住宅購入といえば、新築を購入したいと考える方が多いかもしれません。ただ、昨今の物価高や中古住宅流通政策による市場活性化などにより、近年は、中古住宅にも注目が集まってきています。但し、築年数が古い物件は、購入金額の妥当性や欠陥の心配、購入後のリフォーム費用の増加など、不安に思う人が多いのも事実だと思います。そこで、中古住宅のメリットとデメリット、実際に購入する時の注意点などを整理します。
中古住宅の市場トレンド
不動産流通経営協会の推計データによると、既存住宅流通量(中古住宅)は2019年において60万件を超える水準で、住宅流通量全体に占める割合は4割となり、年々上昇していることが分かります。また、富山県の既存住宅流通比率は、東京に比べるとまだ低いものの、北陸3県の中では最も高く3割を超える水準となっています。
中古住宅の流通量が増加している背景には、大きく3つのトレンドがあります。
国の既存住宅市場の活性化の取り組み
国内の人口減少がメガトレンドの中、2018年時点で住宅ストック数は総世帯数に対して約16%多い状況であり、住宅の供給量的には既に十分な水準にあります。一方で、子育て世帯と高齢者世帯の居住ニーズのミスマッチが起こっています。
具体的には、子育て世帯では「住宅の広さや間取り」に対する不満が多い一方で、高齢者世帯では「住宅が広すぎて管理が大変」という声が増加しています。高齢単身・夫婦の持家世帯で100㎡以上の住宅に住んでいる割合約58%である一方で、4人以上の持家世帯が100㎡未満の住宅に住んでいる割合は約29%となっており、居住ニーズのミスマッチが存在します。
こうした課題を背景に、国・行政は、建物状況調査(インスペクション)利用の促進や安心R住宅(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)など、品質が良く安心して購入できる既存住宅活性化の仕組みづくりを強化しています。
ライフスタイルの多様化
従来は、「マイホームは一生の買い物」という意識が強く、地域によっては「家を建てて一人前」という風潮もありました。一方で、上記の通り、各世代間では住宅に関する未充足のニーズが発生しています。
住宅にライフスタイルを合わせるのではなく、ライフスタイルに合った住宅を生活シーンに合わせて選択していくという価値観が今後も大きなトレンドになってくるかもしれません。また、空き家が社会問題として取り沙汰される昨今、こうした非稼働資産を有効活用する若者も増えてきました。DIYを楽しみながら移住するだけでなく、マルチハビテーション(多拠点生活)市場も生まれつつあります。家族構成や家計の経済状況に応じて、臨機応変に住宅を選択し、充実した暮らしを過ごす価値観が浸透しつつあると言えます。
リフォームからリノベーションへ、提供価値が向上
コロナ禍において、住宅での充実した生活の価値観が再認識され、リフォーム市場は堅調に推移しました。直近の2022年においては、資材価格高騰の影響を受けて、新築住宅は厳しい状況でしたが、リフォーム市場は比較的堅調な推移でした。その要因としては、補助金の後押しがありました。こどもみらい住宅支援事業や住宅エコリフォーム推進事業や省エネリフォーム補助金事業など、多くの補助金が提供されました。
リノベーション市場も拡大傾向にあります。但し、地方都市の場合は、坪単価で比較した時に、リノベーションよりも新築の方が魅力的となることも多いです。したがって、地方都市の場合は価格だけではない提供価値を創造しないと、リノベーション市場が拡大しない可能性があります。富山県・富山市内にも、リノベーションが得意な工務店やハウスビルダー、ハウスメーカーのリノベーションサービスがあります。
中古住宅のメリットとデメリット
中古住宅の主なメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
費用面 | 新築と比較して価格が割安 | 建物や住宅設備の修繕費用がかかる住宅ローン控除が新築と比べて少ない |
手続き面 | 購入前に実物件を内覧し確認が可能 | 住宅ローン審査が厳しい仲介手数料がかかる場合がある |
機能面 | 新築より広い土地・建物のケースも多い自分の思い通りにリノベーションができる | 耐震性への懸念建物の構造上や土地の状況により思い通りのリフォームができないことがある |
中古住宅の最大のメリットは、新築と比べて購入価格が割安なことです。新築住宅の場合は、予算を決めても居住エリアや居住面積の広さなど条件を満たせない物件も数多くあることが多いと思います。今後、高齢化の影響で、後継ぎのいない戸建を手放したいという高齢者層も増加すると予想され、新築購入では諦めていた条件の中古物件が手に入る可能性もあります。
また、購入前に実際の物件を内覧し確認することができる点も、中古住宅の大きなメリットです。建物の外観や間取りなど、自分自身の目で見て確認し評価することができます。中古マンションであれば、管理状況や住人の年齢層なども事前確認ができます。
新築とは異なり、自分の思い通りにリノベーションができることも、中古住宅の醍醐味になります。中古住宅での戸建てとマンションでは異なりますが、大きく以下のようなリノベーションを行う前提で物件を見極めるポイントがあります。
中古戸建の選び方のポイント
- 築年数
- 1981年6月に耐震基準の大きな見直しがありました。それ以降の建物は耐震性能が大きく変わっており、それ以前の物件は耐震チェックが必要になります。
- 2000年以降の建物は、さらに厳しくなった最新の耐震基準を満たしているので、基礎工事や耐震工事などの手間が省けてリノベーションがしやすい物件
- 建物の構造と工法
- 戸建住宅の主な工法は4つあります。特に、木造軸組工法で建てられている物件は、間取りの変更がしやすい工法です。
工法 | 特徴 |
木造軸組(在来)工法 | 柱と梁を組み合わせて建物を支える構造・工法柱や梁に筋かいを入れ 金物で補強することで水平力に抵抗する構造で、日本の伝統的な工法 |
2×4工法 | 2インチ×4インチの部材と合板で床、壁、天井の面をつくり組み合わせる 工法外力は壁などの面で受ける構造 |
木質系プレハブ工法 | あらかじめ工場生産された木質系の部材やパネルを現場に運び組み立てる工法 |
鉄骨系プレハブ工法 | 軽量鉄骨を折り曲げたフレームを軸組に用い パネルを現場に運び組み立てる工法 |
鉄筋コンクリート造(RC)※ | 鉄筋を配筋し型枠を組み、コンクリートを流して構造体をつくる 工法ラーメン構造となっており、一般的なマンションや オフィスビルなどで頻繁に採用される構造 |
- 権利や適法性
- 対象物件の土地の権利関係を確認することも大切です。
- 抵当権の設定、土地の権利がどのような状態にあるのかをチェックします。専門知識が必要な場合があるため、場合によっては司法書士に相談することも必要です。
- 敷地の境界についても確認することが重要です。境界が曖昧な場合は、近隣住人とのトラブルになる可能性もあります。
- また、違法建築や建築基準法を無視した増築が行われている中古物件は、住宅ローンが使えない場合があり、更に入居後の増改築もできないこともあります。中古物件に検査済証があるかを確認することが大切です。
- 内覧時の確認ポイント
- 雨の日に内覧をすると、水はけ・雨音・雨漏りなど、晴れの日では分からない改善点が把握できます。
- 建物外部の現状把握をしっかりすることが大切です。
- 基礎部分の状況確認
- 外壁のひび割れ・クラック等の確認
- 屋根の形状(水はけ、防水性など)の確認
- 建物内部の現状把握も重要です。
- 水廻りと配管の確認(配管の場所によってはリフォームの有無にも影響します)
- 電気容量の確認(築年数が古い物件の場合は、電気容量が小さいことも多いです)
- 見えない部分の確認(床下・屋根裏・シロアリ被害など、老朽化の進行状況を見ます)
中古住宅購入時に利用できる減税・税制優遇制度・補助金
中古住宅購入時に利用できる3つの制度を整理します。
中古住宅購入時の税制優遇制度
- 住宅ローン減税(控除)
- 住宅ローン減税は、年末の住宅ローン残高の0.7%が、所得税などから10年間減税(控除)される制度です。
- ローン控除額 = 年末借入金残高 × 控除率(0.7%)で計算されます。
住宅の種類 | 控除対象借入限度額 | 控除期間 | 所得税の最大控除額 |
中古住宅 ※長期優良住宅・低炭素住宅 ※ZEH水準省エネ住宅 ※省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 10年間 | 210万円 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 10年間 | 140万円 |
- 中古住宅の購入で住宅ローンを受けるには、以下の要件を満たすことが必要です。
- 令和7年(2025年)12月31日までに入居すること。
- 自己の専用住宅で、床面積が原則として50㎡以上であること。
- 取得の日から6カ月以内に自己の居住の用に供すること。
- 居住用と居住用以外の部分があるときは、床面積の2分の1以上が居住用であること。
- 上記の要件を満たしたうえで、以下のいずれかの要件に該当するものであること。
イ.昭和57年以降に建築された住宅であること。
ロ.築後年数にかかわらず新耐震基準に適合することが証明されたものであること。または、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入しているもの(その家屋の取得の日前2年以内に保険契約の締結をしたものに限る)。
- 控除を受ける年の合計所得が2000万円以下であること。
- 制度の適用を受けるには、初年度に確定申告が必要になります。翌年以降は会社員であれば年末調整で対応することができます。
住宅取得等資金贈与の非課税特例
- 住宅取得等資金贈与の非課税特例は、住宅取得のための贈与であれば一定額まで受贈者に贈与税を課さない制度です(令和5年(2023年)12月31日までの時限措置)
贈与時期 | 非課税限度額 | |
一般の住宅 | 質の高い住宅 | |
2022/01/01~2023/12/31 | 500万円 | 1000万円 |
- 中古住宅における「質の高い住宅」とは、以下のいずれかの基準に適合する住宅を指します。
- 断熱等性能等級4、または一次エネルギー消費量等級4〜5の基準に適合していること
- 耐震等級2〜3、またはその他の免震建築物の基準に適合していること
- 高齢者等配慮対策等級3〜5
- 非課税特例の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までに、住所地の税務署に贈与税の申告書を提出する必要があります。
中古住宅購入時の減税制度
登録免許税の軽減制度
中古住宅では、一定の要件を満たしていれば「建物」の登録免許税が軽減されます。登録免許税とは、登記簿謄本に権利の設定などをする際に法務局で支払う税金です。
- 登録免許税の軽減を受けるには、購入した建物が、以下の要件を満たしている必要があります。
- 時限措置:令和 6 年(2024 年)3 月 31 日までに取得されたもの
- 自己の専用住宅で、床面積が 50 ㎡以上であること(マンションなどの区分所有のものについては、自己の居住用部分の床面積が 50 ㎡以上であること)
上記の要件を満たしたうえで、以下のいずれかの要件に該当するものであること
イ. 昭和 57 年以降に建築された住宅であること
ロ. 築後年数にかかわらず新耐震基準に適合することが証明されたものであること。または、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入しているもの
(その家屋の取得の日前 2 年以内に保険契約の締結をしたものに限る。
昭和 57 年より前に建築された住宅は、「新耐震基準の適合証明」や「既存住宅売買瑕疵担保責任保険の加入」があれば、軽減税率が適用されます。
適合証明書は、指定の確認検査機関や建築士事務所に所属する建築士などに依頼すれば発行でき、費用は大よそ 5〜10 万円となります。
物件ごとの税率は以下の通りです。
- 一般の住宅(自己居住用に購入、実際に住んでいる住宅):税率 2% → 0.3%
- 長期優良住宅:税率 2% → 0.1%〜0.2%
不動産取得税の軽減制度
- 不動産取得税とは、土地や建物といった不動産を取得した際に支払う都道府県税です。
- 中古住宅を購入した場合、土地や建物を取得した旨を、定めれられた日(※各自治体によって期限は異なる)までに都道府県税事務所に申告します。
- 申告から 6 カ月〜1 年後をめどに納税通知書が届くので、その分を納付します。
- 富山県の場合、以下の不動産取得税のホームページで確認できます 。
https://www.pref.toyama.jp/1107/kurashi/seikatsu/zeikin/kenzei/m01-00/m01-09.html
中古住宅向けの自治体の補助金
中古住宅を購入する際、自治体によっては補助金を出しています。詳しくは富山県や富山市のホームページをご確認ください。
https://www.pref.toyama.jp/1507/kurashi/seikatsu/sumai/kj00011829.html