瑞龍寺(ずいりゅうじ)とは?

富山県高岡市にある「瑞龍寺」は、加賀前田家の2代当主・前田利長の冥福を祈って、3代当主・前田利常によって建立された由緒ある寺院です。建立には約20年もの歳月がかけられ、加賀百万石の財力を背景に、壮大で優美な建物が築かれました。
「江戸初期の禅宗寺院建築の傑作」として国宝に指定された山門・仏殿・法堂をはじめとして、総門や禅堂、大庫裏などが重要文化財に登録されています。鉛の板で屋根を覆う「鉛板葺き」の屋根、檜や戸室石を用いた内部の装飾、仏殿を中心に左右対称に広がる回廊など、瑞龍寺にはたくさんの魅力があります。
境内に一歩足を踏み入れると、静けさと風格が漂い、実物でしか味わえない歴史の深さを感じられます。
瑞龍寺までのアクセス・拝観時間
高岡市の中心部にある瑞龍寺は、北陸新幹線「新高岡駅」と、あいの風とやま鉄道「高岡駅」のほぼ中間に位置しています。新高岡駅からは徒歩約15分、高岡駅南口(瑞龍寺口)からは徒歩約10分と、どちらの駅からもアクセス良好です。
公共交通機関を利用する場合は、加越能バスに乗り「瑞龍寺口」バス停で下車します。車の方には、約100台分の無料駐車場が用意されており、能越自動車道「高岡IC」から約10分、北陸自動車道「小杉IC」からは約15分で到着できます。
拝観時間は、9:00〜16:30(最終入場は16:00)です。冬季(12月10日〜1月31日)は16:00で閉門するため、注意しましょう。大人500円、中高生200円、小学生100円(2025年5月6日時点)で拝観でき、団体の場合は料金が異なります。
また、大晦日は22:00〜26:00まで、元日は8:00〜16:00まで、無料で参拝できます。
国宝に指定されている3つの場所
瑞龍寺には、国宝に認定されている場所が3つあります。それぞれの特徴について、くわしく紹介します。
山門

瑞龍寺の総門をくぐると、白い玉砂利が美しく広がる庭の奥に、ひときわ目を引く「山門(さんもん)」があります。高さ18mある二重門で、両脇には勇ましい金剛力士像、楼上には釈迦如来と十六羅漢が祀られています。
二重門の上の屋根は小さめに作られることが多いですが、瑞龍寺の山門は上下どちらの屋根もほぼ同じ大きさであるところが特徴。これは、雪が多い北陸ならではの工夫で、屋根からの落雪で下の屋根を壊さないように設計されたものだそうです。下から見上げると空に向かってそびえ立つような迫力があり、見る人々を圧倒します。
普段は立ち入れない山門の上階ですが、毎年11月初旬に行われる宝物展の期間中は特別に公開されます。天守閣のような回廊からは、高岡の街並みをゆったりと見渡せるところも魅力です。
仏殿

山門をくぐり、広がる芝生の小道をまっすぐ進むと「仏殿(ぶつでん)」があります。屋根は総重量47トンもの鉛瓦で作られており、太陽の光で白く輝く姿からは威厳を感じられます。屋根の鉛は、火縄銃の弾数に換算すると250万発にもなり、幕府に気づかれないよう鉛を備蓄するという戦略的な意味合いがあったともいわれています。
堂内には、瑞龍寺のご本尊である釈迦如来を中心に、知恵を表す「文殊菩薩(もんじゅぼさつ)」と、行いや慈悲を象徴する「普賢菩薩(ふげんぼさつ)」が設置されており、静かな空間に仏の気配があります。天井から下がる飾り布「天蓋」は、もともとはインドでお釈迦様を日差しから守る日傘が由来とされ、東洋の美意識を感じさせてくれます。
さらに、堂内に施された数々の木工細工からは、当時の職人たちの高い技術と美意識が感じられます。単に美しいだけではなく、重たい鉛の屋根と北陸の雪にもしっかり耐えられるように実用性も兼ね備えているところが特徴です。
法堂

瑞龍寺の「法堂」は、仏殿を抜けた先にあります。正面には、前田利長の巨大な位牌が設置されています。位牌には、利長の戒名「瑞龍院殿聖山英賢大居士」が記されており、この戒名が瑞龍寺の名前の由来なのだそうです。
法堂の天井には、幕府の御用絵師・狩野安信によって描かれた「四季の百花草」が描かれています。堂内の薄暗さと経年変化によって若干くすんでおり、見落としてしまいがちですが、法堂に足を運んだ際はぜひじっくりと上を見上げてみてください。
瑞龍寺の見どころポイント
瑞龍寺の中には、国宝以外にも多くの見どころがあります。中でも代表的な見どころを紹介します。
トイレの神様「木造烏枢沙摩明王立像」
瑞龍寺に伝わる最も古い仏像のひとつが、「木造烏枢沙摩明王立像(うすさまみょうおうりゅうぞう)」です。禅宗寺院では、東司(とうす)はトイレの守護神として信仰されることが多く、瑞龍寺でも特別な存在とされています。
室町時代以前に作られたとされており、左足を高く掲げて不浄を象徴する猪頭の亥子神を縛り上げるという、珍しくも力強い姿が特徴です。この姿には、「不浄を断ち、清らかな心と暮らしを保つ」という意味が込められています。
瑞龍寺では、烏枢沙摩明王のお札を受けることができます。お札を目よりも高い位置に貼り、トイレを丁寧に掃除することで、不浄が清められ、病気平癒や安産、子孫繁栄などのご利益があるといわれています。
東京大学の「赤門」を生み出した総門
瑞龍寺の入口に堂々と構える「総門」は、東京大学の「赤門」のモデルになっています。
江戸時代、現在の東大本郷キャンパスの地には加賀藩の江戸藩邸がありました。そこに建てられた正門は、瑞龍寺の総門の構造を参考に造られたといわれています。加賀百万石の威厳を象徴する門として造られたこの赤門は、今もなお東京大学のシンボルとして知られています。
春のライトアップ

瑞龍寺では、春の季節にあわせて「春のライトアップ」が開催されます。歴史ある建物が幻想的な光で照らし出され、昼間とは違う趣を楽しめる人気のイベントです。
2014年から始まった春のライトアップは、毎年テーマや演出を変えながら実施されてきました。以前はプロジェクションマッピングや門前市を含む形式で行われていましたが、2025年は「春の特別夜間拝観」として、光のアートによる静かで美しい演出が施されました。
年によって内容が変化することもあり、瑞龍寺の一大イベントとして訪れる人々を楽しませてくれています。
あえて未完成のままの瑞龍寺
瑞龍寺には、あえて未完成にされている部分が存在します。それは、山門をくぐったあと右手の回廊を進んだ先、左側の3つ目にある飾り金具です。一見すると気づきにくいですが、この金具だけ桐の花の模様が上下逆さまに取り付けられています。
「建物は完成と同時に衰退が始まる」という思想に基づき、あえて完璧を避け、一つだけ未完成の印を残したのだそうです。建築に携わった職人たちが、瑞龍寺が発展し続けるよう願いを込めたメッセージでもあります。
瑞龍寺周辺のおすすめスポット
瑞龍寺周辺にある、おすすめのスポットについて紹介します。
前田利長公墓所
瑞龍寺から徒歩約3分の場所には、加賀藩二代藩主・前田利長公の墓所があります。
その先に広がる小さな森の中には、高さ11.9mもある日本最大級の大名墓碑がそびえ立っています。巨大な石塔の基壇には、戸室石を使った約250平方メートルにもおよぶ三層構造が採用され、側面には狩野派の名匠・探幽が下絵を描いたという130枚もの蓮華図文様が美しく彫刻されています。
加賀百万石の威厳と、前田家の厚い信仰心がうかがえる壮大な墓所は、一目見る価値があるでしょう。
高岡大仏

高岡大仏は「銅器のまち」として知られている、高岡市が誇る存在の一つです。
市民の手によって1907年から制作が始まり、完成までには26年もの歳月が費やされました。地元の優れた技術が注ぎ込まれた姿は、美しさでも高く評価され「日本一のイケメン大仏」とも呼ばれているのだそう。高さ15.85m、重さ65トンを誇り、奈良・鎌倉と並ぶ「日本三大仏」の一つとして、多くの人々に親しまれています。
富山が誇る、江戸初期の最高傑作「瑞龍寺」
今回は、富山が誇る瑞龍寺について紹介しました。
富山県高岡市にある瑞龍寺は、江戸時代初期に建てられた歴史ある寺院です。国宝に指定されている山門・仏殿・法堂をはじめとして、ほかにも見どころがたくさんあります。丁寧に作られた細部の装飾や、あえて未完成にしてある部分など、職人たちの想いも感じられる場所です。
歴史好きや建物好きはもちろん、歴史についてくわしくない方でも十分に楽しめる場所です。富山に訪れた際は、瑞龍寺にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
住所 | 富山県高岡市関本町35 |
アクセス | 【車】・能越道「高岡IC」より約10分・北陸道「小杉IC」より約15分・北陸道「砺波IC」より約25分 【電車】・あいの風鉄道「高岡駅」より徒歩10分・北陸新幹線「新高岡駅」より徒歩15分 |
公式サイト | https://www.zuiryuji.jp/ |
拝観時間 | 9:00〜16:30(最終入場は16:00) 冬季(12月10日〜1月31日)は16:00で閉門 |
料金(2025年5月6日(火)時点) | 大人500円(団体400円) 中高生200円(団体150円) 小学生100円(団体70円) ※大晦日は22:00〜26:00まで、元日は8:00〜16:00まで無料で参拝可 |
問合せ先 | 0766-22-0179 |
駐車場 | あり(無料) 普通車約100台、バス13台 |