猫は寂しさを感じる?

猫は寂しいと感じることがあるのか、疑問に思う飼い主もいるかもしれません。
仕事で家を空けているときや、長期の旅行で家を留守にするとき「猫は寂しがっていないかな」「ひとりで大丈夫かな」と、つい気になる方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、猫も寂しさを感じます。猫は引っ越しや環境の変化などで、ひとりになると不安を感じやすく、その不安から「寂しい」と受け取れる行動を見せることもあります。ただし、人間のように「寂しいな」と自覚しているわけではなく、不安があらわれるひとつの形として考えられています。
では、具体的に猫はどんなタイミングで、寂しいと感じるのでしょうか。くわしく見ていきましょう。
猫が寂しさを感じるタイミング

猫は環境や人の行動にとても敏感な動物です。そのため、いつもの生活に少しでも変化があると、不安や寂しさを感じやすくなります。
日常の中で、猫が特に寂しさを感じやすいタイミングを紹介します。
飼い主が出かけるとき・仕事で長時間不在のとき
普段はのんびり昼寝をしている猫が、あなたが外出の準備を始めると急にそわそわし始めたり、玄関までついてきたりすることはありませんか?
普段はいつもそばにいる飼い主がいなくなると、猫は「帰ってくるかな」といった不安から寂しさを感じることがあります。
飼い主の長時間の留守や急な外出は、猫にとって日常の変化のひとつです。その不安から気持ちがざわつき、落ち着かない行動が見られることもあります。
引っ越しや模様替えなど、環境が変わったとき
猫は、自分のテリトリーに強いこだわりを持つ動物です。家具の配置が変わったり、見知らぬ土地に引っ越したりすると、匂いや景色が変わり、安心できる居場所が減ってしまいます。
いつも座っている窓辺やソファに登らず、隠れた場所でじっとしている姿は、まるで「ここはまだ落ち着かない」と言っているかのようです。
このような環境の変化によって不安が強まり、飼い主やいつもそばにいる存在に対しても「そばにいてほしい」という気持ち、つまり寂しさを感じることがあります。
同居猫や家族がいなくなったとき
一緒に暮らしている家族や同居している猫は、猫にとって日常の安心感の一部です。普段一緒に遊んだり、寄り添ったりすることで、心の安定を保っています。近くて親しい存在がいなくなると、猫は支えを失った感覚から不安が増し「寂しい」と感じることがあります。
特に、これまで当たり前のように一緒にいた近い相手が急にいなくなると、普段の生活の中で飼い主や家族のそばにいたい気持ちが強くなるでしょう。そのため、寂しさが行動にも表れやすくなります。
寂しさを感じた猫が見せるサイン5つ

猫は寂しさや不安を感じると、その気持ちを行動で表すことがあります。寂しいと感じた猫が見せる5つのサインを紹介します。
1.鳴く回数が増える
猫が、鳴く回数や声のトーンが変わる理由はさまざまです。空腹や要求、体調の変化などに加え、飼い主にかまってほしい、寂しいと感じている場合もあります。
特に、飼い主が外出の準備をしているときや、別の部屋へ行こうとした際に「ニャーオ」「アオーン」と低めの声で鳴く場合は、不安や甘えのサインであることも少なくありません。猫によっては、特定の時間帯に鳴くことで、飼い主の注目を引こうとするケースもあります。
ただし、鳴くこと自体が必ずしも寂しさを意味するわけではないため、ほかの行動や生活リズムの変化とあわせて様子を見守ることが大切です。
2.執拗にスリスリする
猫がいつもより頻繁にスリスリしてくるのは、飼い主に甘えたい・安心したいという気持ちのあらわれであり、寂しさを感じているサインのひとつといえます。長い時間ひとりで過ごしたあとや、飼い主が帰宅した直後に、強く体をこすりつけてくる場合は、寂しさや不安を解消しようとしている可能性もあるでしょう。
しかし、スリスリにはほかの意味もあります。自分のニオイをつけて縄張りを示すマーキングや、外のニオイを上書きして安心する行動、仲間へのあいさつなども理由のひとつです。
そのため、「スリスリ=寂しい」とは言い切れませんが、いつもより頻度が高かったり、帰宅直後に強くこすりつけてきたりする場合は、猫があなたのぬくもりを求めているサインかもしれません。
3.飼い主の行動のじゃまをする
猫は寂しい気持ちが強くなると、飼い主の行動をわざとじゃますることがあります。パソコンやスマートフォン、ゲームに夢中になっているときに猫が間に入ってじゃましてくる、といった経験をした方もいるのではないでしょうか。
これは、飼い主に自分の気持ちを伝えたいのに、うまく伝わらないもどかしさのあらわれです。「こうすれば飼い主の気を引ける」と学習している猫もおり、いたずらや妨害行動に出ることがあります。
4.飼い主のあとをついて回る
猫は寂しさを感じると、飼い主のあとをずっとついて回ることがあります。部屋を移動すると、後ろからぴったりとついてきたり、足元に寄り添うように歩いたりすることがあります。
こうした行動は「離れたくない」「そばにいると安心できる」といった気持ちのあらわれの場合があります。
ただし、ついて回る理由はそれだけではありません。飼い主の動きや服の揺れに反応して狩猟本能が刺激されたり、別の部屋へ行く飼い主を、好奇心から追いかけたりすることもあります。
また、「遊んでもらえるかも」「おやつがもらえるかも」と期待しているケースもあるでしょう。理由はさまざまですが、いつも以上にそばを離れたがらない様子が見られるときは、猫が少し寂しさを感じているサインかもしれません。
5.いつもより寝てばかりいる
猫は寂しさや不安を感じると、眠ることで気持ちを落ち着かせようとするケースがあります。夢の中で、飼い主と遊んでいるかのような行動も見られるかもしれません。
ただし、眠りすぎや食欲の低下が続く場合は、単なる寂しさだけでなく、病気や体調不良のサインの可能性もあるため注意が必要です。
猫の寂しさを和らげる方法

猫が寂しさを感じたときは、ちょっとした工夫で安心感を与えられます。日常生活で実践しやすい、猫の寂しさを和らげる方法を紹介します。
毎日短時間でもスキンシップをとる
猫は短い時間であっても飼い主にかまってもらうことで、愛情を感じることができます。
たとえば、仕事から帰宅したときに軽く撫でてあげたり、膝の上で数分間一緒に座ったりするだけでも安心感が増します。ポイントは、無理に長時間構おうとせず、猫が落ち着いているタイミングでそっと触れることです。
こうしたスキンシップを習慣にすると、猫は「飼い主は自分を気にかけてくれている」と感じ、日中の不安も和らぐでしょう。
留守中も安心できるように環境を整える
猫の寂しい気持ちを和らげるためには、飼い主の不在中も、安心して過ごせる環境を作ることが大切です。
たとえば、部屋の中にお気に入りの毛布やクッション、遊び慣れたおもちゃを置いてあげると、安心できる場所として活用できます。また、窓辺に日向が当たる場所やキャットタワーの高い位置など、落ち着ける居場所を複数用意すると、飼い主がいなくても心を休めやすくなるでしょう。
猫が落ち着けるお気に入りの空間を作ることで、不安や寂しさを軽減できます。
猫の要求に全て応えない
猫の気持ちに寄り添うことは大切ですが、すべての要求に応えてしまうと、依存が強くなり不安が増すこともあります。猫が構ってほしいタイミングで必ず応じるのではなく、飼い主の都合を優先して少し距離を置くことも必要です。
この習慣を少しずつ身につけさせることで、猫は「飼い主はそばにいるけど、いつも構ってくれるわけではない」と理解し、自立心や安心感を育めます。
しかし「忙しいから」と全ての要求や甘えを無視すると猫のストレスになるため、適度に声をかけたり遊んだりして、バランスをとることがポイントです。
長引く場合は病気やストレスの可能性も

猫の寂しさを和らげる工夫をしても、行動の変化が長く続く場合は注意が必要です。「ただ寂しいだけ」と思って放置せず、元気・食欲・排泄などの様子に続けて異変が見られたら、動物病院への受診を検討しましょう。
場合によっては、猫が強い不安を感じる「分離不安症」の可能性もあります。分離不安症とは、飼い主がいない時間に極端な不安やストレスを感じ、過剰に鳴いたり、家具を壊したり、排泄に問題が出たりする症状が現れることがあります。これは単なる甘えやわがままではなく、心身に負担がかかっている状態です。
そのため、次のような変化が見られた場合は、早めに受診して専門家のアドバイスを受けることが大切です。
- 食欲が急に落ちた
- 過剰な毛づくろい(グルーミング)をする
- トイレの失敗が増えた
- 下痢や嘔吐
- 過剰に鳴き続ける、落ち着かない
- 以前より遊びやスキンシップに興味を示さない
これらのサインは、単なる寂しさや一時的なストレス以上の可能性を示しています。飼い主が早めに気づいて対処することで、猫の心と体の健康を守れます。
猫の「寂しい」を見逃さず、安心を守ろう
猫は普段マイペースに見えても、飼い主の不在や環境の変化で不安や寂しさを感じることがあります。鳴いたり、甘えてきたり、後をついて回ったりする行動は、不安や寂しい気持ちのあらわれです。
長時間そばにいられなくても、毎日の短いスキンシップや安心できる居場所の工夫、そして時には要求に応えすぎないことなど、ちょっとした行動で猫の不安を軽減できます。このような積み重ねが、猫に「自分は大切にされている」と感じさせ、安心感にもつながります。
猫の「寂しい」サインを見逃さず、猫が安心して過ごせる毎日を守ってあげましょう。