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【2025年】建築基準法改正の変更点・家づくりにどう影響する?

2025年の建築基準法改正を紹介!改正前後でどのような変更点があるのか、変更のメリットやデメリット、建築基準法改正に向けて必要な準備について詳しく解説します。
改正に伴って木造住宅を建てる際の流れや省エネ基準も変わり、これから家を建てる人への大きな影響が予測されます。省エネ住宅のために富山県で行われている取り組みについても紹介しているため、これから家づくりを考えている方は参考にしてみてください。

建築基準法とは

建築基準法は1950年に制定され、国民が安心して暮らせるために建築物の敷地・設備・構造・用途について最低基準を定めた日本の法律のことをいいます。私たちの生命や健康、財産を確保するために重要な法律のため、万が一建築基準法に反する建築物を建てた場合は違反建築物となり、処罰の対象となります。実際に建築するのは施工業者ですが、これから家づくりを考えている方が自ら建築基準法を理解することによって、より安全で快適な家づくり、町づくりに繋がるのです。

2025年の建築基準法改正の変更点

建築基準法は2022年に建築基準法改正案が決議され、2025年4月から施行される予定です。改正後の建築基準法では日本の将来を見越して省エネ基準適合が義務化されるなど、いくつもの変更点があるため詳しく解説します。

省エネ基準の改正

2025年の建築基準法改正にあたり、大きな変更点の一つに「省エネ基準の改正」があります。

背景として、日本では2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目標に掲げており、カーボンニュートラルを達成するためには2030年までに温室効果ガスを46%削減(2013年度比)する必要があります。中でも建築物分野はエネルギー消費の約3割を占めると言われているため、特に力を入れて省エネ対策を加速させているのです。

住宅の大きさは「大規模( 2,000㎡以上)」「中規模」「小規模(300㎡未満)」の3つに分けられており、これまで小規模住宅は建築士による省エネ基準に関する説明義務、中規模住宅と大規模住宅には省エネ基準への適合を届け出る義務が設けられていました。しかし建築基準法改正後は10㎡以下の建築物を除き、全ての住宅で省エネ基準への適合義務が発生します。

4号特例の規定の変更

2025年の建築基準法改正にあたり、4号特例の変更も押さえるべき要点となります。

※「審査省略制度(いわゆる「4号特例」)」とは
建築基準法第6条の4に基づき、建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物(建築基準法第6 条第1項 第4号に該当する建築物)において、建築士が設計する場合には、構造関係規定等の審査が省略される制度です
(引用:https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf

4号特例の見直しには、大きく分けて2つのポイントがあります。

一つ目は「建築確認・検査と審査省略制度の対象範囲が変わること」です。

改正前は、木造2階建て・木造平屋建てといった建物は「4号建築物」に区分され、建築確認の簡素化や合理化を図ることを目的として審査が省略されていました。しかし改正後は、木造2階建て・木造平屋建て(面積200m²超)を「新2号建築物」、木造平屋建て(面積200m²以下)を「新3号建築物」とし、2種類に区分されます。
新2号建築物は、全ての地域での建築確認・検査が必要かつ審査省略制度は”対象外”となり、新3号建築物では都市が定める計画区域等内に建築する際の建築確認・検査が必要かつ審査省略制度の”対象”となります。

二つ目は「確認申請の際に構造・省エネ関連図書の提出が必要になること」です。

改正前の「4号建築物」では、「確認申請書・図書 (一部図書省略)」の提出のみでしたが、改正後の「新2号建築物」では今までと変わらず確認申請書・図書の提出に加えて「構造関係規定等の図書」「省エネ関連の図書」の提出も必要となります。「新3号建築物」では従来の4号建築物と同様に「確認申請書・図書 (一部図書省略)」のみの提出で問題ありません。この変更で住宅の4号特例は、新2号建築物と新3号建築物になるため廃止となります。

建築基準法改正によるこれから家を建てる人への影響は?準備が必要なものまでご紹介

2025年4月に改正が予定されている建築基準法ですが、改正後に家を建てる上で大きな影響が考えられます。これから家を建てる人への影響や家を建てる際のメリット・デメリット、準備が必要なものについて紹介します。

【メリット】
建築基準法改正後に家を建てる際のメリットとしては、家全体の断熱性が高まるためエアコンなどの光熱費を削減しやすく、環境に配慮した暮らしが実現できるという点です。また、今までは提出書類や審査の省略により建築後の不適切な設計や構造強度の不足といった弊害がありましたが、改正後は審査も十分に行い安全な状態と判断してから建築作業に入るため、トラブルを未然に防いで安心な家づくりが可能になります。地球にやさしい省エネ住宅の建築では補助金の適応もいくつかあるため、事前に調べて利用することで建築コストを抑えられるというメリットもあります。

【デメリット】
一方で建築基準法改正後のデメリットとして、建築時に発生する費用が上がることや施行期間の長期化が挙げられます。断熱性が高く耐震性能も十分に備わった家を建てるためには、断熱材などの建築材料費が増えてしまうことは避けられないでしょう。

また、4号特例の見直しにより、今まで提出が不要だった書類も建物によっては提出が義務付けられました。構造計算書の作成には一般的に30万〜50万円程度の費用がかかると言われており、申請書類や提出後の行政の審査にも今まで以上に時間がかかります。このように、提出書類や審査に要する時間もかかることから家づくりのスケジュールは余裕を持って行うことがおすすめです。

省エネ基準の変更による影響

建築基準法改正に伴い、2022年6月に公布された「改正建築物省エネ法」も2025年4月から施行されます。これは、4号特例が廃止されると同時に「省エネ基準」の適応が義務付けられることになります。具体的には、新築を建てる際に最高レベルであった「省エネ等級4」が、建築基準法改正後の2025年4月以降は全ての新築住宅、新築非住宅に求められます。新築以外にも大規模なリフォーム工事をする際、改めて建築確認書の提出を求められる場合は、新築と同様に「省エネ等級4」の条件を満たしていなければ建築申請が通過できないのです。

省エネ等級と同じく、建築する上で「断熱等級」というものもあります。断熱等級は7段階あり、現時点では「断熱等級4」が最高ランクですが、2025年4月以降はこの最高ランクの断熱性能が、必ずクリアしなければならない性能になります。

近年の新築でも断熱加工は十分行われていますが、建築基準法改正前に建てられた建築物では「断熱等級4」を満たしていない建築物が多いと言われています。理由はUA値(外皮平均熱貫流率)にあると言われており、UA値とは床、壁、窓、屋根などから、住宅全体の熱量がどれくらい逃げやすいかを示す数値のことです。数値が大きいほど熱量が逃げやすく、従来の建築物ではこのUA値が大きい建物が多くあります。

UA値を低くするためには、従来の建築物で使用されている断熱材よりもさらに厚くて密度の高いものを使用することがポイントになります。これまでは審査が簡略化されていたことにより申請を通過していた断熱でも、今後はさらに高断熱の建築が必要です。

4号特例の廃止による影響

4号特例の廃止によって、新築でなくリフォームやリノベーションをする場合でも、2階建て以下の木造建築物かつ300㎡を超えるものに関しては構造計算書の添付が義務付けられることになりました。その他、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」においても建物の耐震性基準を満たす「耐震等級1」が義務付けられています。

また、家の構造部分となる骨組みだけを残してほとんどの部分を解体するスケルトンリフォームなどの大規模改修について、今までは再度提出が必要な書類に関しての基準が曖昧になっていましたが、2025年4月以降は「建築確認書」「構造計算書」「補強計画案」の提出が必須となりました。

このように、今まで曖昧であった審査通過基準に関してもより厳格な審査が必要になり、申請が通って初めて工事を始めることができます。そのため、これから新築を建てたい方やリフォームを考えている方は、2025年の建築基準法改正によりどのような書類提出が必要なのかを事前に確認しておくと良いでしょう。

また、4号特例の規定の変更による影響は、施主だけでなくハウスメーカーやリフォーム業者にも生じることが考えられます。これから建てられる木造住宅において今までよりも細かく丁寧な構造計算や壁量計算が必要になり、近年は省エネ化により太陽光パネルの導入や住宅への断熱加工技術も求められていることから計算方法も複雑化しています。

そして、改正によりこれまで見逃されていた住宅の構造強度の不足が見つかる可能性も高まるため施行業者・設計士の業務量が増え、人件費の加算も考えられるでしょう。このように、4号特例の廃止に伴い、施主だけでなく家づくりに関わる方全てに大きな影響が及ぶことが予測されます。

省エネ住宅のための取り組み

省エネ住宅のための取り組みを3つ紹介します。

「子育てエコホーム支援事業」

2050年カーボンニュートラルの実現に向けた家庭部門の省エネを強力に推進するための事業「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環として、「子育てエコホーム支援事業」という取り組みがあります。
これは、エネルギー価格などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修などを支援することを目的としています。

この取り組みにより、子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えを行い、2050年のカーボンニュートラルの実現を図っています。補助対象は高い省エネ性能を有する住宅の新築とリフォームで、長期優良住宅の場合は100万円/1戸、ZEH住宅の場合は80万円/1戸の補助が受けられます。また、リフォーム工事の場合は、工事内容に応じて20万円から最大60万円の補助が受けられます。

補助対象と補助額の詳細は以下の通りです。

引用:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001739177.pdf

また、申請手続きの流れは以下の通りです。

引用:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001739177.pdf

「先進的窓リノベ2024事業」

前述した「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環として、「先進的窓リノベ2024事業」という取り組みもあります。この取り組みは、断熱窓への改修を促進し既存住宅の省エネ化を促すことで、エネルギー費用負担の軽減、健康で快適な暮らしの実現や家庭からのCO2排出削減に貢献することを目的としています。この取り組みでは補助対象工事の内容に応じて、一戸につき、5万円から最大200万円の補助が受けられます。

補助対象と補助額の詳細は以下の通りです。

引用:https://www.env.go.jp/content/000211445.pdf

また、申請手続きの流れは以下の通りです。

引用:https://www.env.go.jp/content/000211445.pdf

「給湯省エネ2024事業」

「給湯省エネ2024事業」も前述した「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環の取り組みです。この取り組みは、庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野について、高効率給湯器の導入支援を行い、その普及拡大により、「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」の達成に寄与することを目的としています。この取り組みでは補助対象の給油設備では一台10万円から20万円の補助を受けることができ、導入と共に撤去する場合は追加で補助を受けられます。

補助対象と補助金額の詳細は以下の通りです。

引用:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/koukouritsukyutoki_gaiyou.pdf

また、事業スキームは以下の通りです。申請手続きは、消費者等と契約の締結等を行った民間企業等が行い、補助金の交付を受け、公布された補助金を消費者等に還元するという流れになっています。

引用:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/koukouritsukyutoki_gaiyou.pdf

2025年の建築基準法改正を踏まえた家づくりをしよう

今回は、2025年4月から施行される建築基準法改正について解説しました。改正後は、より省エネかつ安全な家づくりがなされるようになります。一方で、建物によっては新たに提出が義務付けられる書類もあり、作成や審査に今まで以上に時間がかかるため、新築を建てる際は2025年の建築基準法改正内容を踏まえてスケジュールに余裕を持ちながら取り組むことをおすすめします。

また、富山県では省エネ住宅のための「富山県住宅省エネ改修推進モデル事業」の取り組みも行っています。この記事を参考に2025年の建築基準法改正をしっかりと理解した上で、後悔のない素敵な家づくりをしてください。

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トイエバ編集部

トイエバ編集部

様々な富山の情報をお届けするトイエバ編集部です!

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