富山県立中央病院「遺伝診療科」とは?自分と家族の未来を考える「遺伝」のこと

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親族にがんが多いので、自分もがんになるのだろうか。
自分の症状や病気が、子どもにも遺伝するのだろうか。

そんなふうに感じたことはありませんか?

「遺伝」と聞くとどこか難しく、自分にはあまり関係がないと思う方もいるかもしれません。しかし、私たちの体質や病気のなりやすさには、遺伝子が何らかのかたちで関わっています。

富山県立中央病院には、遺伝に関する相談や遺伝子検査についてのカウンセリングに対応する「遺伝診療科」があります。

今回は、富山県立中央病院「遺伝診療科」の役割や遺伝子検査で分かること、そして遺伝カウンセリングの現場で患者さんと向き合うスタッフの思いについてお話を伺いました。

遺伝に関する相談・理解・選択を支える「遺伝診療科」

──遺伝診療科とはどんな役割をもった診療科ですか?

遺伝子に関わる医療について、患者さんと担当医の間を取り持つ「橋渡し」のような役割を担っています。

ほとんどの病気は、何らかの形で遺伝子と関係があります。しかし、医学部の教育で遺伝子を専門的に扱う機会はこれまで少なく、各科の医師が遺伝子について深く精通しているわけではありませんでした。

一方で、患者さんも「遺伝」という言葉に拒否反応を示されたり、馴染みがなかったりすることがあります。

詳しくない者同士で話をしても、なかなか理解が深まらない。そうした状況を解消し、双方の理解を助けるために、遺伝診療科は生まれました。

遺伝診療部長の八田先生
臨床遺伝専門医の資格を持つ「遺伝医療」のスペシャリスト

──比較的新しい診療科なのですね?

はい、県中に開設されたのは2020年です。大学病院などでは設置が進んでおり、富山市内で独立した科として存在するのは、大学病院と当院だけです。(2026年6月時点)

──具体的にどのようなことに対応しているのですか?

遺伝診療科では、遺伝が関係する病気についての相談に加えて、遺伝子を扱う検査に関するカウンセリングにも対応しています。 

◆主な対応内容
・遺伝が関係する病気についての相談
・遺伝子検査を受ける前後のカウンセリング
・がんの治療法選択に関わる遺伝子検査の相談
・薬の効きやすさや副作用に関わる相談
・出生前診断に関する相談

遺伝診療科では、検査を受けるメリットとデメリットを丁寧に説明し、受けるかどうかも含めて、患者さんが納得して決められるようサポートしています。 

──具体的に患者さんはどのようなきっかけで受診されますか?

現状では、他の診療科の医師からの依頼で来られるケースがほとんどです。診療の過程で遺伝的な要因が考えられる場合に、担当医から紹介されて相談に来られます。

以前は先天性の異常や神経の難病などを扱うことが多くありましたが、近年は、がんと遺伝の関係が分かってきたこともあり、がん患者さんからのご相談が増えています

不安や迷いに寄り添う、遺伝カウンセリングの役割

──どのような相談が多いですか?

◆主な相談内容
・ご自身の病気が家族にも関係するのか
・遺伝子検査を受けた方がよいのか

中でも多いのは、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」に関する相談です。HBOCは、生まれつき特定の遺伝子に変化があることで、乳がんや卵巣がんなどを発症するリスクが高くなる病気です。 

たとえば、乳がんの患者さんが診療の過程で遺伝子検査を受け、その結果HBOCであることが分かった場合、ご自身の今後の治療方針だけでなく、ご家族への遺伝についても考える必要が出てきます。

HBOCに関わる遺伝子の変化は、親から子へ2分の1の確率で受け継がれる可能性があるためです。

そうしたときに、「これからどうしたらいいのか」「子どもやきょうだいにも影響があるのか」「家族にどう伝えればよいのか」といった相談を受けることになります。

──認定遺伝カウンセラーの中嶋さんは、どんな役割を担っていますか?

認定遺伝カウンセラーの中嶋さん
全国に426人(2024年現在)程度しかいない遺伝医療の専門職

遺伝子検査を受ける前に、検査で分かることや分からないこと、メリットとデメリットを患者さんに分かりやすく説明しています。

遺伝子検査の結果は、ご自身の治療や健康管理に役立つ場合があります。一方で、結果によっては、ご家族への影響について考える必要が出てくることもあります。

そのため、検査を受けることを前提にするのではなく、患者さんが検査の意味を理解し、受けるかどうかも含めて納得して選択できるようサポートしています。

──検査を受けるか迷っている患者さんには、どのように寄り添っていますか?

検査で遺伝的なものだと確定した場合、その結果をずっと抱えて生きていくことへの不安から、検査を迷われる方も少なくありません。 

遺伝情報は一生変わらない、とても大切な個人情報です。「検査を受けたくない」という気持ちも尊重されるべきだと考えています。 すぐに決める必要がない場合は、一度持ち帰って考えていただくこともあります。 

遺伝診療科では遺伝子検査を受けること自体が目的ではなく、患者さん自身が「何を一番大切にして、今後どう健康管理をして生きていきたいか」を整理し、自分自身で意思決定できるようサポートすることを最も重視しています。

対話を通じて患者さんの気持ちに寄り添い、一緒に考えていくことを大切にしています。

パンフレットを使いながらわかりやすい説明を心掛けている。

───遺伝の病気とわかった場合、家族にはどう影響しますか?

先ほどのHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)のように、親から子へ2分の1の確率で遺伝子の変化が受け継がれる場合がありますが、だからといって必ず病気を発症するわけではありません。

遺伝子の変化を受け継いだ人が、生涯で乳がんを発症する確率は研究によって異なりますが45〜70%ほどといわれており、発症しない方もいます。

生活環境など、遺伝子以外のさまざまな要因も関わってくるため、「遺伝子があるから必ず発症する」「ないから安心」という白黒はっきりした話ではないのです。

この複雑なニュアンスを正しく理解していただくことも、私たちの重要な役割です。

治療につながる、未来に備える、遺伝子検査でわかること

───遺伝子検査とは具体的にどのようなことをしますか?

基本的には、患者さんご本人の血液検査を行います。

以前は自費で高額な検査しかありませんでしたが、治療に結びつく検査などが保険適用されるようになり、患者さんの負担も少しずつ軽くなっています。

───病気になる前でも、一般の人が検査を受けることはできますか?

病気の診断や治療のためではなく、将来の病気のなりやすさを知る目的で遺伝子検査を受けること自体は可能です。

ただし、日本の保険医療制度では、基本的に病気の診断や治療を目的とした検査が保険適用の対象となるため、原則として自費診療になります。

現在、何らかの病気や症状で県中を受診している方、またはかかりつけ医に通っている方で、「遺伝と関係があるのでは」と気になることがあれば、まずは担当医に相談してみてください。必要に応じて、遺伝診療科につないでもらうこともできます。 

現状の医療制度では「病気になっていない人」への幅広い対応は難しい。将来的に広く遺伝子検査を提供し、総合的なサポートをすることが理想だと話す八田先生。

─────遺伝性の病気だと分かったら、治療はできるのでしょうか?

残念ながら、今の医療では生まれ持った遺伝子そのものを変えることはできません。

しかし、遺伝的なリスクが分かれば、将来の病気を防ぐための対策を立てることができます。

例えば、HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)と診断されたお母様に、20代の娘さんがいるとします。娘さんが検査を受け、同じ遺伝子の変化を持っていることが分かれば、乳がんの発症リスクが高い可能性があると予測できます。 

そのため、若い頃から定期的に精度の高い検診を受けるなど、「早期発見」よりもさらに早い段階から備えることが可能になります。これは、ご自身の体を守るための大切な意識づけにもつながります。

───がんの治療に関わる遺伝子検査があると聞きました。

「がん遺伝子パネル検査」というものがあります。

生まれつき持っている遺伝子ではなく、手術や生検採血などで採取した「がん細胞」の遺伝子に、どのような変化が起きているかを調べる検査です。1回の検査で多数(数十~数百)の遺伝子を調べることができます。 

検査の結果、がん細胞に遺伝子の変化が見つかり、その変化に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用を検討することがあります。

ただし、がん遺伝子パネル検査は、標準的な治療法がない、または標準治療が終了した、終了が見込まれるなど、治療が難しい状況にある患者さんが対象となる検査です。

遺伝情報を、自分と家族の未来に生かすために

───遺伝情報を知ることは、本人や家族にとってどんな意味があるでしょうか?

ご自身の病気の原因を知ることは、お子さんたちに残せる遺伝情報の「ギフト」だと考えることもできます。

親が持つ遺伝情報を知ることで、子どもたちは将来、病気を予防したり、早期に発見したりする機会を得られます。それは、未来の生き方を考える上で、非常に価値のある情報になるはずです。

遺伝子検査の結果が出た後も、必要な場合はフォローアップしていると話す中嶋さん。

───遺伝診療科として、大切にしていることは何ですか?

病気そのものを治すことではなく、「病気になったことを、今後の健康管理や家族のためにどう生かせるか」を、患者さんと一緒に丁寧に考えることです。

地域の皆さんの「遺伝」に対する関心や理解はまだ十分とは言えません。病気や健康には遺伝子が深く関わっていることを、より多くの方に知っていただくことも大切だと考えています。

まずは遺伝診療科という選択肢があることを知ってほしい、と話す八田先生。

今回は、富山県立中央病院の「遺伝診療科」について紹介しました。

遺伝子検査は、治療につながる手がかりになることもありますが、大切なのは、検査を受けることそのものではなく、自分の病気や体質の傾向を知り、その情報をこれからの健康管理や家族の未来にどう生かしていくかを考えることです。

遺伝診療科は、その答えを患者さんと一緒に探していく場所なんですね。

「遺伝と関係があるのでは」と気になることがあれば、まずは現在かかっている担当医やかかりつけ医に相談してみてください。

※本ページ中の「遺伝子検査」は、生まれもった遺伝情報を調べる遺伝学的検査のことを指しています。

施設名富山県立中央病院遺伝診療科
公式サイトhttps://www.tch.pref.toyama.jp/sections/idenshinryou/ 

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トイエバ編集部

トイエバ編集部

様々な富山の情報をお届けするトイエバ編集部です!

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