城端曳山祭(じょうはなひきやままつり)とは

城端曳山祭とは、富山県南砺市城端地域で毎年5月5日に開催されている城端神明宮の春季祭礼です。昔ながらの伝統を誇る城端曳山祭は、国の重要無形民俗文化財に指定されているほか、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。繊細な彫刻と鮮やかな塗装が施された6台の豪華な曳山が、庵屋台とともに街を練り歩く昔ながらのお祭りです。
城端曳山祭は、獅子舞・剣鉾(けんぼこ)・傘鉾(かさぼこ)が神輿を先導し、城端別院善徳寺前で曳山・庵屋台が合流することから曳山巡行が始まります。庵屋台では、笛や三味線の音色にのせて城端独特の「庵唄」が奏でられ、日本の伝統を感じられる演出が魅力です。京都祇園の一力茶屋(いちりきちゃや)などを模した精巧な造りの庵屋台が、曳山を先導する様子は圧巻もの。城端曳山祭でしか見られない格式高い伝統美を感じさせます。
お祭りでは「庵唄所望(いおりうたしょもう)」と呼ばれる風習もあり、祝儀を納めることで自宅前で庵唄を聴くことができます。6ヶ町の曳山と庵屋台が順番に所望の家に横付けになり、各町が選んだ歌詞を記した短冊を渡します。そして、庵屋台の中に入った囃子方や唄方で構成される「若連中」が美しい庵唄を披露します。
城端曳山祭と、「越中の小京都」とも呼ばれている城端エリアの街並みが相まって、毎年訪れる人々を魅了し続けています。
城端曳山祭の歴史
城端曳山祭は、1685年に城端神明社が社殿を再建し、春秋の祭りを始めたことが起源とされています。その後、1717年には神輿が新たに作られ、獅子舞や傘鉾を先導とする華やかな行列が加わりました。
1719年には曳山が登場し、1724年には神輿の巡行に曳山が随行するようになります。このようにして、現在の祭礼の原型が形作られていきました。
また、庵屋台についても1822年の庵唄の稽古番記録が残っていることから、その頃から存在していたと考えられています。これらの歴史的背景から、城端曳山祭は地域の伝統文化として深く根付いているといえるでしょう。
現在は毎年5月5日に開催されている城端曳山祭ですが、かつての開催時期は5月15日でした。しかし、お祭りに関わる人を確保すべく、2006年よりゴールデンウィーク期間中の日程に変更されたという背景があります。
城端曳山祭の見どころ
城端曳山祭には、押さえておきたい見どころがたくさんあります。中でも、おすすめのポイントを4つ紹介します。
1.豪華な曳山

見る人を圧巻する豪華な曳山は、城端曳山祭の見どころのひとつです。
曳山祭では、西上町、西下町、東上町、東下町、出丸町、大工町の6つの町がそれぞれ曳山と庵屋台を出し、歴史ある城端の街並みをゆっくりと進んでいきます。曳山が巡行する際は車輪がきしむ音が町中に響き渡り、伝統の重みを感じさせます。
各曳山には、堯王や寿老、大黒天、恵比寿の七福神などの御神像が祀られており、一度は目にしたことがある神様もいるかもしれません。大きくて迫力のある曳山は、昔から多くの人々を魅了し続けています。
晴れた日には、曳山の背後に五箇山や白川郷の合掌造り集落、そして白山の雄大な景色が広がっているのも魅力です。歴史と自然が織りなす美しい風景を楽しめるでしょう。
2.庵屋台の巡行

優雅で風情あふれる「庵屋台」も見どころのひとつです。城端曳山祭の庵屋台は、江戸時代の料亭や平安貴族の邸宅を模してつくられた屋台で、城端独自の文化を色濃く反映しています。
庵屋台の中では、町の若衆たちが「庵唄」を披露します。唄を担当する唄方と、三味線・篠笛・太鼓を奏でる囃子方が息を合わせて奏でる庵唄は、聴く人々の心を惹きつけるでしょう。
この庵屋台は、曳山と同じく6つの町がそれぞれ所有しており、曳山とともに町中を巡行します。西下町の庵屋台は京都・祇園の料亭、東上町の庵屋台は江戸の新吉原の料亭をモデルにしています。
3.夕刻からの幻想的な提灯山

夕暮れが訪れると、城端曳山祭は幻想的な光に包まれます。
5月5日(本祭)の18時45分頃から始まる提灯山巡行では、提灯の灯りに照らされた曳山と庵屋台が、昼間とは異なる雰囲気をまといながらゆっくりと町を巡ります。
柔らかな光と庵唄の音色は、富山の伝統と趣を感じられるでしょう。
4.出丸坂での引き返し
城端曳山祭の中でも特に見応えがあるところが、5月5日の夕刻から始まる「出丸坂引き返し」です。
出丸坂を下り切った地点で曳き手たちが一気に方向転換し、車輪をきしませながら180度大回転します。高さ6mにもおよぶ巨大な曳山を協力しながらあやつる姿は圧巻で、観客からは大きな歓声が上がります。
迫力に満ちたこの場面は、祭りの醍醐味の1つとして、多くの人々を魅了し続けています。
曳山を常時見られる「城端曳山会館」もおすすめ
城端曳山祭の魅力をより深く知りたい方には「城端曳山会館」もおすすめです。
館内では、お祭り開催期間以外でも職人の技が光る傘鉾や曳山・庵屋台が常時展示されており、気軽に歴史や伝統に触れられます。間近で見る曳山は、圧巻の迫力です。
また、ロビーでは城端曳山祭の様子を収めた映像が上映されています。お祭りで奏でられる「庵唄」や、6基の曳山が連なる巡行の様子を映像で楽しめます。
城端曳山祭のスケジュール
城端曳山祭は、5月4日の宵祭と、5月5日の本祭の2日間にわたって開催されます。1日ごとのスケジュールについて紹介します。
5月4日(宵祭)
5月4日の宵祭では、山車の曳き回しはありません。午前中は、城端曳山会館に展示されていた3台の曳山が各町へ返還され、別の3台は山蔵から出されて組み立てられます。お祭り後の5月6日には、前の3台と交替する曳山・庵屋台・傘鉾を曳山会館へ収める抜魂式が行われます。
18時からは、城端伝統芸能会館「じょうはな座」で庵唄を披露する庵唄奉納や、小学生による城端賛歌の発表があります。
その後、18時〜21時には、6ヶ町の山宿で飾り山が公開されます。そのほか、城端曳山会館前で実施される庵唄合同披露や、獅子舞・浦安の舞・城端賛歌も、宵祭を盛り上げるイベントの1つです。
5月5日(本祭)
5月5日の本祭は、早朝に御神像を曳山へ移し、巡行を準備することから始まります。
9時には、獅子舞・剣鉾・傘鉾を先導とする神輿の渡御行列が出発し、町を巡りながら15時頃に神明宮へ還御します。10時になると、城端別院善徳寺前で6台の曳山・庵屋台が合流し、巡行を開始します。庵唄の音色を奏でながら22時頃までひたすら町内を巡るため、お祭りの一部しか参加できないという方も安心して見届けられるでしょう。
午後の見どころは、16時頃に実施される西下町での山車の回転や、17時頃の出丸坂での迫力のUターンです。18時からは提灯を灯し、18時45分から幻想的な提灯山巡行が実施されます。21時30分頃には、南砺市役所城端庁舎前でUターンして、各町へ帰っていきます。
城端の春を彩る、城端曳山祭
城端曳山祭は、豪華な曳山と庵唄が織りなす、城端の歴史と伝統を肌で感じられるお祭りです。出丸坂での迫力ある引き返しや、庵唄とともに進む提灯山の姿など、毎年観客を魅了し続けています。
一年に一度、春の訪れとともに開催される城端曳山祭。ぜひその魅力を肌で体感し、心に残るひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
住所 | 富山県南砺市城端 |
開催時期 | 毎年5月4日、5月5日 ※少雨の場合は曳山にビニールシートをかけ巡行、荒天の場合は中止 |
アクセス | 【車】東海北陸自動車道「福光IC」より約3分 【電車】JR城端線「城端駅」より徒歩約10分 |
公式サイト | https://www.tabi-nanto.jp/archives/10503 |
公式Instagram | なし |
問合せ先 | 0763-62-2165(城端曳山会館) |
駐車場 | 【主な駐車場(無料)】 西新田(善徳寺西側):80台(善徳寺まで徒歩約3分) 城端市民センター:200台(善徳寺まで徒歩約5分) 城端グランド(城端小学校):450台(善徳寺まで徒歩約5分) なんと農協城端支店:50台(善徳寺まで徒歩約10分) 美山荘:50台(善徳寺まで徒歩約10分) 城南スタジアム:150台(善徳寺まで徒歩約15分)※大型バス可 |