避難所で困るのがプライバシー問題

災害時に避難所での生活を余儀なくされると、慣れない環境によるさまざまなストレスや疲労が心身にかかります。そのなかでも多くの人が感じるのが、プライバシーの確保が難しいことによる不快感や疲れです。
着替えや就寝、トイレの利用など、日常では気にしないような行動も、周囲の視線や音が気になることで大きな負担になります。このような状況が続くと、精神的なストレスはもちろん、体調を崩すきっかけにもなりかねません。
特に、災害による被害が大きく、避難生活が長引く場合は、プライバシーの有無が生活の質を大きく左右します。自治体による間仕切りの設置や個別スペースの確保が遅れると、より深刻な問題に発展する可能性もあるでしょう。
本記事では、避難所でプライバシーがないと感じる場面や、プライバシー対策について紹介します。
避難所でプライバシーがないと感じる場面

避難所生活において、プライバシーがないと感じる場面にはどのようなものがあるのでしょうか。多くの人が感じる場面について紹介します。
就寝時
避難所では、多くの人と同じ空間で寝泊まりする必要があります。パーテーションなどの仕切りがなく隣との距離が近いと、周囲の話し声や物音が気になってなかなか眠れないこともあるでしょう。
また、自分の寝顔や寝相を見られるのが恥ずかしいと感じる人も少なくありません。しっかりと休めないことで、体力の回復が遅れるほか、精神的にも疲弊する恐れがあります。
着替えや授乳時
着替える際、周囲に人が多い場合は目隠しがないと落ち着いて着替えられません。特に女性や子ども、授乳中の母親にとっては大きなストレスになるでしょう。
人目がある状況で思うように行動できない状況は、身体的にも心理的にも負担が大きくなります。
洗濯物を干すとき
下着などの洗濯物を外に干すとき、他人の目が気になって干しにくいと感じることがあります。プライバシーが守られていない環境では、衣類の扱い一つにも気を遣うほか、衛生的にも不安が残ってしまいます。
このような小さな気疲れが積み重なると、避難生活そのものが苦しいものになる可能性があるでしょう。
避難所でプライバシーを確保するための対策5つ

避難所生活で、プライバシーを確保するための方法を5つ紹介します。
1.仮設テントで個室を作る
災害時、避難所では多くの人が一斉に生活を始めるため、すぐに個室や更衣スペースを確保することは難しい場合があります。そのようなときに有効なのが、持ち運びや設営が簡単な仮設テントを利用するプライバシー対策です。
特に「ワンタッチテント」は、外から中が見えにくい構造や影が透けにくい素材で作られています。そのため、安心して着替えや授乳、簡易トイレの使用ができる空間を確保できるでしょう。女性や子ども、高齢者にとっては、こうしたプライベートな空間があるだけでも心の負担が大きく軽減されます。
また、家庭でも災害に備えて1つ用意しておくことで、避難所生活での不安やストレスに備えられます。テントは場所を選ばないほか、工夫次第で多目的に活用できるため、プライバシー対策として非常に心強い存在です。
2.車がある場合は車内で避難生活を送る
車がある場合は「車内での避難生活」も、避難所のプライバシー対策として有用な手段です。自家用車の中であれば、周囲の目を気にせず、家族だけの空間を保てます。防寒対策や換気をしっかり行えば快適な環境を維持しやすく、避難所で感じやすいストレスの軽減にもつながります。
また、車中泊は時間の制約を受けにくいため、授乳や就寝、ペットの世話などを自分たちのペースで行えるのも大きなメリットです。しかし、エコノミークラス症候群などの健康リスクもあるため、こまめな体のストレッチや換気、水分補給を心がけましょう。
3.ダンボールでパーテーションを作る
避難所での生活でダンボールがある場合は、簡単に作れる段ボールを使った即席のパーテーションも有用なプライバシー対策です。
準備する道具は、「厚手の段ボール」「カッター」「粘着テープ」です。段ボールを切り開き、それぞれの角を中心にして、左右の幅が同じになるように切ります。4つのダンボールを三角形に折り、テープで固定すれば土台が完成します。そこに別の段ボールを立てて差し込むことで、目隠し効果のある仕切りを作れます。
こうした簡易パーテーションがあれば、就寝時や着替えのときなど、人目を気にせず落ち着いて過ごせるでしょう。心身のストレスがかかりやすい避難所生活では、少しの工夫で気持ちが軽くなるプライバシー対策がおすすめです。
しかし、避難所では他の避難者とのスペース共有も重要です。設置する際には避難所の運営スタッフに相談し、周囲に配慮しながら使いましょう。
4.タオルケットや授乳ケープを用意する
避難所では多くの人が同じ空間で生活を送るため、プライベートを守るのが難しい場面が出てきます。特に女性や赤ちゃん連れの方にとっては、着替えや授乳などのちょっとした動作も周囲の視線が気になり、強いストレスの原因になることも少なくありません。
そのようなときに役立つのが、タオルケットや授乳ケープなどを使った避難所のプライバシー対策です。コンパクトに畳んで持ち運べて、必要なときにさっと広げて体を覆うことで簡易的に視線を遮れます。授乳時のケープはもちろん、タオルケットなら就寝時の目隠しや、仕切りとしても活用できる汎用性の高さが魅力です。さまざまな場面で活用できるプライバシー対策といえます。
非常用持ち出し袋に、タオルケットや授乳ケープを1枚入れておくだけでプライバシー対策できるという安心感から、避難所生活にゆとりが生まれるかもしれません。
5.個人情報は慎重に扱う
避難所生活が始まると、支援物資の配布や避難者の把握のために、名前や住所、電話番号などの個人情報を名簿に記入する場面があります。
災害時とはいえ、個人情報が不用意に晒されてしまうと、知られたくない情報が第三者に渡るほか、トラブルの原因になってしまう危険性もあります。個人情報を慎重に扱うことも、避難所生活において非常に重要なプライバシー対策です。
名前や住所を記載する場面においては、名簿への記載は必要最低限にとどめる、周囲から見えにくい場所で記入するなどのプライバシー対策が必要です。また、個人情報が記載された紙はむやみに貼り出さず、避難所の運営スタッフが適切に管理することも重要なポイントといえるでしょう。
災害時に個人情報を記入すること自体、不安に感じる方も少なくありません。しかし、最低限の個人情報は命を守ることにもつながります。周囲から見えないところで記入するなどプライバシーを守りつつ、個人情報を記載するようにしましょう。
避難所のプライバシー対策でストレスを減らそう
避難所での生活は、普段の暮らしとは大きく異なる環境に身を置くことになります。その中で、避難所でのプライバシー対策は心身の負担を和らげる大切な要素といえるでしょう。
仮設テントや車中泊、段ボールパーテーションなどの工夫に加え、タオルケットや授乳ケープの活用、個人情報の取り扱いに対する意識など、できる範囲でプライバシー対策を心がけて事前に備えておくことが安心につながります。
突然の災害時にも落ち着いて行動できるように避難所でのプライバシー対策を心がけ、自分や家族の安心を守りましょう。