犬とアイコンタクトをとる重要性

犬と飼い主が良好な関係を築くうえで、「アイコンタクト」は重要な役割を果たします。犬とのアイコンタクトがもたらす、3つのメリットを紹介します。
問題行動を抑制できる
犬は外出先で他の犬や人に興奮し、吠えてしまうことがあります。
名前を呼んでアイコンタクトを取ると、犬の注意が飼い主に向くため、余計な刺激を遮るメリットがあります。
ほかにも、散歩中に他の犬を追いかけそうな場面でアイコンタクトをとることで、冷静さを取り戻し危険な行動を防げます。
犬とのアイコンタクトは、問題行動を抑えるための有効な手段といえるでしょう。
飼い主と犬の信頼関係が深まる
麻布大学の研究では、犬と飼い主が見つめ合うと、オキシトシンと呼ばれる「愛情ホルモン」が双方に分泌されることが明らかになっています。
(参考:https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2015/0417_2502.html)
このホルモンは愛情や信頼を育む作用があることから、犬とのアイコンタクトは絆を強める重要なコミュニケーションのひとつといえます。
日常の中で自然に視線を交わすことを意識するだけでも、飼い主と犬の信頼関係はより深まるでしょう。
しつけトレーニングがスムーズになる
アイコンタクトが習慣化すると、犬は飼い主の声や指示に耳を傾けやすくなります。「おすわり」や「待て」などの基本的なしつけもスムーズに伝わるため、トレーニング全体の効率が高まります。
犬とのアイコンタクトは単なる合図ではなく、犬が飼い主の言葉を聞こうとする準備状態をつくり出す、大切なプロセスです。
アイコンタクトを練習する前に確認すること

いきなりアイコンタクトを練習する前に、準備することがあります。それは、犬が「名前を呼ばれたら反応する」状態をつくることです。
名前を呼ばれても無反応なままでは、目を合わせるトレーニングにつながりません。そのため「名前を呼ばれたら良いことがある」と学習させることがポイントです。
ごはんやお散歩など、犬にとって嬉しいタイミングで名前を呼ぶ習慣をつけましょう。くり返すうちに、名前を聞くと「なにか楽しいことがあるの?」と期待し、自然に飼い主のほうを見てくれるようになります。
日常生活の中でも「おはよう」や「ごはんだよ」と声をかけるときに、必ず名前を添えるように意識することがポイントです。名前を通してコミュニケーションを積み重ねていけば、アイコンタクトの練習にもスムーズに移行できるでしょう。
犬にアイコンタクトを教える方法6ステップ

アイコンタクトは、犬にとって自然にできるものではなく、飼い主が教えてあげる必要があります。最初はおやつを使いながら、楽しく練習することがポイントです。
初心者でも取り入れやすい、6つのステップを紹介します。
1.手におやつを握り、においで興味を引く
まずは、犬が大好きなおやつを手に握って準備しましょう。においがするだけで犬は自然に関心を示し、飼い主の手に注目します。この段階は「練習を始める合図」としても機能します。
おやつだけでなく、ドライフードであればいつものフードを使用しても問題ありません。
2.犬の視線が手を追うのを確認する
手におやつを握ったまま犬の前に差し出し、犬がその手をじっと見ているかを確認します。
視線をしっかり追っている状態になれば、次のステップに進む準備ができています。このとき犬が集中していない場合は一度リセットして、落ち着いたタイミングでやり直すのがおすすめです。
3.おやつを持った手を、飼い主の顔の近くまでゆっくり動かす
犬の目線が手から外れないように注意しながら、手をゆっくりと自分の顔の近くまで持っていきます。
急に動かすと犬が戸惑うため、自然に目線が上がるように誘導することがポイントです。犬の様子を見ながら、スムーズに視線を移動させることを意識しましょう。
4.犬の視線を飼い主の目に誘導する
おやつを顔の横まで持っていくことで、犬の視線が自然に飼い主の目に移ります。
このときにしっかりと目が合うように意識しましょう。「これがアイコンタクト」といった感覚を犬に伝える大事な瞬間です。最初は少しの時間から始め、徐々に目を合わせる時間を延ばしていくことがポイントです。
5.犬の名前を呼んで注目を深める
犬の視線が飼い主の目に向いたタイミングで、やさしく名前を呼びかけます。名前と視線を結びつけることで、「呼ばれたら飼い主を見る」という習慣がつきやすくなります。
毎回同じトーンで名前を呼ぶと、犬にとってわかりやすく、安定した合図になります。
6.目が合ったらほめてご褒美をあげる
しっかりアイコンタクトできたら、「よし」「OK」と声をかけ、名前を呼んでからおやつを与えましょう。成功体験を積み重ねることで、犬はアイコンタクトが楽しいものだと覚え、自然にできるようになっていきます。
ご褒美をすぐに与えることで、犬が行動と結果を結びつけやすくなります。
犬にアイコンタクトを教える際に注意すべきポイント5つ

アイコンタクトの練習は、正しい方法で実施することが成功の秘訣です。犬にアイコンタクトを教えるときに注意したいポイントを紹介します。
1.練習は静かで落ち着ける場所から始める
犬のしつけトレーニングには、集中力が欠かせません。周囲に遊んでいる子どもや、大きな音がする場所では気が散ってしまい、練習どころではなくなってしまいます。
そのため、最初はおもちゃの誘惑が少なく静かな自宅で練習を始めましょう。自宅でアイコンタクトが安定してできるようになったら、公園や外出先など少し刺激のある環境でも練習を重ねます。
慣れてきたら、犬が少し興奮しているときに指示するなど、段階的に難易度を上げて身につけていくと効果的です。
2.名前を呼ぶときは優しい声と笑顔で
しつけに真剣になりすぎると、つい硬い表情や強い声で名前を呼んでしまうことも少なくありません。しかし、それでは犬が不安になりアイコンタクトをしにくくなってしまいます。
特に、名前を覚えたばかりの時期には「名前を呼ばれるといいことがある」と思わせることが大切です。犬の名前を呼びかけるときは、飼い主自身が笑顔で優しいトーンを心がけましょう。
3.アイコンタクトが得意じゃない犬もいる
すべての犬がすぐにアイコンタクトを得意とするわけではありません。性格によっては、視線を合わせることを苦手とする犬もいます。
その場合は無理に進めず、少しずつ段階を踏んで慣れさせることが大切です。時間がかかっても焦らず、犬のペースに合わせて練習を続けましょう。
4.じっと見つめすぎない
犬とアイコンタクトを取るときに、長時間じっと見つめすぎるのは逆効果です。犬によっては威圧感やプレッシャーを感じて緊張してしまいます。
そのため、最初はほんの一瞬視線が合うだけで十分です。少しずつ慣れてきたら、徐々に目を合わせる時間を延ばしましょう。
5.ご褒美を用意する
犬が「アイコンタクトをすると良いことがある」と思えるように、はじめはご褒美を用意しておくことも欠かせません。
おやつやドライフード、お気に入りのおもちゃを上手に活用することで、アイコンタクトの習慣化がスムーズに進むため、おすすめです。
犬とのアイコンタクトで絆を深めよう
アイコンタクトは、単なるしつけの一部ではなく、飼い主と犬との信頼関係を築く大切なコミュニケーション手段です。
「犬は名前を呼ばれたら目を合わせる」といったシンプルなやり取りを積み重ねることで、問題行動の抑制やしつけのスムーズさだけでなく、心のつながりもより深まっていきます。
毎日の生活の中でアイコンタクトを習慣にし、犬にとって「見つめ合うことはうれしい時間」だと感じてもらえるようにしましょう。少しずつの積み重ねが、犬と飼い主の絆をさらに強くしてくれるはずです。