富山が誇る世界遺産「五箇山の合掌造り集落」について紹介します。五箇山の歴史や伝統、合掌造りとはどのようなものか、合掌造りの種類なども徹底解説。世界遺産に泊まれるおすすめの民宿も紹介します。五箇山の合掌造り集落に興味がある方は参考にしてみてください。
五箇山の歴史
五箇山は、小さな40の集落の総称で、富山県南西端に位置する自然溢れる地域です。1,500m級の山々に囲まれていて、冬は2、3mの積雪がある豪雪地帯としても知られています。庄川沿いにある40の集落の中でも、相倉合掌造り集落と菅沼合掌造り集落には、合掌造り家屋をはじめとした昔ながらの景観が今もなお残っています。
そんな日本の木造文化を象徴する合掌造りの景観や、代々受け継がれてきた伝統が高く評価された五箇山の相倉と菅沼集落は、1995年(平成7年)に岐阜県白川郷荻町とともに、ユネスコの世界遺産に登録されました。
五箇山の歴史は、約4千年前まで遡ります。縄文時代から人々の生活が始まり、当時は険しい地形や豪雪、交通路も少なかったことから”秘境”と呼ばれていました。
現在は、相倉集落を有する旧平村と菅沼集落を有する旧上平村を総じて「五箇山」と呼んでいます。五箇山の総面積は約189km²と小さめの規模ですが、田んぼや石垣が多く緑豊かな風景からは、古き良き日本の伝統を感じられます。
合掌造りとはどんな建物?
合掌造りは、五箇山と白川郷のみに見られる建築様式で、三角の屋根の形が「合掌」の両手を合わせた形に似ていることから名づけられたと言われています。
五箇山の合掌造りの特徴は、まず屋根の形状です。湿った重たい雪が降る五箇山でも耐えられるように、三角形で60度もの急勾配になっていて、屋根に積もった雪を落としやすくなっています。
また、合掌造りの屋根は通気性や断熱性、保温性に優れている植物の”かや”を素材にした、かやぶき屋根です。屋根裏の部材には、稲縄とネソと呼ばれる強靭なマンサクの若木の樹皮を使って組み立て、釘などの金物を使用していないのも特徴。柔軟な構造にすることで、雨風や雪の重みを受け流せるようになっています。
現在もある合掌造りは約100〜200年前の家屋が多く、古いもので400年前の家屋もあります。合掌造りは江戸時代中期に建てられたと考えられており、これまで幾度となく起きた豪雪や自然災害にも耐え抜いてきました。集落では今も人々が生活を営んでおり、「人が住まう世界遺産」とも呼ばれています。合掌造りは、昔の人々の生きる知恵が生んだ見事な建造物と言えるでしょう。
世界に誇る五箇山の合掌造り集落
歴史ある五箇山の合掌造りには、二つの有名な集落が存在しています。世界に誇る歴史的な合掌造り集落について紹介します。
相倉(あいのくら)合掌造り集落
田んぼや石垣など、自然豊かな景色がそのままの形で残されている「相倉合掌造り集落」。緑溢れるのどかな景観は、年中無休で、8:30〜17:00の時間帯に訪れることが可能です。集落には約100〜350年前の合掌造りが立ち並んでおり、現在も20棟の合掌造り家屋があります。
合掌造りの原型であるという原始合掌をはじめとして、茅葺きのお寺や様々な大きさの合掌造りなど、昔の人々の生活を想像できるような見どころが多くあるのが特徴です。駐車場付近にある高台から相倉合掌造り集落を眺めると、より五箇山の歴史を深く感じられることでしょう。
相倉合掌造り集落では、合掌造りを活かして様々な施設があり、イベントが実施されているのも魅力です。合掌造り家屋を利用した資料館では、建物の構造を細かく見学できるほか、当時の生活用具や江戸時代に行われていた産業の展示、五箇山民謡のビデオ映像を観ることができます。また、紙すき作業を体験できる家屋や、合掌造りに泊まれる民宿もあります。
年に数回行われる、季節に合わせたライトアップイベントもおすすめです。2024年の開催は終了しましたが、次回は2025年2月22日(土)・23日(日)に開催されます。ほかにも、2025年1月8日以降の毎週水曜日に、20時まで指定箇所の窓明かりを楽しめる「窓灯り鑑賞日」もあります。冬の雪と光に包まれた光景は、まるで別世界。日本の歴史を感じられる合掌造りに、幻想的なライトアップのコラボレーションは必見です。
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菅沼(すがぬま)合掌造り集落
相倉合掌造り集落から車で約15分離れたところにある「菅沼合掌造り集落」は、江戸時代末期から明治時代初期に建てられた合掌造りが立ち並んでいます。以前からの心なごむ里山の風景が残されているこの集落は、現在の合掌造り家屋は9棟の小さな集落です。
4月〜11月は8:00~17:00、12月〜3月は9:00〜16:00の時間帯で営業しており、休みは12月31日・1月1日のみです。駐車場の入場は16:00まで(冬季は15:30)のため、日没後から早朝の立寄りはできません。
菅沼合掌造り集落は小さいながらも相倉合掌造り集落と同じく、歴史や伝統を感じられる施設が多くあります。橋がない江戸時代に向こう岸に渡る際に使われていた「籠の渡し」をはじめとした、人々の生きる知恵を生かした生活様式200点が見られる資料館や、火縄銃を放つ模擬体験ができる資料館もあります。お食事処やお土産店、合掌造りのコテージもあり、当時の暮らしを経験できるのも魅力です。
菅沼合掌造り集落でも、50基の照明によるライトアップイベントが開催されています。幻想的な合掌造りを背景に五箇山の地元民謡が披露され、ここでしか見られないコラボレーションは迫力満点。一度は見る価値のある、日本の伝統を感じられる貴重なイベントです。来年の2025年は、1月25日(土)・26日(日)、2月1日(土)・2月2日(日)に開催されます。
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宿泊できる相倉合掌造り宿
おすすめの相倉合掌造り宿6つと、その魅力について紹介します。
民宿 勇助
相倉合掌造り集落最大級の合掌造りである、築150年の「勇助」。宿泊できる部屋数は3室、1日2〜4人の1組限定です。3階建ての勇助は、民宿のほかにも展示館として養蚕業の様子や、五箇山和紙で作ったカイコ、当時の生活用品などの展示も行っています。
勇助では、展示館を兼ねる民宿ならではの体験プランも魅力です。「五箇山民謡体験プラン」では五箇山の伝統民謡”こきりこ節”など、地元の方々の歌と踊りを間近で見られます。「囲炉裏端体験プラン」は、展示館の主人で写真家の池端滋さんから、合掌造りの特長や暮らしについて貴重なお話を聞けるプランです。囲炉裏ばたで薪を焚きながら聞くお話は、昔ながらの雰囲気をより感じられることでしょう。
民宿名 | 勇助 |
住所 | 富山県南砺市相倉591 |
公式サイト | https://yusuke-gokayama.com/ |
公式Instagram | https://www.instagram.com/yusuke_gokayama/?hl=ja |
問い合わせ先 | 0763-66-2555 |
合掌の宿 庄七
築200年の歴史がある「庄七」は、部屋数は4室、1日2組または4名まで宿泊できます。2階建ての合掌造り家屋で、宿泊者がゆったりとくつろげるように天井を高く、室内は広々とした空間に作り替えてあります。客室はすべて和室ですが、足の不自由な方も利用しやすいようにテーブル席が用意されているのも庄七の特徴です。
民宿での食事は、旬の山里の食材をふんだんに使用した郷土料理が堪能できます。女将さんが畑で育てた野菜を使ったお手製の漬物も人気です。民宿の隣には、お土産店「庄八」もあるので五箇山の特産品を購入できます。
民宿名 | 庄七 |
住所 | 富山県南砺市相倉421 |
公式サイト | https://www.syo-7.jp/ |
問い合わせ先 | 0763-66-2206 |
合掌民宿 なかや
相倉合掌造り集落の中でも最も古い「合掌民宿なかや」は、築350年の民宿。部屋数は3室、収容人数は6人です。合掌造りは、雨雪にさらされる屋根を維持するために数十年に一度葺替えをしていますが、合掌民宿なかやでは15年に一度葺き替えているのが特徴です。
地元出身の彫刻家が作ったテーブルや、マッサージチェアでゆったりできるのも合掌民宿なかやのポイント。囲炉裏と茶釜を囲んで食べる食事は、テーブル対応になっています。五箇山の新鮮な山菜や川魚を使った、彩豊かな料理はどれも絶品。家庭的な空間で、くつろぎの時間を楽しめる民宿です。
民宿名 | 合掌民宿なかや |
住所 | 富山県南砺市相倉231 |
公式サイト | http://www1.tst.ne.jp/snakaya/index.html |
問い合わせ先 | 0763-66-2457 |
民宿 与茂四郎(よもしろう)
相倉合掌造り集落にある「民宿 与茂四郎」。築200年の建物で、部屋数は3室、収容人数は6人の民宿です。相倉合掌造り集落の、ほぼ中心に位置しています。与茂四郎では、囲炉裏の周りを座布団で囲みながら、地元の海や山で採れた新鮮な食材を堪能できます。岩魚は、炭火でじっくり焼くことにより旨みが凝縮されています。
絶品料理を味わいつつ、ご主人から五箇山にまつわるお話を聞けるのも、与茂四郎の魅力です。他の宿泊客とともに、ご主人による五箇山の歴史についてのお話や地元の民族楽器”こきりこ”を使ったこきりこ節の演奏などを楽しめます。愛情が伝わる温かいおもてなしに、身も心もホッとする民宿です。
民宿名 | 民宿 与茂四郎 |
住所 | 富山県南砺市相倉395 |
公式サイト | http://yomosirou.com/ |
問い合わせ先 | 0763-66-2377 |
長ヨ門(ちょうよもん)
天狗の足跡岩の近くにある民宿「長ヨ門」は、部屋数は3室、収容人数は6人の民宿です。名前の由来は、屋号である「長右衛門(ちょうえもん)」を早口で何度も呼ぶうちに「ちょよもん」と聞こえたことがきっかけなのだとか。
料理は、囲炉裏で焼いたイワナや地元で採れたお刺身、山菜など富山の自然を感じられるものばかり。五箇山名物”五箇山豆腐”も味わえます。気さくな女将さんのおもてなしも、長ヨ門の魅力です。
民宿名 | 長ヨ門 |
住所 | 南砺市相倉418 |
公式サイト | https://gokayama-info.jp/archives/505 |
問い合わせ先 | 0763-66-2755 |
五ヨ門(ごよもん)
相倉合掌造り集落のほぼ中央に位置する「五ヨ門」は、江戸時代に建てられた、部屋数は3室、収容人数は6人の民宿です。玄関には藁で編んだ長靴や草鞋が飾られており、古くからの伝統を感じます。
五ヨ門では、囲炉裏で炭火焼きにしたイワナや山菜のほか、五箇山豆腐、女将さん自家製の野菜を使ったお料理を味わえます。お腹いっぱいになった後は、女将さんによる、五箇山地方で伝わる伝統楽器”ささら”を使ったこきりこ節の唄を聴けるのも五ヨ門の魅力です。演奏の後は宿泊者同士で貴重なささら体験もでき、民宿ならではの楽しい思い出を作れます。
民宿名 | 五ヨ門 |
住所 | 富山県南砺市相倉438 |
公式サイト | http://www.goyomon.burari.biz/ |
問い合わせ先 | 0763-66-2154 |
宿泊できる菅沼合掌造り宿
菅沼合掌造りで宿泊できる宿と、魅力について紹介します。
五箇山合掌の里
「五箇山合掌の里」は、菅沼合掌造り集落に隣接した宿泊施設です。
個人宿泊できるコテージ「松与門家」「荒井家」「新田家」では、自炊が可能で、一人旅やファミリーなどに人気です。コテージには、炊飯ジャーや電子レンジの電化製品や、フライパン・鍋のキッチン用品など食事ができる一式が完備。予約制のテラスではバーベキューもできます。非日常的な空間で、のんびりとした時間を満喫できることでしょう。
250名までの団体宿泊が可能な「山下家」「水上家」「善五郎家」「羽馬家」は、修学旅行や児童クラブで多く利用されています。
宿泊者限定で、ガイドさんとの散策ツアーや民謡鑑賞、ブナ原生林トレッキングなど、さまざまな体験ができるのも五箇山合掌の里ならではです。宿泊施設の周辺には、五箇山の自然や暮らし、方言、民謡などをわかりやすく学べる「五箇山生活館」、合掌造り家屋の原型を見られる「合掌体験館」もあります。
民宿名 | 五箇山合掌の里 |
住所 | 富山県南砺市菅沼855 |
公式サイト | https://www.gokayama.jp/ |
問い合わせ先 | 0763-67-3300 |
五箇山の合掌造りで歴史を体感しよう
今回は、富山が誇る五箇山の合掌造りについて紹介しました。
地元の方々の努力で、昔ながらの山里の暮らしを今に伝える五箇山の合掌造り集落は、地方特有の風景が残る貴重な文化遺産です。五箇山では、伝統や歴史を体感しながら、和やかな景色や自然に心も癒されます。日帰りでも五箇山を知ることはできますが、ぜひ宿に泊まって、五箇山合掌造り集落の長い歴史をより一層満喫してみてください。