると、「しなければいけないと思いつつしていない」「おむつやミルク、おしりふきは大量にあるけれど、それ以外は特に」といった声が上がりました。
2023年2月末現在、富山市には1歳未満の赤ちゃんが約2,500人います。一方、市の乳幼児向けの備蓄は缶の液体ミルク160個、紙おむつ6,000枚、離乳食の備えはないということです。
市内全域が被災するような大規模災害の場合、物資が不足する可能性があります。だから、各家庭で備える必要があるんです。
赤ちゃんがいる家庭で備えておくべきグッズ
備蓄しておくべきグッズは?
赤ちゃんのために備蓄する防災グッズを確認してみましょう。

紙おむつ、おしりふき、ポリ袋、歯磨きシート、水、液体ミルク、離乳食(そのまま食べられるビン詰めやレトルトパウチのもの)、おやつ、使い捨て哺乳瓶、紙コップ、皿、スプーン、カセットコンロ、カセットボンベなど最低3日分、1週間分の備えがあると安心といわれています。
赤ちゃんにアレルギーのある場合は、それに対応したミルクや離乳食の準備が必要です。また、赤ちゃんはすぐ大きくなるので、成長や発達に合わせて備蓄の見直しをしてください。おむつなどは1つサイズが大きいものもあると良いでしょう。
赤ちゃんと家族のための災害に備えるチェックリスト

ケーブルテレビ富山では、備蓄や非常用持ち出し品をまとめた「赤ちゃんと家族のための災害に備えるチェックリスト」を作りました!富山市内の保健福祉センターなどでも配布しています。
ダウンロードできるので、ぜひご利用くださいね。折りたたんでおでかけ用バッグにも入るサイズですよ!
「赤ちゃん防災チェックリスト」ダウンロードはこちら
おでかけバッグを避難バッグにしておこう

いつもの「おでかけバッグ」を「避難バッグ」にしておくのがおすすめです。
赤ちゃん連れの皆さんが普段持ち歩いているバッグの中には、ミルクや飲み物、離乳食やおやつ、おむつ、おしりふきシート、授乳ケープ、着替えなどが入っているかと思います。
その中に、非常時に役立つものを加えるだけで立派な避難バックになるんです。
①赤ちゃんの避難に欠かせない「抱っこひも」

災害時はベビーカーが使えない可能性もあるので、抱っこひもは常に持ち歩くようにしましょう。
②家族の連絡先がわかるメモ
赤ちゃんは自分の情報を話すことができません。そのため、家族の連絡先や赤ちゃんの呼び名などをメモにまとめておきましょう。家族写真を入れておくのもよいでしょう。
③母子手帳やお薬手帳のコピー
母子手帳ならば、赤ちゃんの健康状態や予防接種の状況が分かるページ、普段使っているお薬がある場合は、薬の情報がわかるページのコピーを入れておきましょう。
④防災グッズ

小さな懐中電灯・モバイルバッテリー・ホイッスルなどをポーチにまとめて追加しましょう。
⑤音の出ないおもちゃ
避難先で赤ちゃんをあやすためのおもちゃは音の出ないものがおすすめです。例えば、薄くて小さなミニ絵本、ぬいぐるみ、シールなど月齢に合わせたものを考えてみてください。
⑥保護者が安心するもの

意外と忘れがちなのが、保護者ご自身の備えです。500ml程度の飲み物や簡単に栄養補給ができるゼリー、シリアルバーなどの軽食を忍ばせておきましょう。
このほかにも、赤ちゃんの月齢や発達状況に合わせて、必要なグッズを考えてみてください。
おでかけの時にミルクやおむつなどを消費したら、その都度中身を追加しておき、いつでも持ち出せる状態にしておくことが理想です。ミルクやおむつなどの消耗品の量の目安は、1〜2日ほどしのぐことをイメージして準備をしておくとよいでしょう。
知っておきたい災害時の授乳のポイント3つ
①紙コップ授乳の方法を知っておく
断水でミルクの調乳ができない、ミルクはあるけれど哺乳瓶が消毒できない、そんな時に知っていると安心なのが「紙コップ授乳」です。
用意するのは、液体ミルク・紙コップ・汚れてもよいタオル。実は、医療現場ではコップでの授乳が日常的に行われているそうで、生まれたばかりの新生児でもコップで飲むことができるとのことです。

- 小さめの紙コップに、液体ミルクを注ぎます。液体ミルクは常温でも飲めますが、湯せんして人肌程度に温めておいてもよいでしょう。飲み口を拭いて清潔にしたあと注いでください。
- こぼれて汚れるのが心配な場合は、赤ちゃんの首元に汚れてもよいタオルを敷きましょう。
- 赤ちゃんを縦に抱きます。
- ミルクの入ったコップを赤ちゃんの下唇に触れるように固定します。この時、ミルクを流し込んではいけません。30分くらい時間をかけてゆっくり飲ませましょう。
紙コップ授乳の注意点として、飲み残しのミルクは廃棄してください。粉ミルクの場合は、必ず煮沸後70℃以上のお湯で調乳してください。くれぐれも安全に気をつけて、日頃から練習してみてくださいね。
②便利グッズをストックしておく

紙パックや缶の液体ミルクにそのまま装着できる乳首もあります。また、哺乳瓶のインナーバッグを使用すれば、毎回洗う手間も省くことができます。

③哺乳瓶の消毒方法を知っておく
お湯が沸かせる状況だったら、哺乳瓶の熱湯消毒や調乳も可能です。赤ちゃんのいる家庭は、特にカセットコンロ・ボンベ・水の備えは必須かもしれません。大きな鍋などに水を多く入れ、よく洗浄した部品を入れてから、沸騰させます。
消毒時間は沸騰後5〜15分くらい。お湯の温度は 100℃ですが、鍋肌がそれ以上の高温となっているため、プラスチック製だと変形することがあります。取り出す時に哺乳瓶が高温となっているため、やけどに注意してください。

また、市販の消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)がある場合は、大きめのチャックのついているポリ袋に、薬剤に合わせた量の水を入れて消毒液を作ります。次亜塩素酸ナトリウムの反応により、洗浄した哺乳瓶を一時間程度つけおくことにより消毒を行い、その後哺乳瓶はそのまま使用することができます。
断水時のスキンケアは?
少ない水でもスキンケアが可能
災害時は、断水で沐浴ができないことがあるかもしれません。赤ちゃんは汗をかきやすく、おむつかぶれなども気になりますよね。そこで、少ない水で、汚れたところだけを洗う「部分洗い」を紹介します。

用意するものは、ぬるま湯の入ったボトル・泡タイプの赤ちゃん用せっけん・紙おむつ・おしりふきやタオル・防水シート・保湿クリームなどです。赤ちゃんのいるご家庭ではふだん使っているものが多いと思います。
ちなみに、今回使用したボトルは、100円ショップで買ってきたドレッシングの容器。ケチャップの容器やペットボトルでも代用することができると思います。
それでは、一番汚れやすい赤ちゃんのおしりを洗っていきましょう。
1. 水の節約のため、最初におしりふきで汚い部分を拭きます。

2. おむつの上で洗います。泡タイプのせっけんを使い、皮膚が重なっているところは汚れやすいので念入りに洗っていきます。

3. お湯で流します。やけどしないように、冷たすぎないように適温のお湯で。

4. おしりふきやタオルで軽く拭いて、下に敷いていたおむつは捨てます。新しいおむつをあてて完了です。
赤ちゃんは吐き戻しやミルクをこぼしたりなど、顔や首回りが汚れやすいですよね。新しいおむつを使えば、顔や首なども洗うことができます。断水時にはぜひこの技を応用してください。
災害時に赤ちゃんの命を守れるのは周りの大人です!

ひとくちに「赤ちゃんの防災」といっても、できるのは、物を備えることだけではありません。
保護者、保育者の皆さんは、自分の住む地域、自宅周辺で起こりうる災害について、ハザードマップを確認するなどしてリスクを確認しておく、家の中に落ちてくると危ないものなどがないかチェックするなどの安全対策を徹底するようにしてください。
また、妊娠中や産後の女性や乳幼児は、災害時に特別な支援が必要となります。普段からご近所同士で挨拶をする、地域の防災訓練や防災イベントに参加したりするなどして、地域に顔見知りを増やしておきましょう。
いざという時に「助けて!」といえる関係性を作っておくことも防災のひとつです。災害時に赤ちゃんの命を守ることができるのは、周りにいる大人たちだということを忘れないでください。