家族での防災会議が必要な理由
災害が起きたとき、もっとも重要なのは「自分と家族の命を守ること」です。しかし、いざというときに家族が別々の場所にいる可能性もゼロではありません。その際、「どのように連絡を取るか」「どこに避難するか」が決まっていなければ、混乱して行動が遅れてしまうでしょう。
そこで重要なのが「家族間での防災会議」です。あらかじめ家族で話し合い、災害時の行動ルールを共有しておくことで、もしもの事態が起きた時も落ち着いて行動できます。お互いの安否確認や避難も、スムーズに進められるでしょう。
また、小さな子どもや高齢者がいる家族、ペットを飼っている家族、共働き家庭で日中は誰も家にいない家族など、背景によって必要な対策も変わってきます。そのため、一律のマニュアルではなく、各々の家庭に合わせた備えが不可欠といえるでしょう。
家族との防災会議で話すべき内容6つ
家族との防災会議では、必ず話し合っておきたい項目がいくつかあります。中でも重要な内容を6つ紹介します。
1.災害備蓄品の保管場所・動作確認
防災会議ではまず、災害備蓄品の保管場所を家族全員で共有しておくことが重要です。
災害が起きた後、備蓄品の場所がわからずに慌てて探すような状況は避けたいものです。大人だけでなく、子どもでも取り出せるように保管場所を決め、実際に取りに行く練習をしておくと安心できるでしょう。
また、懐中電灯やランタン、ラジオなどの防災グッズが正常に動くかどうかのチェックもしましょう。子どもがいる場合、機器の使い方を一緒に確認することもおすすめです。
もしもの時に備え、備蓄品の「場所」「中身」「使い方」をしっかり家族で共有しておくことが命を守る行動につながります。
2.避難場所・避難経路の確認
家族間での防災会議では、災害時に集合する避難場所と、経路の確認が欠かせません。
地震や水害が発生したとき、通信手段が使えない可能性もゼロではありません。事前に集合場所を決めておくことで、離れた場所にいてもスムーズに合流しやすくなります。
国土交通省が公開している「ハザードマップポータルサイト」では、全国のハザードマップを確認できます。自治体もハザードマップを配布・Web公開しているため、家族での防災会議で今一度確認しましょう。
また、避難所までのルートを実際に歩いて確認することも重要です。地図だけでなく、実際に歩くことで災害時のイメージがつくほか、現地ならではの危険ポイントが見えてきます。特に子どもや高齢の家族がいる場合は、負担の少ないルートを一緒に考えておくと安心できるでしょう。
3.緊急連絡先の共有
大規模な災害が発生すると、スマホなどの通信機器が使えなくなり、連絡が取れないケースも珍しくありません。
このようなとき重要になるのが、緊急連絡先の共有と一覧化です。家族全員が把握しておくべき連絡先をまとめた「連絡先メモ」を用意し、紙に書いて家の目立つ場所に貼る、防災ポーチに入れておくと、日頃から意識して生活できます。通信手段が制限された中でも、近くにいる第三者に助けを求められるでしょう。
具体的には、自宅の固定電話番号・家族それぞれの携帯電話番号・勤務先や学校の連絡先・離れて暮らす祖父母や親戚などの記載がおすすめです。
4.災害時に危険な自宅箇所の確認
もしものとき、自宅が必ず安全を守る場所であるとは限りません。大地震などが発生した際、家の中の危険ポイントを事前に把握しておくことが重要です。
災害が起きたとき、自宅でどのような危険があるかを家族で話し合ってみましょう。例としては、棚が倒れる、高い場所にある重い物が落下する、固定されていない家具が倒れて下敷きになるなどがあります。
具体的なリスクを想定したうえで、家の中を実際に見て回り、危険な箇所をチェックしましょう。気になる箇所を見つけた際は、すぐに固定または移動させることで安心につながります。
5.中継地点にする連絡先の選定
災害が発生した直後は、被災地内の通信状況が混雑し、被災地にいる家族同士では連絡が取りづらくなることがあります。
そのため、遠方に住む家族や知人、親戚を中継地点として設定する「三角連絡法」を活用しましょう。三角連絡法とは、被災地にいる家族がそれぞれ、共通の中継者に安否や状況を伝え合う方法です。
事前に本人から許可を取ったうえで、中継役をお願いする方を2〜3人決めておきます。優先順位もつけておくと、よりスムーズに連絡が回るでしょう。中継地点となる人の名前・電話番号は家族全員がメモにして持ち歩くことをおすすめします。
中継役の連絡先は、スマホが使えない状況も想定して紙ベースで残しておくと安心です。
6.メモを残す場所を決める
災害時、家族が必ず一緒に避難できるとは限りません。くわえて、電話やSNSでの連絡がつかないケースも想定する必要があります。そのようなときに備えておきたいのが、メモの活用です。
玄関ドアの内側、冷蔵庫、下駄箱の扉の裏など、家族内でメモを残す場所を決めておくことで、災害時に通信機器が使えない場合でも不安が軽減します。メモを残す場所は、誰が帰ってきても見つけやすい所にしておきましょう。
もしもの時でも、定位置にメモがあるという共通認識があるだけで、家族の不安や心配を和らげる大きな手助けになります。
家族との防災会議で気をつけるべきポイント
家族と防災会議を開く際には、気をつけたいポイントがあります。中でも重要な家族防災会議のポイントについて紹介します。
全員が集まっているときに話す
防災会議は、できるだけ家族全員で実施することが基本です。誰かひとりでも抜けてしまうと、話の内容がうまく伝わらず、誤解が生まれる可能性があります。特に子どもや高齢者がいる家庭では、それぞれの理解度や不安に寄り添いながら進めることがポイントです。
都合が合わない場合は、日程の再調整やビデオ通話を活用するなど、全員で情報を共有する方法を検討しましょう。
内容は具体的に決める
家族間の防災会議は「何かあったら避難しよう」「スマホで連絡取り合おう」など、あいまいな話し合いでは意味がありません。家族の防災会議では、細かく行動をイメージできるよう具体的に決めることが重要です。
避難場所、役割分担、連絡が取れない場合の対処法など、それぞれの行動手順を明確にしておくことで、いざという時の判断に迷いが少なくなります。メモや図を使って視覚的に共有するのもおすすめです。
年1回以上は見直しをする
防災に関する情報や家族の状況は、子どもの成長や引っ越しなど、時間の経過とともに変化していきます。防災会議は一度話し合って終わりではなく、定期的に見直すことがポイントです。
毎年防災の日(9月1日)に開催するなど、日付を決めておくと忘れないためおすすめです。備蓄品の使用期限や、避難経路を再確認することで、日常的に一人ひとりの防災意識が保たれやすくなるでしょう。
もしもの場合に備えて、家族で防災会議をしよう
地震や台風などの自然災害は、いつ起きるかわかりません。災害時に家族が別々の場所にいた場合、どのように連絡を取り、どこで合流するのかという行動を事前に決めておくことが、非常時の安心につながります。
また、家族防災会議で一度決めた内容も、定期的に見直すことがポイントです。生活環境の変化や新しい情報に合わせて、話し合いの内容を更新していきましょう。家族間での定期的な防災会議が、自分と家族を守ります。