雷はなぜ起こる?

雷は、主に「積乱雲」という大きな雲の中で起こる自然現象です。積乱雲は「雷雲」や「入道雲」とも言われ、高さは1万5000mにまで達することもあります。
雲の中では、氷の粒が激しくぶつかり合って、摩擦によって静電気が生まれ電気を帯びるようになります。この電気が雲の中でたまっていくと、雲の上のほうには正(+)の電気、下のほうには負(−)の電気が分かれて集まっていきます。
すると、雲の下にある地面には、負(−)の電気に引き寄せられるようにして正(+)の電気が集まります。雲の中でとどめておける電機の量が限界になると、空気のバリア(絶縁)が壊れ電気が一気に地上に流れます。これが「雷」です。
このとき、電気が空気を通ることで強いイナヅマが走り、空気が一気に熱せられて膨張するため、大きな音(雷鳴)も発生します。雷は、雲の中や雲と地面の間で起こる放電現象です。
雷は日常でも珍しくない現象のため、日頃からしっかりと備えておくことが重要です。
雷が起こる前兆
雷が発生する前には、いくつかの前兆が現れます。
主にみられる前兆としては、空が急に暗くなる、冷たい風や突風が吹き始める、突然の雨や霰(あられ)、雹(ひょう)が降るなどがあります。これは、雷を引き起こす積乱雲が発達しているサインです。
また、雷の音が聞こえた際は、すでに雷雲の活動範囲に入っている可能性があるため、注意が必要です。稲光を見てから10秒後に音が聞こえた場合、音は1秒間に約340m進むことから雷は約3.4km先で起こったことになります。しかし、雷雲自体は数十kmの大きさがあるため、すでにその下にいる可能性があります。
また、雷の前兆として、釣り竿やゴルフクラブなど金属に触れたときにビリビリと静電気のような感覚が生じる、AMラジオから雑音が入るなど、気象以外の前兆が現れることもあります。これらのサインを見逃さず、備えることが、身を守るために重要です。
雷の発生時にいると危険な場所

雷が発生した際は、安全な場所にいることが重要です。雷の発生時にいると危険な場所について紹介します。
広場や木の近く
雷が発生しているとき、広場や木の近くにいることは非常に危険です。ゴルフ場やキャンプ場、スポーツグラウンド、海岸などの開けた場所は、雷が人に直撃しやすくなります。特に、釣り竿や金属バットなどを高く掲げていると、雷を引き寄せてしまう可能性があるため避けましょう。
また、雷は、周囲の物よりも背の高い樹木に落ちやすいため、野外イベントなどで木の近くにいる場合、できるだけ早くその場所を離れることがポイントです。雷は木の幹に落ちると、幹の外側を伝わる「表皮効果」によって、周囲にいる人にも危険をもたらします。そのため、木の枝から少なくとも2m以上離れましょう。
しかし、大きな木や高い構造物から2m以上離れていても安心してはいけません。雷が地面に流れると、その周辺の大地の電位が上昇し、地面に触れている両足の間に電位差が生じて感電する恐れがあります。
家の軒先(のきさき)
雷が鳴っていると、つい家の軒先で雨宿りをしたくなりますが、じつは非常に危険です。
雷が家に落ちると、雷電流は建物の外側を流れる性質(表皮効果)があります。そのため、軒先にいると、そこに強い電流が流れ込む可能性が高く、感電する危険性が増します。雷雨の際は軒先での雨宿りを避け、必ず建物の中に避難するようにしましょう。
安全を確保するためには、屋内にいることが最も重要です。
家電の近く
雷が発生しているとき、屋内にいても油断はできません。
雷が建物に落ちると、雷電流は柱を伝って大地に流れます。そのため、家の柱の近くは非常に危険です。また、雷電流はテレビや電話などの配線ケーブルを通じて家電製品にも影響を与える場合があります。家電製品には絶縁材料が使われていることが多いですが、雷電流は非常に強力であるため、絶縁材料を通り抜けて感電する可能性があります。
そのため、雷が鳴っている間は家電製品から離れ、触らないようにしましょう。安全を確保するためには、雷の最中に家電を使わないことがポイントです。
雷が鳴ったときに取るべき行動

雷が鳴ったときはどのような行動を取れば良いのでしょうか。雷が鳴ったときに取るべき行動、備えについて紹介します。
雷が鳴っている場所を調べる
雷が発生した際には、「ナウキャスト」などの雷監視システムで雷の位置をチェックして備えることをおすすめします。
雷監視システムとは、雷により発生する電波を受信し、位置や発生時刻などの情報をまとめているツールです。過去3時間の雷の動向を動画でチェックできる機能があるため、雷雲がどの方向から進んでいるのかを把握して備えられます。また、雷が一定のスピードで一定方向に進んでいる場合は、雷が抜けるまでの大まかな時間を予測できます。雷への備えには欠かせないツールといえるでしょう。
雷監視システム「ナウキャスト」は、気象庁の公式サイトからチェックできます。
雷監視システム/国土交通省気象庁
近くにある建物や車の中に避難する
雷が鳴ったときは、できるだけ早く近くの建物や車の中に避難して備えることがポイントです。
避難先として最も安全なのは、鉄筋コンクリートなどのしっかりした建物です。建物に雷が落ちた際も、電気は壁などを伝って地面に流れるため基本的に安全といえるでしょう。また、木造の建物でも、多くの場合は安全とされています。外出中に雷に遭遇したらすぐに最寄りの建物に入って備えることをおすすめします。
また、車やバス、電車、飛行機などの乗り物の中も安全な避難場所といえます。ただし、避難する際は必ず窓を閉めて、車内の金属部分に触れないようにすることが重要です。金属部分を通じて感電する可能性もあるためです。
周りに危険なものがないか確認してしゃがむ
周囲に避難できる建物や車などがない場合は、その場で安全を確保するために「雷しゃがみ」という姿勢を取りましょう。この姿勢は、雷による感電のリスクをできる限り減らすための方法です。

まず膝を曲げてしゃがみ、上半身をできるだけ前にかがめます。両足のかかとをくっつけて、つま先立ちをしましょう。このとき、雷鳴の大きな音から鼓膜を守るために両手で耳をふさぎます。
もしも近くに電線がある場合は、真下に入って備えることをおすすめします。電線は避雷針のような働きをするため、落雷のリスクを下げられることがあるためです。しかし、電線が切れている場合や異常がある場合はかえって危険なため、真下に入るのはやめておきましょう。
雷から身を守るためには、まず安全な場所へ避難して備えることが最優先です。しかし、近くに避難できる場所がない場合に備えて「雷しゃがみ」を覚えておくと、いざというときに命を守る行動につながるでしょう。
コンセントを抜く
雷が鳴り始めたら、家電製品のコンセントを抜いて備えることも重要です。
雷が発生した際は「雷サージ」という落雷によって電柱や電線に一時的に強い電流や電圧が発生する可能性があります。雷サージの影響により電気機器が故障することもあるため、注意しなければなりません。
雷が近づいてきたと感じたら、テレビやパソコン、電子レンジなどのコンセントを早めに抜いて備えましょう。
豪雨に備える
雷が鳴り始めたら、激しい豪雨への備えも忘れないようにしましょう。
雷を伴う豪雨は短時間で止むこともありますが、線状降水帯のように同じ場所に長時間強い雨を降らせる現象も珍しくありません。特に、浸水や洪水、土砂災害のリスクがある地域では、雷が聞こえた段階で安全な場所へ避難して備えるのが望ましいでしょう。
しかし、雷や豪雨の中を無理に移動することはかえって危険な場合もあります。そのようなときは、自宅など建物の2階以上の安全な場所へ移動して備えることがポイントです。
雷による豪雨の場合は、家の浸水対策も重要です。浸水対策については以下の記事でくわしく紹介しているため、気になる方はチェックしてみてください。
雷について理解して、もしもの事態に備えよう
今回は、雷による備えや危険な場所、雷が起きた際に取るべき行動について紹介しました。
雷はとても身近な自然現象ですが、命に関わる危険もあります。雷が鳴り始めたら、頑丈な建物や車の中に避難し、木のそばや広い場所には近づかないようにしましょう。コンセントを抜くなど、家の中にいても気を抜かないことが重要です。
雷についてよく理解して、もしもの事態に備えましょう。