富山に住む皆さん、寒い季節に体調を崩していませんか?雪が降るとさらに冷え込みが激しい富山の冬。寒暖差や乾燥が原因の体調不良や病気の経験がある人もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな富山の寒い冬に気をつけたい病気とその予防方法について、富山県立中央病院の医師に教えていただきました。

今回お話をうかがったのは🩺
富山県立中央病院 救命救急センター
センター長 若杉雅浩(わかすぎ まさひろ)先生
富山県立中央病院の救急科では、2024年度に12,608人が受診しました。そのうち、6,257人が救急車による搬送で、1日あたり約17人の患者さんが救急車で運ばれてきていることになります。救急センターの現場では1年を通して24時間体制で様々な症状に対応していますが、その中でも特に冬に増える症状について聞きました。
①寒暖差に要注意!急な血圧変動によって起こる病気
━冬に特に救急搬送が増える病気はありますか?
寒暖差による血圧の変動で起こる病気、低体温症、そして感染症が特に増えます。
寒暖差による血圧の変動で起こる病気が特に多く、いわゆる「ヒートショック」と呼ばれるものです。(実は「ヒートショック」という言葉は正式な病名ではないんですよ。)
富山県立中央病院に運ばれてくる患者さんは高齢者が多いですが、もちろん若い方も気を付けなければなりません。

寒い場所から暖かい場所に行っても危険な場合があるヒートショック
━ヒートショックはどういった時になりますか?
ヒートショックは急激な血圧の変動によって起こります。暖かいところから寒いところへ移動した時、寒いところから暖かいところへ移動した時、どちらでも起こる可能性があるんです。

急に寒いところに行くと体が緊張して血圧がぐっと上がります。血圧が上がることで心筋梗塞や脳卒中を引き起こすケースもあります。
暖かいところにいくと体の緊張状態が緩み、リラックスして血圧が下がります。血圧が下がることで失神してしまう、または立ち眩みで転倒し怪我をすることもあります。

━実際に運ばれてくる方は、どういったケースが多いですか?
寒いところから暖かいところへ移動した時の方が多いです。寒い脱衣所で服を脱ぎ、温かいお風呂に入ることで血圧が下がり気を失ってしまう方。夜にトイレを我慢している緊張状態から、用を足してリラックスしたことでふらっと倒れてしまう方。トイレで倒れて動けなくなり、そのまま低体温症になるケースも多いです。

年齢が若くても危ないケースも!
━ヒートショックで特に注意が必要な人はいますか?
血圧の調節機能が衰えているご高齢の方は注意が必要です。高血圧や心臓の病気、脳血管の病気を持っている方も、血圧が上昇すると発症する可能性があるので注意が必要です。

糖尿病の方も自律神経の働きが鈍くなっているため、血圧のバランスを取ることができず、倒れてしまうことがあるんです。
一方で、若い方でも安心はできません。最近はサウナを利用する方が多いですが、お酒飲んだ状態で入ると自律神経の調節機能が落ち倒れて運ばれるケースもあります。
ヒートショックを防ぐ4つの習慣
━ヒートショックを防ぐために、日常生活で気をつけることは?
まずは急激な温度差をつくらないことです。お風呂の温度も熱すぎないように気を付けた方が良いですね。

お風呂に入る30分くらい前にコップ1杯の水を飲むのもおすすめです。水分が足りていないと血液の量が少なくなり、血圧変動の影響を受けやすくなります。(飲み過ぎはよくないです。)
ご高齢の方や心臓病をお持ちの方は、できるだけ見守ってもらえる環境が必要です。

家族が倒れてしまった時の応急手当
━もし家族が立ち眩みで倒れたらどうしたらいいですか?
まずはあたたかいところに移動し横に寝かせてください。脳に血液を送ることが大切なので、足を頭よりも高くしてあげてもいいでしょう。数分して元に戻れば問題なく、後から心配になって受診する必要もありません。同じ症状が続くようなら受診してください。

何かおかしいと思ったら、迷わず救急車を呼んでください。「救急車を呼んでもいいのかな…?」と思うような場合は、「#7119」にかけると専門の看護師が相談に乗ってくれます。

② 乾燥に要注意!インフルエンザ・コロナなどの感染症
━冬に感染症が増えるのはなぜですか?
ウイルスは性質上空気中の水分にくっついて落ちるのですが、冬場は乾燥していると空気中に長く滞在して空気感染が起きやすくなります。また喉が乾燥すると免疫が落ち、体内からウイルスを外に出す機能が低下してしまいます。

━感染症で救急搬送されるのはどんなケースですか?
高熱が続いて動けなくなった方で、運ばれてくることがあります。今年のインフルエンザは高熱が続くケースが多いですね。例年より流行時期も早かった印象です。
感染症から身を守る2つの方法
━感染症を防ぐにはどうしたらいいですか?
加湿器などで部屋の湿度を保つことが一番良いです。マスクをして自分の息で加湿し、手洗いもしっかりして感染予防に努めると良いでしょう。

\💡感染対策室から耳より情報/
冬の感染症を防ぐ基本的な方法は、手洗いとマスクの着用です。
手に付いた病原体が、目や鼻や口といった粘膜から体に入ると、感染症を起こす恐れがあります。外出先では、手洗いする前の手で、目や鼻などを触らないように注意しましょう!
もし触るときは、しっかり手を洗ってからにします。特に、冬は感染性胃腸炎が流行しますので、食事の前や、トイレのあとは、石けんと流水で念入りに手を洗いましょう。
また、人がたくさんいるところに行くときには、マスクを着用すると良いでしょう。病原体を含んだ目には見えない小さな飛沫(口から出たしぶき)を吸い込むと、感染症を起こす恐れがあります。
マスク着用中は、マスクの表面に触らないようにしましょうね。
③ 年末年始に増える救急|飲酒・食事・思わぬ事故
━年末年始は、どのような理由で救急搬送が増えますか?
忘年会や新年会が増えますので、急性アルコール中毒や、酔っ払って転倒し怪我をして運ばれてくる方もいます。お餅をのどに詰まらせてしまうケースもあります。

急性アルコール中毒/喉をつまらせた時の対処法
━もし症状が出たとき、どうすればいいですか?
【急性アルコール中毒の場合】
急性アルコール中毒そのもので命に関わることはないのですが、吐いてしまったものが喉に詰まって亡くなってしまうことはあります。ですので仰向けではなく、横向きに寝かせてあげてください。
【お餅が喉に詰まった場合】
「咳をしてみて」と伝えてください。自分で咳ができれば出てくることが多いです。咳もできそうにない場合は、詰まらせている人の体を前かがみにし、背中のだいたい真ん中(肩甲骨と肩甲骨の間)を思いっきり何度か叩いてください。いろいろなやり方がありますが、これが一般の方には一番簡単な方法だと思います。

医師からのメッセージ🩺

年末年始はお酒を飲む機会も増えると思いますが、お酒はほどほどに。何かおかしいと思うような症状があれば#7119に相談。あぶないと思ったら、迷わず受診、救急車を呼んでくださいね。
富山県立中央病院│地域との医療連携
富山県立中央病院では、地域との医療連携を進めています。富山県立中央病院などの地域の中核病院と、みなさんの身近なかかりつけ医はお互いに役割を分担しています。

【かかりつけ医】
患者さんやご家族の健康・病気について気軽に相談・診療してくれる身近な開業医の先生で、日頃から患者さんの健康状態や症状をよく把握しています。
【富山県立中央病院】
高度ながん治療や救急患者の対応、危険性の高いお母さんと赤ちゃんの集中治療など専門性の高い医療を行っています。
かかりつけ医と富山県立中央病院は、それぞれの特長を生かして協力し、患者さんの症状に応じた適切な医療を提供しています。受診から入院、退院まで切れ目なくサポートしてくれるため、まずはお近くのかかりつけ医にご相談ください。
| 施設名 | 富山県立中央病院 |
| 住所 | 富山県富山市西長江2丁目2番78号 |
| 公式サイト | https://www.tch.pref.toyama.jp/ |
| 初診受付 | 地域連携予約ありの場合/午前8時30分〜午前11時00分 地域連携予約なしの場合/午前9時00分〜午前11時00分 |
| 再診受付 | 予約ありの場合/午前7時30分〜予約時間まで 予約なしの場合/午前9時00分〜午前11時00分 |
| 休診日 | 土・日・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日) ※ゴールデンウィーク、お盆等の平日は通常どおり |