日本海側に位置し、富山湾や立山連峰といった大自然を誇る富山県。特に黒部ダムは観光地として多くの方が訪れます。
そんな富山県に、2024年6月30日に新たな観光名所となる「黒部宇奈月キャニオンルート」がオープンすることをご存知でしょうか。本記事では、今注目されている黒部宇奈月キャニオンルートの魅力や歴史についてわかりやすく解説します。
富山県への旅行を検討している方はもちろん、富山県内に住んでいる方も必見の内容となっているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
黒部宇奈月キャニオンルートとは?
黒部宇奈月キャニオンルートとは黒部ダムと黒部峡谷鉄道 欅平駅を結ぶ、全長およそ18kmのルートのことです。黒部川第四発電所の建設等に伴い、日本電力株式会社や関西電力株式会社が工事用ルートとして整備していました。その後、2018年に関西電力株式会社と日本電力株式会社が協定を結んだのち、安全対策が施され晴れて2024年より観光用ルートとしてオープンします。
黒部宇奈月キャニオンルートが開設されたことにより、「黒部峡谷」と「立山黒部アルペンルート」の2つの旅の拠点をより手軽に両方楽しむことが可能となりました。これまで人類が努力を重ねて作ってきた電源開発の歴史やロマンを思う存分味わうことができます。
黒部宇奈月キャニオンルートの歴史
黒部宇奈月キャニオンルートの歴史は、黒部川の水力電源開発が始まった1917(大正6)年までさかのぼります。黒部川一帯は水力発電をするのに適しながらも、過酷な自然環境によって開発が困難を極めていました。しかし、1917年に初めて電源開発のための調査がスタート。調査や工事のため、先人たちが命がけで絶壁を削って桟道(水平歩道〜日電歩道)を掛けていきました。
その後、1936年(昭和11)年に黒部川第三発電所と仙人谷ダムの建設がスタートします。仙人谷までは急勾配になっているため、エレベーターとトンネルを作って輸送を計画します。
ときには大雪崩が襲来し、作業員の宿舎が大崩壊したこともあったそうです。
このような困難をいくつも乗り越え、ついに当時日本最大の発電所が完成。1940(昭和15)年に発電を開始しました。
時代が進み第二次世界大戦を経て、日本経済の復興化に伴い、より多くの電力が必要になります。それを受け、1956(昭和31)年に「くろよん(黒部川第四発電所・黒部ダム)」の 建設が始まります。
建設後にも数々の困難が待ち受けており、一時期は建設不可とさえ言われていました。しかし、地質学会や土木学会の知識と経験を結集させることで1963(昭和38)年、ついに「くろよん(黒部川第四発電所)」が完成。なんと7年の歳月と、のべ約1,000万人もの人手を費やしました。
黒部宇奈月キャニオンルートの楽しみ方
ここからは、黒部宇奈月キャニオンルートの楽しみ方についてご紹介します。
工事用トロッコ電車
黒部宇奈月キャニオンルートの大きな魅力のひとつが、工事用のトロッコ電車に乗れることです。実際に1921(昭和10)年頃から、工事関係者の移動手段として使われていた歴史があり、黒部峡谷鉄道の終着駅・欅平駅と竪坑エレベーターとをつないでいます。
薄暗いトンネルをおよそ3分ほどかけて運行しており、まるで自分が当時の作業者になったような気持ちを体験できます。
竪坑エレベーター
約200mほどの標高差を約2分で一気に昇降する竪坑エレベーターも黒部宇奈月キャニオンルートの見どころのひとつです。
1939(昭和14)年に設置された竪坑エレベーターは、山の中腹を垂直に貫いています。複雑な地形のため鉄道を伸ばすことができなかったのが主な理由で、建設当時は標高差は日本一を誇っていました。
蓄電池機関車
鮮やかなオレンジ色のボディが特徴的な蓄電池機関車は、竪坑エレベーター「欅平上部」から黒部川第四発電所までの6.5kmを運行しています。
蓄電池機関車に乗って通過する道中にある「高熱隧道(トンネル)」は掘削当初、岩盤の温度はおよそ160度ほどになる危険地帯です。観光用に整備された今でも、温度はおよそ40度ほどあります。
インクライン
1959(昭和34)年に完成されたインクラインは、なんと長さ815m、斜度34度もの急傾斜を誇ります。
インクラインとは、斜面に軌道を作り、船や荷物などを昇降運搬する装置で、黒四発電所建設に必要な資材、機材を輸送するために建設されました。およそ20分かけて昇降するインクラインは、急傾斜の長大な斜坑を掘削するという点で、当時では世界にも例のないものでした。
黒部宇奈月キャニオンルートへのアクセス
最後に、黒部宇奈月キャニオンルートへのアクセスを簡単にご紹介します。黒部宇奈月キャニオンルートへのアクセスは、「宇奈月駅」から黒部峡谷鉄道を経由する方法と「立山駅」から立山黒部アルペンルートを経由する方法の2通りがあります。
まず宇奈月駅から黒部宇奈月キャニオンルートへ向かう場合、黒部峡谷鉄道に乗って欅平駅まで向かいます。所要時間はおよそ1時間20分ほどで、料金は¥1,980です。
(画像引用:https://canyon-route.jp/access/)
立山駅から黒部宇奈月キャニオンルートに向かう場合は、立山黒部アルペンルートを経由して向かいます。立山黒部アルペンルートは標高3,000m級の山々が連なる北アルプスを貫く世界有数の山岳観光ルートです。
長野県大町市「扇沢駅」から富山県立山町「立山駅」まで伸びる総延長37.2km、最高地点2450mを誇ります。立山黒部アルペンルートは乗り物を乗り継ぎながら巡れるので、どんな方でも安心して気軽にアクセスできます。
非日常が体験できる「黒部宇奈月キャニオンルート」
本記事では2024年6月30日に新しくオープンする富山の新観光名所「黒部宇奈月キャニオンルート」について解説しました。
黒部宇奈月キャニオンルートはもともと観光地として有名だった黒部ダムと黒部峡谷鉄道の2拠点を結ぶ全長およそ18kmの新ルートです。黒部宇奈月キャニオンルートの開通により、先人たちの英知を結集した電源開発の軌跡を肌で感じられるようになりました。
来年富山県に来られた際には昭和初期より活躍してきた非日常の乗り物を乗り継ぎ、ぜひロマンあふれる旅行に出かけてみてはいかがでしょうか。