ヌックとは、階段下やリビングの一角に取り入れる「こぢんまりとした居心地の良い空間」のことをいいます。本記事では、ヌックとは何か、ヌックのメリットとデメリット、ヌックのおすすめ間取り例、注意点について紹介します。戸建ての住まいを考えている方や、ヌックに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
ヌックとは?

引用:https://sho-ei.net/news/detail.php?id=16455
ヌックとは「こぢんまりとした居心地の良い空間」を指す言葉で、スコットランド語の「neuk(ヌーク)」が語源といわれています。
もともとは、スコットランドの住宅にある暖炉のそばに設けられた腰掛け「イングル・ヌック(Ingle nook)」が由来とされており、そこから「落ち着ける小さな空間」という意味が広まりました。
現代では、ヌックは家の一角を活用して作るリラックススペースを指すことが多くあります。壁で完全に仕切るのではなく、段差や家具を利用した間取りが特徴です。
ヌックのある間取りのメリット
間取りにヌックを取り入れることでどのようなメリットがあるのでしょうか。ヌックのある間取りの主なメリットを紹介します。
家族とつながりながら自分だけの空間を作れる
ヌックは一人の時間を過ごせる個人的なスペースですが、扉や壁はなく、完全な個室ではありません。そのため、家族と一緒の空間にいるというつながりや安心感がありながら、自分だけの空間で自由に過ごせます。
家族とリビングで過ごしていると、テレビの音が気になって読書に集中できない、ソファーしかないため座る場所に困る、などの過ごしづらさを感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヌックのある間取りでは、家族がテレビを見ている間いつでも話しかけられる距離にいながら、ゆるやかに区切られた空間で自分の時間を好きに過ごせます。
デッドスペースを有効活用できる
ヌックは、住宅にある間取りの中でもデッドスペースと呼ばれる本来活用できない場所に設計できます。例としては、階段下や窓辺などが挙げられます。
通常無駄になってしまうような場所を有効活用できるため、家の中の無駄な空間をなるべく減らしたいという方にもおすすめの間取りです。
さまざまな使い方がある
ヌックのある間取りは、さまざまな使い方ができるのも魅力の1つです。デスクとチェアを置けばリモートワークスペースになるほか、子ども部屋の一角を利用すれば、秘密基地のような空間が広がります。
その他にも、マッサージチェアやアロマディフューザーなどを設置してくつろぐリラックススペースや、ペットハウス・ペット用の水飲み場・トイレを置いてペット専用スペースにするのも便利です。
このように、ヌックはアイデア次第でさまざまな使い方ができます。
ヌックのある間取りのデメリット
ヌックのある間取りはメリットが多い反面、ヌックならではのデメリットもあります。ここからは、ヌックのある間取りのデメリットを紹介します。
費用がかかる
ヌックを作るには一定の費用がかかります。設置する場所やデザインによっては追加のオプション費用もかかるため、事前にしっかりと予算計画を立てておくことが重要です。
例として、本を読むスペースとしてヌックを作る場合、ヌックスペースの他にも本棚やベンチ、デスク、照明などの設置が必要です。また、窓を設けて換気や空調設備を整える場合も追加費用が発生するでしょう。
理想的なヌックのある間取りを実現するためには、どのような要素が本当に必要かを考え、予算と相談しながら計画を進めることが重要です。
ヌック用の面積がとられる
ヌックを間取りに取り入れる際は、ヌック用の面積を確保しなくてはなりません。階段下などのデッドスペースを活用する場合は問題ないものの、部屋の一部を削る形で設置すると、その分ほかの居住スペースが狭くなります。
リビングの一角にヌックを作る場合は、多少面積が減っても気にならないかもしれません。しかし、もともとコンパクトな空間にヌックを設けることで、圧迫感を感じてしまう可能性があります。ヌックの設置によって動線が悪くなる、他の家具の配置に影響が出るなど、生活に影響が出てしまう可能性も考えられるでしょう。
快適な住空間を維持するためにも、住宅の広さや家族の生活スタイルを考慮しながら、ヌックに割くスペースを適切に調整することが重要です。
使いづらいと活用されない場合がある
さまざまな使い方で生活が豊かになるヌックですが、「流行っているから」などの理由で間取りに取り入れると、あまり活用されずに無駄なコストをかけてしまったという後悔につながりかねません。
ヌックのある間取りは、家族とつながりながら自分だけの特別空間を過ごせるのが大きな醍醐味といえるでしょう。そのため、家族が集まる共有スペースから離れて設置すると、普段の個室と変わらず、いずれ使わなくなる可能性があります。
間取りにヌックを取り入れる際は、何のために使うのか、どのくらいの大きさが必要なのかなど、きちんと目的を決めることをおすすめします。
ヌックの間取り例
ヌックを取り入れる際は、さまざまな間取りのアイデアがあります。中でもおすすめしたいヌックの間取り例を4つ紹介します。
階段下ヌック

引用:https://www.pokohouse.jp/works/47
階段下のよくある活用方法としては、収納スペースやトイレの設置などがありますが、ヌックを取り付けるのにもぴったりの場所といえるでしょう。階段下ならではのこぢんまりとした空間は、まるで秘密基地のようです。
階段下のヌックは天井が斜めになるため、低い方が窮屈に感じる可能性があります。間取りに取り入れる前に、立面図などを使いながら実際の高さをしっかりイメージするようにしましょう。
リーディングヌック

引用:https://www.facebook.com/story.php
リーディングヌックとは、読書に適した居心地の良い小さなヌック空間のことを指します。
リビングの一角や廊下の隅など、限られたスペースを活用して、自分だけの読書スペースを作れます。本棚のほか、ゆったり座れるベンチや椅子を配置すれば、小さな図書館のような雰囲気を演出できます。
本に囲まれながら過ごす時間は、心を落ち着かせてリフレッシュするひとときを提供してくれるでしょう。
窓ヌック

引用:https://www.ykhome.jp/event/openhouse/event165/
「窓ヌック」は、名前の通り窓のそばに取り入れるヌックのことをいいます。
外の景色を楽しみながらくつろげるため、日当たりの良い場所に設置すれば、読書やお茶、日光浴など多彩な使い方ができます。天気の良い日は暖かな光に包まれ、忙しい日常の中でリフレッシュできるひとときを過ごせるでしょう。
特に出窓を活用したヌックは床面積に算入されない場合もあるため、狭い家でも有効に取り入れられます。
リビングの一角にヌック

引用:https://www.odakehome.co.jp/work/works243
リビングの一角にヌックを作ることで、家族と同じ空間にいながらも、個々の時間を穏やかに楽しめます。リビングは家族が多くの時間を過ごす場所のため、ヌックとの組み合わせが非常に良いといえるでしょう。
また、リビングヌックをキッズスペースとして子どもの遊び場にするのもおすすめです。秘密基地のような空間で、子どもにとって特別な場所になるでしょう。「おもちゃを散らかしていいのはヌックの中だけ」「ヌック以外におもちゃは持ち込まない」などのルールを設けるのも効果的です。
ヌックをキッズスペースとする場合は、子どもたちが成長してからどのように活用するかも計画しておくと安心です。
間取りにヌックを取り入れる際のポイント

引用:https://sho-ei.net/news/detail.php?id=16455
間取りにヌックを取り入れる際は、押さえておきたいポイントがあります。中でも重要なポイントを4つ紹介します。
ヌックを作る目的を明確にする
ヌックを取り入れる際には、どのように過ごしたいかという目的を明確にすることが大切です。目的をしっかり決めることで、設置場所やデザイン、インテリアの方向性がはっきりし、より快適な空間を作れます。
例として、静かに読書を楽しみたい場合は、リビングから少し離れた落ち着ける場所に設計すると良いでしょう。逆に、子どもの遊び場として活用する場合は、広さや収納の工夫が必要です。
目的が曖昧なままヌックを取り入れてしまうと、使われない物置きスペースになってしまう可能性があります。具体的な利用シーンを考えながら設計することが重要です。
壁や扉を使わずに空間を分ける
間取りにヌックを取り入れる際は、壁や扉で完全に仕切るのではなく、空間のつながりを保ちながらも独立した場所として工夫することが重要です。例としては、床の高さを変える、小さな入り口を設ける、天井を低くする、床材を切り替えるなどの方法があります。
適度なプライベート感を持たせつつ、家全体の調和を考えたデザインを意識すると、より魅力的なヌックになるでしょう。
居心地の良いこぢんまりとした広さにする
ヌックは広すぎると単なる部屋になるため、ほどよいコンパクトさが重要です。大体2〜3畳程度の広さが目安といわれており、このサイズであれば圧迫感を感じにくく、落ち着いた空間を作れます。
広さだけでなく、奥まった場所への配置や、天井を少し低くすることで「こもり感」を演出するのもおすすめです。よりリラックスできる特別空間に仕上がるでしょう。
家具や照明で雰囲気を演出する
ヌックを快適な空間にするためには、理想の雰囲気に合った家具や照明を選ぶことが重要です。
求めている雰囲気に合うサイズやデザインの家具を選ぶほか、照明は周囲より少し暗めにすると落ち着いた空間を演出できます。ペンダントライトを低めに設置する、床に間接照明を置くなど工夫することで、さらにリラックスできる空間になるでしょう。
読書する場合は手元が明るくなるような照明を選び、光の色は暖色系にすることで温かみのある空間を演出できます。
ヌックのある間取りで居心地の良い空間をつくろう
今回は、ヌックとは何か、ヌックのある間取りのメリットやデメリット、取り入れる際の注意点などについて紹介しました。
ヌックのある間取りは、家族とのつながりを感じながら自分だけの時間を過ごせる特別な場所です。階段下やリビングの一角など、取り入れる場所によってさまざまな使い方ができます。
本記事を参考にしながら、ヌックのある間取りで自分や家族だけの特別空間を作ってはいかがでしょうか。