がんと診断されたとき、治療のことだけでなく、お金や仕事、家族への伝え方など、さまざまな不安を抱える方は少なくありません。
富山県立中央病院1階にある「がん相談支援センター(こもれび)」では、そうした悩みや不安について、無料・匿名で相談することができます。
予約は不要で、患者さん本人だけでなく、ご家族や周囲の方の利用も可能です。がんを告知されているかどうかに関わらず、身体のちょっとした症状についても相談ができます。
年間およそ2,000件の相談に向き合う相談員の皆さんに、センターが担う役割や相談内容、日々どのような思いで相談者と向き合っているのかを伺いました。
がん相談支援センター「こもれび」で相談できること

──がん相談支援センターはどういった場所ですか?
大きな役割は二つあります。
①がんを患った方の相談にのること
②がんに関する正しい情報を提供すること
インターネットで何でも調べられる時代ですが、情報に溺れてしまい、正しい情報が分からなくなってしまう方は少なくありません。「こもれび」では、相談員が対面でじっくりとお話を聞くことで、患者さんが本当に知りたいことが整理され、必要な情報へとたどり着けるよう手助けをしています。

──どういった相談内容がありますか?
年間約2,000件の相談に対応していますが、その内容は多岐にわたります。
・がん治療に関すること
・副作用のこと
・不安や辛さなどの精神的症状のこと
・治療と社会生活の両立に関する悩み
・治療にかかる費用や手当など経済的なこと
・医療者とのコミュニケーション
・脱毛、外見の変化に関する悩み
・家族や職場への病気の伝え方
医学的な面だけでなく、社会的なことや心理的なことすべてを支え、患者さんが安心して治療を続けられる土台となる場所を目指しています。

──特に相談の多い内容は?
がんの治療に関する相談です。治療方法やその選択、副作用、病状への不安などさまざまな相談があります。
・どういう治療がいいのか決められない
・治療のあと、食事がおいしく食べられなくなった
・いつまで治療が続くのか
・治療費はどのくらいかかるのか
また、がんやその治療に伴う外見の変化に起因する患者さんの苦痛を軽減する「アピアランスケア」も行っています。

──「アピアランスケア」というのは、具体的にどんな相談ですか。
がんやがんの治療でおこる外見的な変化に対応するケアのことです。外見の変化による苦痛や不安を少しでも和らげ、自分らしく日々の生活を送れるようにしています
・脱毛した際の帽子やウィッグの選び方
・脱毛した際の頭皮ケア
・ヘアカラーやパーマについて
・爪の変色や割れへの対処法
・乳房補正具について
・眉毛の描き方などメイクの仕方

個別相談のほか、毎月1回、専門業者の方々にも参加していただき、「アピアランスケア相談会」を開催しています。
がんの治療で髪が抜けると言われ、「仕事に行きたいのだけど、どうしよう」「友だちに会えなくなるのかも」と不安な気持ちでいっぱいになっても、ウィッグについて知ることや、試着してみることで、安心されたり前向きな気持ちになれたりする方もいらっしゃいます。
──ウィッグには助成金があるんですよね?
はい。がん治療に伴う外見の変化を補完する、ウィッグ・乳房補正具等の購入費用を一部助成してくれる制度があるんです。どの窓口に行けばいいか、助成金を申請するための書類の書き方が分からないとおっしゃることも多く、そういった内容のサポートもしています。
誰でも、匿名で、無料で相談できる窓口
──相談できるのは、患者本人だけですか?
いいえ、当院で治療中かどうか、また、がんの診断を受けているかどうかに関わらず、どなたでもご利用いただけます。患者さんご本人だけでなく、ご家族やご友人の方からの相談も受けています。
最近では、ご家族の姿が多様化していることもあり、さまざまな方が相談に来られます。ご家族自身の悩みや困りごとにも対応しています。

──名前や病名を言わなくてもいいのでしょうか。
はい、匿名でも大丈夫です。お名前も病名も言わずに相談いただけます。一般的な内容であればそれで十分ですし、個別の相談のときは言っていただいたほうが対応しやすいこともあります。基本的にここでお話しした内容は他の方に知られることはありませんし、カルテにも載りません。
そのため、誰にも聞けなかった疑問や感情的な部分も気兼ねなくお話いただけます。
──費用はかかりますか?予約はいるのでしょうか。
無料です。直接がん相談支援センター「こもれび」にきて相談するほか、電話でのご相談も受けていますが、どちらも費用は一切かかりません。
予約も不要です。受診の帰りにふらっと立ち寄る、リピーターの方も多いです。院内では比較的入口近くにあるため立ち寄りやすいというお声もありますが、もちろん周囲の目を気にせず話せる個室も用意しています。


専門スタッフが連携して支える、安心の相談体制
──どんなスタッフさんが相談にのってくれますか?
まずは、看護師と社会福祉士が窓口となってご相談を受けます。相談内容に応じて、医師や専門の看護師、管理栄養士、薬剤師などに相談をしながら対応します。
例えば、どんな食事をしたらよいか、手術のあと、体重が戻らないなどの相談には、管理栄養士からより詳しいアドバイスをもらうこともできます。
富山県立中央病院では各分野の専門家が多く在籍しているからこそ、多岐にわたる相談内容にも柔軟に対応することができるんです。

がん相談支援センターには7名の相談員が在籍しており、富山県立中央病院内にはがん相談員の研修を修了したスタッフが16名います。
研修は国立がん研究センターが実施しているもので、コミュニケーションスキルから、各がんの病態と治療法・がんの予防と検診・在宅医療など多岐にわたる内容が含まれています。
さらに、がん相談支援の資質向上のための研修を企画できる「指導者」資格を持つスタッフが4名在籍しています。これはかなり充実した体制だと思っています。
──他の病院との連携もあるのでしょうか。
はい。富山・石川・福井の3県合同で毎年フォーラムを開催しています。昨年は「災害時に備えたがん相談」、一昨年は「アピアランスケア」をテーマとして学びを深め、それを通じて顔の見える関係づくりにもなっています。
他の病院からご相談いただくこともあり、県を超えて相談できるネットワークが整っています。
患者サロンや教室など、さまざまな支えの場づくり
──センターでは個別相談以外にも活動されているとのことですね。
はい。先ほどのアピアランスケア教室のほかにも、様々な場を用意しています。

📝こもれび教室
リハビリテーション、治療中に利用できる制度、在宅療養など、がんに関することを学ぶ教室です。
👨👩👧👦患者サロン「ゆるり」
同じ境遇の患者さん同士が自由に集まり、日常生活の悩みや何気ない会話を共有しています。
🍃ピアサポーターによる患者サロン「ほのぼの」
富山県がん総合相談支援センターで養成されたピアサポーターさん(がんを経験した先輩患者さん)が加わります。意図的に関わってもらうことで、語り合う場をより丁寧に整えています。
がんに関する書籍📚の貸し出しもしています。
“安心して治療を続けられる”土台であるために
──相談員としてどのようなところにやりがいを感じますか?
有澤さん:一度関わった患者さんが次に来てくれたとき、「前に教えてもらってこうしたよ」と言ってくださるときは、ここでの相談が次の何かに繋がっていると実感できて、「やってよかった」と思います。
敦賀さん:迷っていた患者さんが自分で納得して意思決定できた、というときも「少しサポートできたならよかった」と感じます。
荒井さん:私自身は、医師や看護師さんとは違う立場で、患者さんに寄り添う側でいるという思いがモチベーションの基本にあると思います。




「こもれび」には年間およそ2,000件の相談が寄せられており、そのうち約3~4割が新規の患者さんになります。一方で、富山県立中央病院では、それを上回る数の方が毎年新たにがんと診断されています。
不安や悩みを抱えながらも、「どこに相談したらいいか分からない」「相談するほどではないと思っていた」と、一人で抱え込んでいる方もまだ多いのかもしれません。
告知されたばかりで頭が真っ白な方、治療の副作用に戸惑っている方、あるいは周りにそういう人がいるという方。
「こもれび」は、そうした気持ちに「不安だったんですね」と寄り添いながら、患者さんが納得して意思決定できるよう、必要な情報を整理してサポートしてくれる場所です。
まずは立ち寄ってみる——その一歩が、気持ちを少し軽くしてくれるかもしれません。
| 施設名 | 富山県立中央病院がん相談支援センター「こもれび」 |
| 受付時間 | 月曜~金曜日(祝・祭日を除く) 9:00~16:00 |
| 相談方法 | 面談 電話相談 |
| 相談費用 | 無料 |
| 電話番号 | 076-424-1531 |
| 公式サイト | https://www.tch.pref.toyama.jp/guide/kangogairai/cancer/ |