地震大国・日本に住んでいる以上、地震による被害を避けることはできません。しかし、何かあってから「保険に入っていればよかった」と後悔しても、時既に遅しで手の打ちようがなくなってしまいます。そうならないためにも、万が一のために加入しておきたいのが地震保険です。地震保険がどのようなもので、加入にあたって知っておきたいポイントをまとめてお伝えしていきます。
地震保険とは?
地震保険とは、地震や噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失などの損害に対して保険金が支払われる保険です。地震保険は、過去の大きな20の地震において2,113,401件※もの支払契約件数があります。
※地震保険制度発足以来、再保険金の支払額が多かった上位20地震等の支払契約件数。(出典:日本地震再保険株式会社調べ。2023年3月31日現在)
地震保険によって支払われた保険金の使用用途は限定的ではなく、住居の修理費に充てることはもちろん、生活再建のあらゆることに利用できます。ただし、地震保険は単独での契約はできません。必ず火災保険とセットで契約する必要があるので注意しましょう。契約中の火災保険と合わせて地震保険を契約していなくても、途中からの契約も可能です。火災保険を契約している損害保険会社、または損害保険代理店に問い合わせてみましょう。
地震保険の保険料
地震保険の保険料は、保険対象となる居住用建物や家財を収容する建物の構造と所在地により算出されます。保険期間は1年間の短期契約および2年間〜5年間の長期契約です。長期契約の保険料については、長期係数を乗じて算出されます。
期間 | 係数 |
2年 | 1.90 |
3年 | 2.85 |
4年 | 3.75 |
5年 | 4.70 |
https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm#5
地震保険と地震共済の違いとは
そもそも共済とはお互いに助け合うという意味の言葉で、組合員が将来発生するかもしれない損害に備えてお金を出し合い、万が一の際に出し合ったお金から共済金を支払う相互扶助の仕組みです。
政府と民間の保険会社が共同して運営する地震保険と違い、地震共済は地震保険と同様の運営のものとそれぞれの共済で独自に運営しているものがあります。つまり保障範囲、保障内容、掛金などが加入する共済によって異なります。
地震保険の補償内容
実際に地震保険の補償を受けたいときに、どんな内容を補償してもらえるのか気になりますよね。
地震保険は「建物・家財」「建物」「家財」の3つそれぞれの損害程度に応じて保険金の支払額が定められます。それぞれチェックしていきましょう。
保険金の支払い
平成29年1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合、保険の対象である居住用建物または家財が全損・大半損・小半損・一部損となったときに分類に応じて保険金が支払われます。なお、平成28年以前が保険始期の地震保険契約の場合は全損・半損・一部損となったときに分類に応じて保険金の額が定められます。
〈建物・家財〉
平成28年以前保険始期 | 平成29年以降保険始期 | ||
全損 | 地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) | 全損 | 地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) |
半損 | 地震保険の保険金額の50% (時価額の50%が限度) | 大半損 | 地震保険の保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
小半損 | 地震保険の保険金額の30% (時価額の30%が限度) | ||
一部損 | 地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) | 一部損 | 地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
・全損、大半損、小半損、一部損の基準
〈建物〉
平成28年以前保険始期 | 平成29年以降保険始期 | 基準 |
全損 | 全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部の損害額が時価額の50%以上となった場合焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 |
半損 | 大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部の損害額が時価額の40%以上50%未満となった場合焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部の損害額が時価額の20%以上40%未満となった場合焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 | |
一部損 | 一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部の損害額が時価額の3%以上20%未満となった場合建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損・一部損に至らない場合 |
〈家財〉
平成28年以前保険始期 | 平成29年以降保険始期 | 基準 |
全損 | 全損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
半損 | 大半損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合 | |
一部損 | 一部損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm#4
地震保険における「建物」の補償
地震保険における補償対象の建物とは、専用住宅や併用住宅などの住居部分のある建物を指します。そのため、建物自体には損害がなく、門・塀・垣のみに損害があった場合は、保険金の支払い対象にはなりません。
【参考】損保ジャパン:地震保険
https://faq.sompo-japan.jp/sumai/faq_detail.html?id=80329
地震保険における「家財」の補償
地震保険における補償対象の家財とは、物置、車庫、その他の付属建物などの居住用建物に収容されている家財一式を指します。ただし、以下のものについては地震保険の対象外となります。
- 通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手など
- 自動車
- 価額が30万円を超える貴金属、宝石や書画、彫刻物などの美術品
- 稿本、設計書、図案、証書、帳簿など
地震保険の総支払限度額
地震保険の1回の地震で政府が支払う総支払限度額は、毎年度国会の議決にて定められる金額を超えない範囲内のものでなくてはならないとされています。現在議決された総支払限度額は11兆6,586億円であり、民間保険責任額と合計する1回の地震等による保険金の総支払限度額は12兆円となります。
地震保険の保険金が支払われないケース
地震保険といっても、地震で生じたすべての損害に対して保険金が支払われるわけではありません。中には地震で被害が出ているのにもかかわらず、保険金が支払われないケースもあります。そんなときに「なぜ保険金が下りないのか?」と焦ってしまわないよう、どのような場合に地震保険の保険金が支払われないのかをチェックしていきましょう。
保険の対象の紛失または盗難によって生じた損害
保険金の対象となるものが紛失または盗難によって生じた損害については、地震保険の保険金は支払われません。
皮肉な話ではありますが、災害時は生活が苦しい人が増えるなど、通常の精神状態ではないことから盗難が起きやすくなります。また、パニック状態の中では、紛失物が増えてしまうのも、イメージできるでしょう。
ただし、これが地震そのものによって無くなったわけではなく、紛失や盗難によるものの場合には保険金が支払われる対象にならないことを理解しておきましょう。
門・塀・垣のみに生じた損害
門・塀・垣のみに生じた損害については、地震保険の保険金は支払われません。地震保険の保険金の支払いの有無や金額については、地震による軸組、基礎、屋根、外壁などの建物の主要構造部の損害がどの程度なのかによって定められます。門・塀・垣などは建物の主要構造部ではないため、これらが壊れた場合には地震保険の保険金が下りる対象にはならないのです。
地震保険の保険金の支払対象はあくまで居住用建物と生活用家財に限られることを十分に理解しておきましょう。
地震等が発生した日の翌日から10日が経過して生じた損害
地震が発生した日の翌日より10日が経過してから生じた損害については、地震保険の保険金は支払われません。災害に遭い「どのタイミングで生じた損害か管理している余裕はない!」と思う方は多いでしょう。ただし、損害が生じた日が1日違うだけでも保険金の支払いの有無は影響されてしまうのが実情です。
ただし、地震発生時より72時間以内に発生した余震は1つの地震とカウントされます。地震が発生した後の余震によって被害が拡大するケースが多く発生しています。最初の地震では一部損害だったものが、2回目の地震で全壊といったケースも少なくはありません。そのため最初の地震発生時より72時間以内に余震があれば、それは何回発生したとしても1つの地震としてカウントされます。
最初の地震から11日経ってしまっていて保険金支払いがなくなると落ち込んでいたとしても、72時間以内に余震があればそこから11日カウントし始められます。この1日の違いは大きいので、損害が生じた11日以内に余震があったかどうかは調べておくと保険金をもらえる可能性がアップします。
詳細:日本損害保険協会 損害保険Q&A
https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/q062.html
損害の程度が⼀部損に至らない損害
地震による損害の程度が一部損にならないほどの損害の場合には、地震保険の保険金は支払われません。
一部損で補償対象となるのは建物の損害が主要構造部の3%以上、家財の損害が家財全体の10%以上であるため、この基準に満たない軽微な損害は保険金支払いの対象外となります。
地震保険の補償についてのよくある質問
地震の多い日本では、地震保険への加入を検討する方もいるでしょう。大きな地震による被害を何度もテレビや新聞で見たり、実際に体験したりしていると、地震保険に加入したほうがよいのだろうかと考える方もいると思います。
そんな方のために、地震保険の補償について、よくある4つの質問に答えていきます。少しでも地震保険に対する不安がなくなるよう、注意してチェックしてみてください。
Q:地震による損害は火災保険で補償される?
いいえ、火災保険では地震による損害は補償されません。たとえ損害が火災によるものであったとしても、火災が地震による噴火や津波を原因とする場合については火災保険の対象外です。
火災損害と一言にいってもその原因に着目して補償の可否が決まります。そのため、リスクに備えて火災保険とは別に地震保険への加入をおすすめしています。
Q:隣の家が地震で火災になり、燃え移って起きた損害は火災保険の補償対象になる?
いいえ、隣の家からの燃え移りによる火災損害であったとしても、そもそもの火災の原因が地震である場合には火災保険では補償されません。地震保険に火災保険とセットで加入している場合、損害は地震保険で補償されます。保険金は保険対象となる建物や家財に生じた損害の程度により、地震保険金額の一定割合が支払われます。ただし損害の程度が一定の基準に満たない場合、保険金は支払われません。
Q:地震保険は、なぜ火災保険の保険金額の50%までしか契約できない?
地震は発生の予測ができません。また、地震が発生した場合の被害は広域にわたるケースが多く、損害額も巨大になります。損害保険会社の担保力や国の財政にも限度があることから、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の50%までの契約と制限が設けられているのです。
Q:損害箇所の修理費用の実費を保険金として受け取れる?
いいえ、そもそも地震保険の保険金は実際の修理費を支払うためのお金ではありません。保険金の支払いを迅速に確保するために、建物や家財の損傷状況を全損・大半損・小半損・一部損の4つのどれに当てはまるかの認定が行われ、それぞれの区分に応じて保険金が支払われます。
地震保険の保険金の使用用途は修理費用に限定されていません。そのため、必要であれば生活再建のための経費として利用することも可能です。
地震が多い地域在住であれば保険の検討を!
地震大国と呼ばれる日本に住んでいる限り、地震による被害は自分事として考えるのが賢明です。その中でも特に地震が多いとされる地域に住んでいるのであれば、尚のことです。補償できる範囲に注意が必要ではあるものの、損害が出てから「保険に入っていればよかった!」と後悔してしまう前に、地震保険への加入を検討してみてください。万が一のときに備え、安心できる暮らしを手にしましょう。
昭和34年11月に発足し、事業や車、人など多種目の共済事業を運営する県内唯一の共済組合である「富山県火災共済協同組合」は、営利を目的とせず、組合員による直接奉仕の形態をとりつつ、保険会社と同じ基準で運営されています。富山県火災共済協同組合の所得補償共済では、企業の役員や従業員が病気やケガで就業不能となった時の、所得を補償する制度があります。事業をされている方においてはこちらもおすすめです。