富山の伝統工芸品|国指定・県指定の11品目を分かりやすく解説

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「伝統工芸品」とは?

「伝統工芸品」とは、長い年月をかけて受け継がれてきた技術や技法を用いて作られる工芸品のことです。

都道府県ごとに指定制度があり、その数は全国で1,300品目を超えます。指定の基準やルールは統一されておらず、各自治体が独自の条件を設けて選定しています。

一方、似ている言葉である「伝統”的”工芸品」とは、昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣から正式に指定を受けた工芸品を指します。

同じような言葉でも、意味や認定の仕組みが異なることがわかります。

富山の伝統工芸品

富山県には、国(経済産業省)が指定する「伝統的工芸品」が6品目、そして富山県が独自に指定する「伝統工芸品」が5品目あります。

国の指定を受ける伝統的工芸品は、おおむね100年以上受け継がれてきた技術・技法や原材料を用いて製造されるものです。歴史や品質の高さが認められた工芸品だけが選ばれます。

一方、富山県指定の伝統工芸品は、製造規模が国の指定基準には届かないものの、地域で守られてきた価値ある工芸品を保護するために選定されています。

どちらも富山の文化や美意識を色濃く映し出し、長く愛され続けています。

【国指定】富山の伝統的工芸品

国(経済産業省)指定の、富山の伝統工芸品を6品目紹介します。

1.高岡銅器(たかおかどうき)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

高岡銅器は、高岡市周辺で作られる日本有数の銅器です。職人技が光る高岡銅器は、今や日本だけでなく世界中へと届けられています。

花器や仏具といった生活に身近なものから、寺院の梵鐘(ぼんしょう)や大規模な銅像まで多岐にわたる製品が生み出されています。

1611年に加賀藩主前田利長公が高岡に金屋町を築き、鋳物師を招いて技術を継承したことが始まりとされ、今もなお世界から高い評価を受け続けている伝統工芸品です。

2.井波彫刻(いなみちょうこく)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

井波彫刻は、南砺市井波地域で作られる木彫刻、木工品です。

1774年、本堂の焼失により再建することとなった際に、京都本願寺から招かれた彫刻師の前川三四郎が、地元大工に技を伝えたことが始まりといわれています。

クスノキやケヤキなどの国産材を使い、らんまや置物、衝立などに花鳥風月や人物、動物を精巧に表現しています。200本以上のノミや彫刻刀を使い両面から彫る「透かし深彫り」は、立体感と躍動感を生み出す高度な技法です。

3.高岡漆器(たかおかしっき)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

1609年、前田利長が高岡城築城とともに武具や家具、生活道具の製作を命じたことが始まりとされている伝統工芸品です。高岡漆器は、高岡市で作られる多彩な技法が魅力の漆器です。

削った貝を貼り付けて装飾する「青貝塗」、中国風の雰囲気を取り入れ、花や鳥の姿を描いた上に、貝殻や石、金箔などをあしらって仕上げる「勇助塗」、彫刻と漆塗りを組み合わせた「彫刻塗」の3つの技法があります。

4.庄川挽物木地(しょうがわひきものきじ)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

庄川挽物木地は、高岡市や砺波市などで作られる木工品の素材、製品です。

主にケヤキを使用しており、杢目の美しさをより引き出すため横木にして加工します。ケヤキの切り方にこだわった結果、杢目が横に走る独特の表情が現れます。

素朴で温かみがある見た目が人々から愛され、1978年(昭和53年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

5.越中和紙(えっちゅうわし)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

越中和紙は、五箇山和紙(ごかやまわし)・八尾和紙(やつおわし)・蛭谷和紙(びるだんわし)の3つの生産地で製作されている和紙の総称です。1984年に伝統的工芸品の指定を受ける際に「越中和紙」に統一されましたが、産地ではそれぞれの名称で親しまれています。

産地ごとに用途や質感が異なり、書画用、障子紙、工芸用など多彩な用途があります。奈良時代の文献にも越中産の紙が記されており、平安時代には租税として納められていました。

1000年以上続く紙づくりの伝統が、今も受け継がれています。

6.越中福岡の菅笠(えっちゅうふくおかのすげがさ)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

越中福岡の菅笠は、富山県高岡市や砺波市、小矢部市、南砺市で受け継がれる伝統工芸品です。

約400年の歴史をもち、雨よけや日よけとして日本各地の農作業を支えてきました。2017年には国の伝統的工芸品にも指定され、その価値が改めて評価されています。

北陸の厳しい寒さに耐えて育つ菅は全国でも品質が高く、丸みを帯びた形が特徴です。大きさは3cm単位で調整でき、カサスゲと呼ばれる菅草を使い一本ずつ丁寧に縫い上げられます。

【県指定】富山の伝統工芸品

県指定の、富山の伝統工芸品を5品目紹介します。

1.越中瀬戸焼(えっちゅうせとやき)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

越中瀬戸焼は、立山町新瀬戸地域で430年以上の歴史を持つ焼き物です。

原料には「白土」という粘土が使われます。鉄分が少なく粒子が細かい上に耐火度が高いため、薄くて軽い高品質の陶器を作れます。釉薬には植物灰など自然素材が用いられ、優しい色合いと風合いが魅力です。

現代ではデザインの良さと実用性の高さから、食器として使われることも多くなっています。古くから人々に長く愛され続けている伝統工芸品です。

2.高岡鉄器

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

高岡鉄器は慶長16年、加賀藩主・前田利長公が産業振興策として、鋳物師を現在の高岡市金屋町に集めたことから始まりました。

高い技術と美しい仕上げで知られ、明治時代にはパリ万国博覧会で展示されるなど、国内外で高い評価を得ています。

重厚感と実用性を兼ね備えた鉄器は、現代でも茶道具や調理器具として活躍しています。

3.高岡仏壇

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

高岡仏壇の起源は、慶長年間に指物師・大場庄左衛門が高岡に移住し、家具に漆塗装を施したことにあるとされています。

伝統的な高岡仏壇は、柱にクサマキ(青森ヒバ)、板にイチョウ材を使用しています。また、高岡銅器の彫金技術を活かした装飾金具や繊細な彫刻、内部全面に施された金箔が特徴です。

華やかな金仏壇は、格式と美を兼ね備えた伝統工芸品として知られています。

4.とやま土人形

とやま土人形は、型で成形した後に約800度で素焼きし、彩色を施している人形です。

縁起物や魔よけ、子どもの玩具として親しまれ、温かみのある表情が魅力です。近年では「おわら風の盆」「薬売り」「ちんどん」など、富山の文化や行事をモチーフにした作品も作られています。富山の伝統を守りながら、新しい郷土色を生み出している伝統工芸品です。

とやま土人形に絵付け体験ができる工房を以下の記事で紹介しています。

5.富山木象嵌(とやまもくぞうがん)

引用:https://www.pref.toyama.jp/130002/miryokukankou/bunka/geijutsu/kj00018425.html

富山木象嵌は、富山市で生まれた伝統的な木工芸です。

「象嵌(ぞうがん)」とは「かたちどり、はめこむこと」を意味し、異なる種類や色の木材を嵌め込むことで絵柄を浮かび上がらせます。明治期には、中島杢堂が関東で学んだ近代象嵌技術を地元に持ち帰り、富山木象嵌として発展しました。

精緻な職人技が魅力の工芸品で、贈答品や装飾品としても高く評価されています。

富山には歴史深い伝統工芸品がたくさん

富山県には、長い歴史と職人の技が息づく多彩な伝統工芸品が数多くあります。

国指定の高岡銅器や井波彫刻、高岡漆器などは、国内外で高い評価を受け、芸術性と実用性を兼ね備えています。

県指定の越中瀬戸焼や高岡鉄器、とやま土人形なども、地域の文化や暮らしに根差した魅力あふれる伝統工芸品です。

富山を訪れた際には伝統工芸品に触れ、奥深い歴史と美しさを感じてみてはいかがでしょうか。

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トイエバ編集部

トイエバ編集部

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