手術だけではない。中央病院が考える「高度医療」
富山県立中央病院は、地域の医療機関から紹介された患者さんを受け入れ、詳しい検査や専門的な治療を行う病院です。
「高度医療」と聞くと、難しい手術や最新の医療機器を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、中央病院の加治院長は、高度医療はそれだけではないと話します。

診断や相談支援も、高度医療の一部
「高度医療というと、難しい器具を使った手術をイメージされるかもしれません。もちろん、当院が導入している手術支援ロボット『ダヴィンチ』もその一つです。しかし、それだけではありません。診断の段階では、通常では見つけにくい小さな病変も発見できるようなCTやMRIを備えています。診断の精度を高めることも、高度医療の大切な役割です」
加治院長は、消化器外科、特に胃がんを専門としてきました。がん治療に向き合う原点には、医学生時代に胃がんで祖母を亡くした経験があったといいます。
「当時は、がんの末期患者さんに対する緩和ケアが今ほど進んでいませんでした。意識のない祖母が人工呼吸器につながれている姿を見て、『がんの末期はこんなにも大変なのか』と衝撃を受けました」
病気そのものだけでなく、治療に向き合う患者さんの不安にも目を向ける。その考えは、中央病院の現在の体制にもつながっています。
「入退院支援センターやがん相談支援センターといった窓口があります。医師や看護師には直接言いにくい不安や悩みを相談できる場所です。患者さんの精神的なフォローも、私たちが考える高度医療の大切な一部です」


中央病院は、手術や専門的な治療が必要な患者さんを受け入れる一方で、状態が落ち着いた後は、地域のかかりつけ医とも連携しながら診療をつないでいきます。加治院長は、その役割についてこう話します。
「中央病院はかかりつけ医にはなれません。地域全体が一つの病院のように機能し、それぞれの役割を分担しながら患者さんを診ていく。そんな連携を目指しています」
狭い場所でも細かな操作を支える手術支援ロボット「ダヴィンチ」

中央病院が提供する高度医療の具体例の一つが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いたロボット支援手術です。
「ロボットが自動で手術する」と誤解されることもありますが、そうではありません。ダヴィンチは、医師の操作を支援する装置です。
ダヴィンチを使うことで、手術において次のようなメリットがあります。
・ 手ぶれを抑え、安定した操作がしやすい
・ 患部に最短2センチまで寄れるカメラで、細かな神経や組織を確認しやすい
・ 540度回転する手術器具により、骨盤の中や食道など、狭くて深い場所でも細かな操作がしやすい

「人間の手はどうしても少し震えてしまいますが、ダヴィンチではその手ぶれが吸収されます。実際に患者さんの体内で動く器具の先端には、手ぶれが伝わりません。また、カメラを近くまで寄せることで、細かな神経まで見えるようになります」


手元のコントローラーと足元のペダルを使ったダヴィンチの操作について説明する産婦人科の谷村先生
産婦人科の谷村先生も、ロボットアームの先端についた手術器具の動きの細かさをメリットに挙げます。

「人間の手首は360度も回転しませんが、ダヴィンチの器具は540度、つまり1回転半まで回すことができます。人の手では難しい角度にも動かせるため、体の奥深く、狭い場所でも細かな操作がしやすくなります」
中央病院にはダヴィンチが2台あり、泌尿器科、外科、産婦人科、呼吸器外科の4つの科で活用されています。ダヴィンチ手術の件数は年々増えており、2025年は400件近くにのぼりました。産婦人科領域では、全国から学びに来る医師もいるといいます。
ただし、すべての手術がダヴィンチで行われるわけではありません。患者さんの病状や体の状態、手術する場所などに合わせて、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の中から、その人に合った方法を検討します。
大切なのは、「ロボットを使うこと」そのものではなく、患者さん一人ひとりに合った手術を選ぶことです。
手術室で患者さんを支える、専門スタッフたち

中央病院の4階にある中央手術室は、15の手術室を備えています。2025年に行われた手術の件数は約7,800件。1日に30件から40件の手術が行われる日もあります。
手術室を訪れると、スタッフの方々の明るく、頼もしい雰囲気が印象的でした。
ダヴィンチの手術一つをとっても、執刀医のほか、介助の医師、麻酔科医、看護師、ロボットを管理する臨床工学技士など、多くの専門スタッフが関わっています。
手術看護科長の水口さんは、患者さんが眠っている間の看護の重要性を語ります。

「手術中は、患者さんご自身は体の不快を訴えることができません。私たちは患者さんの代弁者です。長時間同じ体勢でいると床ずれができたり、神経が圧迫されてしびれが残ったりすることがあります。そうならないよう、クッションを挟んだり、体勢を確認したりして、見えないところで細やかなケアを続けています」
患者さんを「待つ」から「迎える」へ
手術室は、多くの患者さんにとって「初めての場所」です。不安や緊張を抱えて入ってくる方も少なくありません。泣きながら来られる方や、表情がこわばっている方もいるといいます。

手術室のスタッフは、そんな患者さんの心を少しでも和らげるため、声のかけ方や迎え方を大切にしています。
「手術室の看護師というと、どこか冷たくて、テキパキしているイメージがあるかもしれません。でも、私たちは患者さんに寄り添い、意外と温かいんだな、と感じてもらえたら嬉しいです」と水口さん。
「患者さんが自分の母親や父親だったら、自分の娘や息子だったら、どう接するだろうと考えます。自分の身内だと思って、寄り添うことを心がけています」
温かいタオルと、やさしい声かけで「迎える」
手術室の前に到着した患者さんに対して、少しでも安心してもらうため、次のように接することを意識しています。
- 手術室の外まで出て迎える
- 目線を合わせて自己紹介する
- やさしく声をかけ、寄り添う
- 温めた「ホットバスタオル」をかけ、緊張を和らげる
実際に体験させてもらうと、タオルのじんわりとした温かさと声かけに、少し心が落ち着くのを感じました。

「ああ、温かいね」と言って、表情が和らぐ患者さんも多いそうです。
手術室に入るまでのわずかな時間。その最初の出会いを大切にする姿勢が、患者さんの不安に寄り添う看護につながっています。
不安な手術の日に、そばで支えてくれる人がいる
手術は、患者さんにとって大きな不安を伴う出来事です。
だからこそ、富山県立中央病院では、ダヴィンチのような医療機器を整えるだけでなく、手術室に入るその瞬間から、患者さんの心に寄り添う関わりを大切にしています。
一人ひとりに合った治療を考え、不安な気持ちにも寄り添ってくれる人たちがいる。それを知っておくだけでも、少し安心できるかもしれません。
| 施設名 | 富山県立中央病院 |
| 住所 | 富山県富山市西長江2丁目2番78号 |
| 公式サイト | https://www.tch.pref.toyama.jp/ |
| 初診受付 | 地域連携予約ありの場合/午前8時30分〜午前11時00分 地域連携予約なしの場合/午前9時00分〜午前11時00分 |
| 再診受付 | 予約ありの場合/午前7時30分〜予約時間まで 予約なしの場合/午前9時00分〜午前11時00分 |
| 休診日 | 土・日・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日) ※ゴールデンウィーク、お盆等の平日は通常どおり |